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その想いは
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夕飯を作り終え、3人で食べていると電話が鳴った。子機を近くに置いて無かったらしく、叔父はあわてて親機のある廊下へと走っていった。
残されてたオレは何も言わず黙々と食べ、アキもそのまま食べたいた。しばらくして、叔父が戻ってきたが、作務衣の紐を解きながら、申し訳なさそうな顔をした。
「すまない、急用だ。門徒の方が亡くなって、色々の話しをしてくる。アキ君、家まで送って行くつもりだったけどごめんね。良ければ泊ってもいいんだよ?」
「いえ、大丈夫です。おじさんも気をつけて」
アキは微笑み、軽く手を振る。
「ありがとう。たぶん遅くなるから、後はよろしくな。マコト」
「ああ」
そして叔父はバタバタとしながら準備をし出掛けた。叔父を見送ったオレ達は食卓の上を片付け始めた。
「ついでに洗うよ」
そう言ってアキが食器を洗っていく。オレは洗われた食器を拭き、棚へと片付ける。食器を洗いながら、アキはオレをじっと見つめてきた。
「ね…、なんかあったの?いつもと違う気がするけど。」
「…どういう意味だ」
「いつもより素直」
「は?」
「冗談だよ。」
そう言って笑い、残りの食器を洗い流していく。
(いつもと違う気がする、ね。そうか… )
そう思いながら、オレは残りの食器を拭いていった。食器を全て洗い流したアキは自分の手を拭き、しばらく俯いていた。何かを考えているようにも見えた。
最後の食器を戸棚に入れた時に、オレに話しかけてきた。その顔は少し強張った顔だった。だが、オレがアキの顔を見ると、今度はアキがオレの視線を避けていく。そのままアキは深く息を吐きだし、オレを見つめなおした。
「……あの子の件で……その、何か気づいたり、気になることは無い?」
その問にオレは一瞬戸惑った。この変な感情の事を言おうか悩んだからだ。
「……別に」
「そう……か」
そう呟いたアキの顔は少し、安心したような表情に見えた。
「じゃあ、ボクは帰るね」
「……」
アキはニコリと微笑み、オレの横を通りすぎる。オレは帰ろうと通りすぎるアキの腕を掴んでしまった。
「どうしたの?」
アキは急に掴まれ、驚いた顔でオレを見る。オレは何も言えず下を向いてしまった。何故アキを引き留めてしまったのだろうか。
「マコト?」
「まだ……帰るな」
なぜかそんな言葉が出てしまった。どうしたらいい?このまま黙ってしまおうと、決めたはずなのに。この際だから吐き出してしまうか?吐き出したところで、今の関係がなくなったらどうする?
ああでもないこうでもないと、思考がぐるぐると回る。そんなオレをアキは何も言わず見ていた。
どうせ、この寺に来るまでオレは独りだったんだ。昔に戻るだけだ。そうだ…悩んでいるなんて、オレのガラじゃない。壊れてしまってもオレは……寂しいと思わない。きっと。
オレは意を決してアキの顔を見た。アキは不思議そうにオレを見ていた。その顔を見てオレは、相変わらず綺麗な顔だと思った。解っている。本当はこの感情を理解している。何故か認めたくはないと逃げていた。
そう、この感情は…恋だ。
あの女が遺した想いか、それともこれも呪いのせいなのか。本当はそこだけが、オレとして認めたくない部分だった。だからこそ、この想いを直視出来なかった。だけど、もういい。
オレは深く息を吸いアキを見つめ、そのまま思ってる事を吐き出した。
「 オレはたぶん、アキの事を……アキが好きだ。この前からお前の事を考えると、感情が乱されて苦しいんだ。オレはお前に触れたい、ずっとそばにいたいって思ってる。だけど、この感情がオレのじゃなく、あの女の感情なのか、女になった呪いの一種なのか分からないんだ。偽物の感情で、お前のことを好きって思いたくねぇんだよ…」
ボロボロと涙が流れていくのがわかった。感情がショートするってこの事じゃないのか?と。
「クソ!オレはなんで、泣いてんだチキショー。お前が好きだ。本当はオレは…ずっと一緒にいたい。アキと離れたくない。アキに触れたい。でも、ツラい……」
アキは何も言わず、オレを見ている。その表情は驚いていた。そうだよな。泣きながら告白されれば誰だって驚く。おまけに、男に告白されりゃ誰だって引くよな。
「マコト…それは…本気でボクの事好きって意味でいいのでは?」
「は?なんでそうなる?頭沸いてンのか?」
「酷い言い様だな…て言うか、茶化すモノじゃないだろ…?」
