鈍色の空と四十肩

いろは

文字の大きさ
30 / 86

29 ー女子会ー

しおりを挟む
「本当~~~にご心配、ご迷惑おかけしました!」
 依子は久しぶりに『さくら』に出勤して、斉藤と愛に深々と頭を下げて詫びている。

「まあ、とにかく回復できて良かったよ。」
 斉藤はもう二言三言説教したそうだが、努力して堪えているようだ。
 愛に、凹んでいる人間に追い討ちをかけないように、と釘を刺されている。
「たくさんの差し入れ、本当にありがとうございました。お二人のお腹に優しいごはんのおかげで、なんとか回復できました。」
「お役に立てて良かったです!依子さんがホールにいなくて、もう限界でしたよ~。」
 愛はうれしそうだ。

 まだ本調子ではなかったが、いい加減に体も慣らさないといけないので、がんばって出てきた。
 最初こそちょっとふわふわした感じがあったが、なんとかこなせそうだ。

 しばらくはいつもの半分にしてほしい、と言って頼んでいた賄いを食べながら、依子は斉藤に言った。
「何かお2人にこのお礼をしたいんですが、私にできることありますか?
 ご希望とかあります?あ、シフトを無料で増やします?」
「いいよいいよ。今身体に負担かけてどーすんの。
 しばらくゆっくり目にやってよ。」
 斉藤が呆れた感じで言う。

「あ、俺はいいこと思いついた。個展で作品見せてもらって、一つ欲しいな、って言ってたじゃない。
一つ描いてくれないかなあ。
 コンセプトとか全部お任せするから、この店をイメージした和洋折衷な感じの作品。そしたら、宣伝にもなるじゃない?」
 斉藤は身を乗り出して言う。

「ちょっと!師匠、何言ってんですか!一点いくらすると思ってんですか!
 そんな差し入れくらいで図々しい。」
 愛がすかさず止めに入る。
「いえいえ!すごくいいアイデアです。むしろそれしか私できないし。
 ぜひやらせてください。」
 依子は恩返しができそうだ、と思ってうれしかった。

「無期限でいいよ。身体が本調子に戻ってからでいいからね。」
 斉藤はなんのかんのちゃんと気を遣ってくれる。
「愛ちゃんは何がいいですか?」
 依子は愛を見る。
「うーん。依子さんが復帰したらおしゃべりしたいなあ、と思ってたんですよ。たまには女子会、どうですか?」
 愛がリクエストを出す。
「いいですね!しましょうしましょう!」
 早速、女子会は定休日の月曜日と打ち合わせた。
 そしてまた、いつもの日常が戻ってきたのだった。

 自分の仕事は既にぼちぼち通常モードに戻っている。
 2週間近く全く何もできなかったので、非常に焦っているが、ここで無理したらまた皆を心配させる、と思って、かなり摂生してはいる。
 歳が歳だから、完全に復調するのに1ヶ月はかかる。
 また前と同じように120%出力でいくのはそれからにしよう、と思っている。
 そんな風にやっと落ち着いて、気づけば8月も後半に入っていた。

ーーー


 愛と約束した女子会の日。
 月曜日の真っ昼間である。
 真夏の昼下がりだから、クソ暑いのではあるが、その日差しを避けて、2人はゲッレールト温泉に来ていた。

 前から来たかったのだが、水着を着て入るブダペストの有名温泉は、レジャー施設と言って良く、1人で来るにはちょっと勇気がいる。
 ゲッレールト温泉は、室内温泉で、さまざまな浴室があるので、ゆっくりしゃべりながら、かつ真夏の日差しを避けて遊ぶにはもってこいである。

「はあ~、水着ってのが日本人的には納得いきませんが、とりあえずあったかいお湯に浸かるってのは、天国ですな。」
 愛が、ふう~っとオヤジみたいなため息をついた。
「まったくですな。」
 依子も同意する。
 2人で目を瞑って、ぬるめのお湯に浸かり、ぐったりと手足を伸ばして寝そべる。
 ここは温泉のフチに頭を乗っけて寝ながら浸かれる浅いお風呂のエリアだった。

