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しおりを挟む「だから.......給水タンクの裏のとこで……オマエ見ながら昼飯食ってたよ」
キョトンとしたような顔の長谷川に、俺はもう一度同じように告げた。
タンクの裏で、ずっと長谷川のつむじばかりを見て過ごしていた。
近いのに手が届かない。
そんな気持ちをずっと抱えていた。
「なぜ…………。何でですか。一人で、僕がさびしくメシ食ってる姿見て、何がおもしろいのですか」
面白いわけなどない。
怒った様子の長谷川に、少し罪悪感があるが、少しは俺を気にかけていてくれたのだろうか。
それなら嬉しい。
嬉しくて仕方がない。
ただ、見ているだけ。それでも、俺はずっと見ていたかった。
「面白いなんて思わなかった。ただ、俺はずっとオマエが好きで、オマエを見ていたかった。........俺、オマエに付き合えって言った後、後悔したんだ」
俺は痛むからだを引きずって再びベッドに戻って、意を決したように静かに口を開いた。
長谷川は、俺の言葉をどう受けとったのか目をカッと見開いて怒ったように俺に問いかける。
「はあ、僕のことを好きになったことを後悔、ですか?」
何故怒っているのか。
その答えを早く知りたかったが、俺の事情を話さなくてはいけない。
俺の気持ちを分かってもらわなくては、先には進めない。
「違う。そうじゃねぇ。…………オマエの力に頼って、成績のランクあげたとして、その褒美に付き合えとか、意味分からんだろ。そんなふざけたこと言ったことを後悔したんだ」
そう告げると、すっと長谷川の顔から怒りの表情が消える。
顔立ちからクールには見えるが、とても感情は豊かである。
「だから、あの日…………、俺は勉強教えにこねえでイイって言った。俺の力で、ランクあげてもう一度……オマエに付き合ってくれって言おうと思って…………たんだけどな」
思っていたのに、結果的には情けない姿を見せてしまった。
好きにさせるなんて、無理な話だ。
自嘲するように告げると、長谷川は俺の顔をじっと見据えた。
「会って、話しちまったら……感情の抑えがきかなくなりそうだからよ。会ったら、また、オマエに好きだって言っちまうから…………。オマエの言う様に会わないように避けてた」
避けていたというのは、おかしいな。
常にずっと長谷川を見て、追いかけていた。
「狭い校内で、どうして出くわさなかったか、不思議だったろ。…………そりゃ、俺が隠れてオマエのこと追けていたから出くわすわきゃねえんだ」
ずっと背中を見ていれば、会うことはない。だけど、ずっと見てられると思った。
いい作戦だと、考えていた。一方的に、俺は長谷川を追いかけていられた。
「中間考査、8位とったんだぜ。これで全部うまくいくかもとか、浮かれきってたんだ…………」
浮かれていた。
そうだ、ちょうど昨日の今頃は浮かれに浮かれていた。
「でもよ…………あんなカッコ悪ィとこ見られたら、もう……オマエに告白する資格とか、全部ひっくるめてさ…………もうなんもねえんだ」
基本的なことは、長谷川から教わったが、夏休み後半からはずっと自分で必死に頑張ったのだ。
長谷川は、俺をじっと見つめてからその綺麗な腕を伸ばして俺の髪に指をかける。
「僕と…………付き合ってください。僕も…………貴方が好きです」
信じられないような言葉が聞こえた。
なんだろう。
これは、同情だろう。
あんなふうに傷ついた俺を優しさから、放置できないだけだろう。
そんなものが欲しいわけじゃない。
あんな風に、優しさで抱いてくれたのと同じように、優しさで言っているのだろう。
俺は、思わず長谷川の綺麗な頬をはたいていた。
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