オレは掴んでいた手をほどき、ゴシゴシと荒く自分の顔を拭った。
「そっか…そうか…あの子が言った事をもしかして聞いていて…それでオレを避けているんじゃないかって…不安に思ってた。良かった。違ったんだ…」
「?」
安堵した声色で呟いたアキはオレに近づきオレに抱きついてきた。それは、思ってもない行動だった。
「マコト……」
優しいその声はオレの耳元で囁かれ、思わず体温が上がった。鼓動が速くなるのが分かる。きっとアキにも聞こえているはず。オレはたまらず、抱きついたアキを退けようとアキの身体を押そうとした。
だがアキは離れようとせず、その腕に力を込めてきた。どういう事だ。思考が麻痺しそうになる。
「離せ…」
「ボクはね…ボクはずっと前からキミが好きだった。」
「え?」
オレは思わずアキの顔を見た。間近に見るアキの顔も高揚しているのか、顔が赤くなっていた。目線が合うとアキは微笑み、そのままオレを見つめながら喋りだす。
「呪いが掛かる前から…ずっと好きだった。だから、キミが呪いのせいであっても、ボクを好きだと言ってくれて嬉しいんだ。」
アキの顔が近づき、オレは思わず眼を瞑ってしまった。オレの瞼に柔らかい感触が伝わる。
熱い…
その感触が徐々に頬へと下り、唇に触れた。軽く唇に触れられ、オレは目を開けた。そこには珍しく照れているアキの顔があった。
「お前でも、照れるんだな……」
「当たり前だろ。好きな人に触れるなんて、緊張するに決まってる」
そう言って強く抱き締められた。あぁ…ホントだ。アキの熱い鼓動が伝わって来る。いつも飄々として冷静なアキが、緊張している。そう思うと、嬉しくなった。
この安堵感。コレが幸せと言うのか。抱き締められたアキの背中に手を回す。人の温もりなんて、昔過ぎて忘れていた。
幼い頃、仏像が怖いと泣いたオレを優しく抱きしめてくれた母の記憶が甦り、また涙が出て来た。唯一の母との幸せな思い出だ。
「また泣いてる?どうしたの?」
すすり泣くオレの背中をさすり、アキが心配そうに見つめた。オレは首を振り、アキの肩に顔を埋める。
「なんでもない…思い出しただけだ。オレはお前に会えて良かった」
「ボクもだよ…ずっと一緒に居よう。キミを独りにさせない」
そう言ってアキはオレを強く抱きしめた。
残されてたオレは何も言わず黙々と食べ、アキもそのまま食べたいた。しばらくして、叔父が戻ってきたが、作務衣の紐を解きながら、申し訳なさそうな顔をした。
「すまない、急用だ。門徒の方が亡くなって、色々の話しをしてくる。アキ君、家まで送って行くつもりだったけどごめんね。良ければ泊ってもいいんだよ?」
「いえ、大丈夫です。おじさんも気をつけて」
アキは微笑み、軽く手を振る。
「ありがとう。たぶん遅くなるから、後はよろしくな。マコト」
「ああ」
そして叔父はバタバタとしながら準備をし出掛けた。叔父を見送ったオレ達は食卓の上を片付け始めた。
「ついでに洗うよ」
そう言ってアキが食器を洗っていく。オレは洗われた食器を拭き、棚へと片付ける。食器を洗いながら、アキはオレをじっと見つめてきた。
「ね…、なんかあったの?いつもと違う気がするけど。」
「…どういう意味だ」
「いつもより素直」
「は?」
「冗談だよ。」
そう言って笑い、残りの食器を洗い流していく。
(いつもと違う気がする、ね。そうか… )
そう思いながら、オレは残りの食器を拭いていった。食器を全て洗い流したアキは自分の手を拭き、しばらく俯いていた。何かを考えているようにも見えた。
最後の食器を戸棚に入れた時に、オレに話しかけてきた。その顔は少し強張った顔だった。だが、オレがアキの顔を見ると、今度はアキがオレの視線を避けていく。そのままアキは深く息を吐きだし、オレを見つめなおした。
「……あの子の件で……その、何か気づいたり、気になることは無い?」
その問にオレは一瞬戸惑った。この変な感情の事を言おうか悩んだからだ。
「……別に」
「そう……か」
そう呟いたアキの顔は少し、安心したような表情に見えた。
「じゃあ、ボクは帰るね」
「……」
アキはニコリと微笑み、オレの横を通りすぎる。オレは帰ろうと通りすぎるアキの腕を掴んでしまった。
「どうしたの?」
アキは急に掴まれ、驚いた顔でオレを見る。オレは何も言えず下を向いてしまった。何故アキを引き留めてしまったのだろうか。
「マコト?」
「まだ……帰るな」
なぜかそんな言葉が出てしまった。どうしたらいい?このまま黙ってしまおうと、決めたはずなのに。この際だから吐き出してしまうか?吐き出したところで、今の関係がなくなったらどうする?