「今回は本当にありがとうございました。
 プリンも美味しかった。愛ちゃん作でしょ?」
「全然全然~! 疲れが出たんですよ。
 ハンガリー来てからずっと気を張ってたんでしょ。あんまり気にしないで。世話してくれる人がいるってことは、それだけ依子さんが信頼を築いてきた、それだけの価値があるってことなんだから。自信持たなきゃ。」

 そう言ってまた、ふう~と息を吐いた愛を依子はじっと見ている。
 多分なにか相談事があるはずだ。
 斉藤のいないところでわざわざ女子会をしたい、という愛の様子がいつもよりわずかに元気がないようだったから。
 しばらくして愛が切り出した。
「依子さん。実はですね、ちょっと相談というか聞いて欲しいことがありまして。」
「うんうん。何かな?」

「アイリッシュパブのコルムにですね、結婚してくれ、と言われてまして。」
「はえっ?!!!」
 あまりの唐突な話に変な声が出てしまった。
「いつの間にそんなことに?!」

 うん、まあ以前パブに行った時ずいぶん意気投合したようだったのは見ていた。
 あれから4ヶ月くらいか?依子は思い起こしてみる。
「うん、で、愛ちゃんは何か悩ましいのかな?」
 愛が自分で話しやすいようにゆっくり先を促す。

「はあ、自分でもよくわからないんですけどね。何がそんなに悩ましいのか。
ただ、結婚してくれ、と言われてNoなりYesなり即答できないんだよな。それがモヤモヤして。」
 愛は寝そべって宙をぼんやり見ながら思考の淵に沈んでいる。
「嫌なら、いや、お断りします、お友達でお願いします、って言えばいいんだけど、そう言えるほどもう関係性は浅くないし。
 喜んで!って無邪気に言うには私には覚悟が足りないし。
 だって、こんなフラフラ気ままに生きてきた人間ですから。
 定住するってのがそもそもできるかどうか。」

 依子は横向きになって肘で頭を支えて、愛の様子を見ながら、一所懸命に考えてみる。
「なるほどなるほど。
 いつも竹を割ったような性格の愛ちゃんが、モヤモヤと結論が出せないのがまず気持ち悪い、と。
 そしてどっちの結論を出すのもちょっと難がある気がする、と。」
 うん、と愛は頷いている。

「そうねえ、まずすぐ結論が出せなくて考えちゃう、っていうのはそれだけ愛ちゃんがコルムさんのことに真剣、ってことだよね。
 今まで男性に対してそうでもなかった、っていうなら、今回は今までになく気持ちが深いんじゃないかな。
 だっていつもなら、もうめんどくせえから、こういうことで!って言っちゃうでしょ。」

「それから、どちらの結論も難がある、というのは、どっちの場合でもコルムさんも愛ちゃんも傷つきそうだから、って心配してるからだよね。
 これも、相手のことも自分のことも大事にしてるからだよね。
 2人の関係性を大事にして傷つけたくない、ってことだよね。」
「うーん。そういうことなのかなあ。」
 愛の返事は覇気がない。

「まあ、私の分析なんかただの想像だから、さておき。
 シンプルに考えてみたら? 諸問題はまず置いといて。愛ちゃんはどうなるのが理想なの?」
 依子はできるだけ、前向きな声を出す。
「そうですね。理想ねえ。
 正直、コルムは今まで会った男の中では一番気が合って、一緒にいるのが楽というか、自然なんです。
 自由に生きるのに、パートナーなんか邪魔くせえ、と思ってたんですけど、むしろコルムは自由に生きるのを助けてくれる、というか。
 精神的にも物理的にも。
 だから、できればずっと一緒にいたい、と思います。
 でも、私が私らしく自由に生きるために一緒にいたいわけだから、自由でいさせてもらう、ってのが前提なんです。
 たまには旅に出てしばらくいなくなるかもしれない。またすぐ職を変えてどっか移住するかもしれない。
 そんなの許されます?」
 愛は、らしくなく困ったような顔で依子を見た。

