花に嵐

怜悧(サトシ)

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22 side Hasegawa

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朝の日課である校門検査。

毎日続けてはいるが、特に立っているだけですることは殆どない。
校則を守らない生徒は、まったく皆無で形ばかりの校門検査である。
こんな風に、校門に立たなくとも成春以外の生徒で問題を起こすような生徒はいない。
やるだけ無駄とも思うのだが、校門検査を始めたのは去年かららしいので、ほぼ風紀の威信をかけた成春のためだけの検査だ。

「オハヨウ、西覇」

ふいにかけられた聞き覚えのある低い声に、この時間は避けているはずではと不審に思って振り返り、
「おは……よ………ございま…………って…成春さん!?」
オレは目を丸くして、その姿を凝視した。

トレードマークだった綺麗な金色の髪は、今時の生徒ならよくあるちょっと深めのブラウンカラーに染められている。
青色のカラコンも今日は入っていないし、ピアスも外しているらしい。
制服はどう着ているのか分からないが、コートを着ているのもあり、他の生徒と寸分変わらぬ格好である。
「……まぁ………あーと、約束したしな……」
以前、勉強を教えていた時に言っていた、トップ10に入ったら髪を染め直すという約束を守ってくれたのだ。
あの時は変えないと言い張っていたが。
髪の色を変えただけで、どこからどう見ても爽やかなイケメンである。
そんな些細な約束も忘れず守ってくれようとするのが、オレは本当に愛しいと思う。
こんなにオレも人に絆されやすいタイプではないはずなのだが、いちいち行動が自分にとってすごく好ましい。
「凄く…………似合ってますよ」
さらさらの髪は色が変わっただけでも変わりはない。
「本当か。なんだかもう、すっかり金髪だったから慣れねえけど」
周りの視線を避けるように回り込んだ、成春はオレの肩に手を回して耳元で囁く。
「今日は、寒ぃから昼飯、食堂いこうぜ。髪直したし、俺と一緒にいるの他のやつらに見られてもさ、オマエ、困らないよな」
別に金髪の時に一緒にいても困らなかったが、初めに迷惑だと告げたことをずっと気にしていたのだろう。
いきなりつるもうとか言われた時には迷惑だと思ったし、そのままを告げた。
確かに、一緒に昼飯を食べるようになっても、屋上以外で、成春はオレに声をかけてはこなかった。
言われたことを結構気にするタイプなのだなと思う。

人に言われたことなど全部スルーするアニキとは違う。根本的に凄くまじめな人なのだ。

「約束もあったけどよ。ちょっとでも、オマエと一緒にいてえなって思ったから、髪染めたンだ」
そういうことを何の臆面もなく言ってのけるあたり、本当に困った人だと思う。
そんなのオレに我慢なんかできるわけない。

「成春さん、僕を煽ってます?貴方が好き過ぎてどうにかなりそうだ」
「テメェ……。ンなこと、ここで言うんじゃねえよ」

首筋まで真っ赤になって照れる様子を誰にも見せたくないと思うくらい、オレはみっともないくらいの独占欲が沸くくらいにこの人が好きなのを自覚する。
オレは、人間を信用なんてしてなかった。ましてや、正直人を好きになることがあるなんて思わなかった。
父や兄のことを知れば、手のひらを返したように離れていった友人たち。
何度も期待しては裏切られた。
どんなにほしいと願っても手に入らないと思っていた。

「んじゃァ、オツトメ頑張って。昼休み、待ってるからな」
にっと笑って、さらさらの茶色い髪を風にふわっと舞わせて、成春はぺったんこのカバンを抱えて校舎へと向かっていった。

デジャブ。

いつか見た、春のあの日の笑顔に重なった。
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