ああでもないこうでもないと、思考がぐるぐると回る。そんなオレをアキは何も言わず見ていた。
どうせ、この寺に来るまでオレは独りだったんだ。昔に戻るだけだ。そうだ…悩んでいるなんて、オレのガラじゃない。壊れてしまってもオレは……寂しいと思わない。きっと。
オレは意を決してアキの顔を見た。アキは不思議そうにオレを見ていた。その顔を見てオレは、相変わらず綺麗な顔だと思った。解っている。本当はこの感情を理解している。何故か認めたくはないと逃げていた。
そう、この感情は…恋だ。
あの女が遺した想いか、それともこれも呪いのせいなのか。本当はそこだけが、オレとして認めたくない部分だった。だからこそ、この想いを直視出来なかった。だけど、もういい。
オレは深く息を吸いアキを見つめ、そのまま思ってる事を吐き出した。
「 オレはたぶん、アキの事を……アキが好きだ。この前からお前の事を考えると、感情が乱されて苦しいんだ。オレはお前に触れたい、ずっとそばにいたいって思ってる。だけど、この感情がオレのじゃなく、あの女の感情なのか、女になった呪いの一種なのか分からないんだ。偽物の感情で、お前のことを好きって思いたくねぇんだよ…」
ボロボロと涙が流れていくのがわかった。感情がショートするってこの事じゃないのか?と。
「クソ!オレはなんで、泣いてんだチキショー。お前が好きだ。本当はオレは…ずっと一緒にいたい。アキと離れたくない。アキに触れたい。でも、ツラい……」
アキは何も言わず、オレを見ている。その表情は驚いていた。そうだよな。泣きながら告白されれば誰だって驚く。おまけに、男に告白されりゃ誰だって引くよな。
「マコト…それは…本気でボクの事好きって意味でいいのでは?」
「は?なんでそうなる?頭沸いてンのか?」
「酷い言い様だな…て言うか、茶化すモノじゃないだろ…?」
オレは掴んでいた手をほどき、ゴシゴシと荒く自分の顔を拭った。
「そっか…そうか…あの子が言った事をもしかして聞いていて…それでオレを避けているんじゃないかって…不安に思ってた。良かった。違ったんだ…」
「?」
安堵した声色で呟いたアキはオレに近づきオレに抱きついてきた。それは、思ってもない行動だった。
「マコト……」
優しいその声はオレの耳元で囁かれ、思わず体温が上がった。鼓動が速くなるのが分かる。きっとアキにも聞こえているはず。オレはたまらず、抱きついたアキを退けようとアキの身体を押そうとした。
だがアキは離れようとせず、その腕に力を込めてきた。どういう事だ。思考が麻痺しそうになる。
「離せ…」
「ボクはね…ボクはずっと前からキミが好きだった。」
「え?」
オレは思わずアキの顔を見た。間近に見るアキの顔も高揚しているのか、顔が赤くなっていた。目線が合うとアキは微笑み、そのままオレを見つめながら喋りだす。
「呪いが掛かる前から…ずっと好きだった。だから、キミが呪いのせいであっても、ボクを好きだと言ってくれて嬉しいんだ。」
アキの顔が近づき、オレは思わず眼を瞑ってしまった。オレの瞼に柔らかい感触が伝わる。
熱い…
その感触が徐々に頬へと下り、唇に触れた。軽く唇に触れられ、オレは目を開けた。そこには珍しく照れているアキの顔があった。
「お前でも、照れるんだな……」
「当たり前だろ。好きな人に触れるなんて、緊張するに決まってる」
そう言って強く抱き締められた。あぁ…ホントだ。アキの熱い鼓動が伝わって来る。いつも飄々として冷静なアキが、緊張している。そう思うと、嬉しくなった。
この安堵感。コレが幸せと言うのか。抱き締められたアキの背中に手を回す。人の温もりなんて、昔過ぎて忘れていた。
幼い頃、仏像が怖いと泣いたオレを優しく抱きしめてくれた母の記憶が甦り、また涙が出て来た。唯一の母との幸せな思い出だ。
「また泣いてる?どうしたの?」
すすり泣くオレの背中をさすり、アキが心配そうに見つめた。オレは首を振り、アキの肩に顔を埋める。
「なんでもない…思い出しただけだ。オレはお前に会えて良かった」
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