「あら、愛ちゃん、でもちゃんと全部自分でわかってるじゃないですか。
今言ったこと、そのまま素直にコルムに相談すればいいと思う。
コルムさんはちゃんと受け止めてくれる、懐の深いおっきい男だと思いますよ、私。一回しか会ったことないけど。
 愛ちゃんの話聞いてて、愛ちゃんにそこまで言わせるだけの立派な人だと思った。」
 依子はうれしそうに言う。

「そんな、でも。
 結婚するとして、奥さんが世界中放浪するなんてご家庭あります?
 家庭人として、私は絶対、不適合者だと思う。」
「でもコルムさんはそういうユニークな人だから愛ちゃんが好きになったわけでしょ。
 結婚して家庭に入っても、今まで通り自由に飛び回っても、どんな愛ちゃんでも一緒に生きたいと思ったから、覚悟してプロポーズしたんだと思うよ。」

「だいたい、夫が世界中飛び回って、家を奥さんが守ってるご家庭なんか、いくらでもあるじゃない。
 そもそも夫はこう、妻はこう、って、こうあらねばならぬっていう、考え方を型にはめる時代じゃないよね。」
 愛ちゃんはけっこう古風なところがあるのね、と言って、依子は身体を起こして座る。
 ちょっとのぼせてきた。

「妻のありよう、夫のありよう、なんてご家庭によって千差万別だよ。
 周りの人が、あそこんちは~、とか陰口叩いても気にしなきゃいい。
 うっせえわ、ほっとけ、って思えばいいよ。
 愛ちゃんはそれができる強さがある。大丈夫よ。
 もし、めげそうになったら、コルムさんに素直に愚痴ればいい。
 ちゃんと受け止めてくれるよ。
 コルムさんのご機嫌が悪ければ、いつでも私に愚痴って。
 世界中どこにいても、今はネットでも電話でも繋がれるんだから。」

 愛子も起き上がって、感心したように依子を見る。
「依子さんて、豆腐メンタルの割にしっかりしてますよね。」
「はあ、スミマセン。
 まあ、バツイチの経験者からの言葉と思っていただければ。」
 依子は膝を抱えてぺこりとする。

 2人はお風呂を移動する。
 ほてった身体を少し冷やすために、大理石の柱が荘厳なメインプールに来た。
「だいたいねえ、これだけあれこれ悩んで決心しても、いざ結婚へと飛び込んでみたら、予想もできないことが起こる、なんてよくあることだから。
 やってみないとわからないのよ、結局のところ。」

 ちょっと一本泳いでくる、と言って依子は、ゆるゆると平泳で他の人の邪魔にならないように泳いで行った。
 愛もあさっての方向に行ったり来たり歩いてみた。

 戻ってきてハアハアしながら続ける。
「私の場合も、自分も本人も周りの人も、夫には暴力症のクソ野郎の本性が隠れてた、なんて予想もしなかった。
 良い人で通ってたんだから。DV野郎はそれを隠すのが上手いです。
 後になって考えると思い当たることはあったんだけどね。
 やっぱり前もってはわからなかったな。」

 愛がヨシヨシと依子の背中をたたく。
 じゃぶじゃぶと移動しながらプールのフチに2人で腰掛ける。
「コルムさんって、感情がわかりやすいでしょ?
 あんまり小細工しない真っ直ぐな人だよね。
 そういう人は隠すってこともしないから、むしろ安心なんじゃないかな。」
「めっちゃガサツですけどね。
 見るからにオトコ~って感じだけど、実は理論派なんですよ。
 力じゃなくて口で負かせるタイプ。」

 いいじゃないいいじゃない~、と依子は愛を励ますように言う。
「愛ちゃんは頭いいし、口も達者だから、舌戦だったら負けないわね。」
 おう!負けませんぜ! と愛もかえす。少し元気が出たようだ。

 温泉を堪能すると、すっかりふやけて疲れてしまったので、飲み屋に繰り出そうとしていたのをやめた。
 スーパーで適当な買い物をして、依子のアパートで宅飲みをすることにした。

 アパートに着いたら、まず、買ってきたばかりの冷えたビールで乾杯する。
「か~~!!サイコー。 お風呂の後に、冷えたビール。夏の夕方。
 控えめに言って最高。」
 愛がしみじみ言う。

「おつまみ簡単に用意するから、ソファででも楽にしててくださいね。」
 依子はそう言ってキッチンでガサゴソやり出す。
 愛は遠慮なくリビングの窓際にあった小さめのソファに腰掛ける。
 目の前のサイドテーブルにビールの瓶を置いた。

 横の窓から夕方の少し涼しくなった風が緩やかに入ってくる。
 レースのカーテンがふわりと揺れた。
 部屋を見回してみる。
 依子らしい、実用的なインテリアだ。
 アーティストだからもっと芸術が爆発している感じかと思ったら、意外とシンプルだ。必要最低限の家具だけが置いてあり、装飾などもほとんどない。
 窓のそばに置いてある小さな鉢からは、緑の葉をつけたヒョロリとした植物が生えている。アボカドの種を植えて発芽させたのであろうことがわかる。
 愛もよくやるが、しょっちゅう枯らすのだ。

 キッチン周りの細々としたものが、生活感を放っている。
 所帯染みたごく普通の室内の様子が、とても親近感を感じられて、安心できる心地良さがあった。
 揺れているカーテンを見ながら密やかな風を肌に感じているうちになんだか眠くなってきた。

 依子はスーパーで買ってきた、ちょっと高めの生ハムやチーズを出す。
 あと珍しく枝豆もあったので、塩茹でする。茹で上がったらさらに塩を振る。夏はしょっぱめがいい。
 どうせ愛は、から酒でほとんど食べないから、美味しいものを少量でいい。それから、クラッカーなども。

 酒豪の愛のために、お酒はいろいろ買い込んだ。
 ハンガリーの地元産ワイン、蒸留酒いろいろ、ビールいろいろ。
 用意ができて愛に声をかけようとしたら、ソファに横になって寝ていた。
 わずかの間に居眠りし始めたらしい。
 かわいいなあ、と思って、大きめのタオルをお腹のあたりにかけてあげる。
 誰かが、自分のそばで安心してくれている、というのはとても幸せなことだ。

 夏の宵は長い。
 依子は愛が起きるまで、しばらくテーブルでビールをチビチビ飲みながら本を読むことにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

〜仕事も恋愛もハードモード!?〜 ON/OFF♡オフィスワーカー

i.q
恋愛
切り替えギャップ鬼上司に翻弄されちゃうオフィスラブ☆ 最悪な失恋をした主人公とONとOFFの切り替えが激しい鬼上司のオフィスラブストーリー♡ バリバリのキャリアウーマン街道一直線の爽やか属性女子【川瀬 陸】。そんな陸は突然彼氏から呼び出される。出向いた先には……彼氏と見知らぬ女が!? 酷い失恋をした陸。しかし、同じ職場の鬼課長の【榊】は失恋なんてお構いなし。傷が乾かぬうちに仕事はスーパーハードモード。その上、この鬼課長は————。 数年前に執筆して他サイトに投稿してあったお話(別タイトル。本文軽い修正あり)

灰かぶりの姉

吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。 「今日からあなたのお父さんと妹だよ」 そう言われたあの日から…。 * * * 『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。 国枝 那月×野口 航平の過去編です。

アダルト漫画家とランジェリー娘

茜色
恋愛
21歳の音原珠里(おとはら・じゅり)は14歳年上のいとこでアダルト漫画家の音原誠也(おとはら・せいや)と二人暮らし。誠也は10年以上前、まだ子供だった珠里を引き取り養い続けてくれた「保護者」だ。 今や社会人となった珠里は、誠也への秘めた想いを胸に、いつまでこの平和な暮らしが許されるのか少し心配な日々を送っていて……。 ☆全22話です。職業等の設定・描写は非常に大雑把で緩いです。ご了承くださいませ。 ☆エピソードによって、ヒロイン視点とヒーロー視点が不定期に入れ替わります。 ☆「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しております。

閉じたまぶたの裏側で

櫻井音衣
恋愛
河合 芙佳(かわい ふうか・28歳)は 元恋人で上司の 橋本 勲(はしもと いさお・31歳)と 不毛な関係を3年も続けている。 元はと言えば、 芙佳が出向している半年の間に 勲が専務の娘の七海(ななみ・27歳)と 結婚していたのが発端だった。 高校時代の同級生で仲の良い同期の 山岸 應汰(やまぎし おうた・28歳)が、 そんな芙佳の恋愛事情を知った途端に 男友達のふりはやめると詰め寄って…。 どんなに好きでも先のない不毛な関係と、 自分だけを愛してくれる男友達との 同じ未来を望める関係。 芙佳はどちらを選ぶのか? “私にだって 幸せを求める権利くらいはあるはずだ”

上司に恋していいですか?

茜色
恋愛
恋愛に臆病な28歳のOL椎名澪(しいな みお)は、かつて自分をフッた男性が別の女性と結婚するという噂を聞く。ますます自信を失い落ち込んだ日々を送っていた澪は、仕事で大きなミスを犯してしまう。ことの重大さに動揺する澪の窮地を救ってくれたのは、以前から密かに憧れていた課長の成瀬昇吾(なるせ しょうご)だった。 澪より7歳年上の成瀬は、仕事もできてモテるのに何故か未だに独身で謎の多い人物。澪は自分など相手にされないと遠慮しつつ、仕事を通して一緒に過ごすうちに、成瀬に惹かれる想いを抑えられなくなっていく。けれども社内には、成瀬に関する気になる噂があって・・・。 ※ R18描写は後半まで出てきません。「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しています。

Home, Sweet Home

茜色
恋愛
OL生活7年目の庄野鞠子(しょうのまりこ)は、5つ年上の上司、藤堂達矢(とうどうたつや)に密かにあこがれている。あるアクシデントのせいで自宅マンションに戻れなくなった藤堂のために、鞠子は自分が暮らす一軒家に藤堂を泊まらせ、そのまま期間限定で同居することを提案する。 亡き祖母から受け継いだ古い家での共同生活は、かつて封印したはずの恋心を密かに蘇らせることになり・・・。 ☆ 全19話です。オフィスラブと謳っていますが、オフィスのシーンは少なめです 。「ムーンライトノベルズ」様に投稿済のものを一部改稿しております。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

おじさんは予防線にはなりません

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「俺はただの……ただのおじさんだ」 それは、私を完全に拒絶する言葉でした――。 4月から私が派遣された職場はとてもキラキラしたところだったけれど。 女性ばかりでギスギスしていて、上司は影が薄くて頼りにならない。 「おじさんでよかったら、いつでも相談に乗るから」 そう声をかけてくれたおじさんは唯一、頼れそうでした。 でもまさか、この人を好きになるなんて思ってもなかった。 さらにおじさんは、私の気持ちを知って遠ざける。 だから私は、私に好意を持ってくれている宗正さんと偽装恋愛することにした。 ……おじさんに、前と同じように笑いかけてほしくて。 羽坂詩乃 24歳、派遣社員 地味で堅実 真面目 一生懸命で応援してあげたくなる感じ × 池松和佳 38歳、アパレル総合商社レディースファッション部係長 気配り上手でLF部の良心 怒ると怖い 黒ラブ系眼鏡男子 ただし、既婚 × 宗正大河 28歳、アパレル総合商社LF部主任 可愛いのは実は計算? でももしかして根は真面目? ミニチュアダックス系男子 選ぶのはもちろん大河? それとも禁断の恋に手を出すの……? ****** 表紙 巴世里様 Twitter@parsley0129 ****** 毎日20:10更新

処理中です...