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追放者の荒野
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ぼろぼろの馬車に揺られ、私は王都を後にした。
身分を証明するものは全て取り上げられ、着ているものも、粗末な旅人用の服一枚だけ。
わずかな食料と水だけが、情けとして与えられた。
護衛として付けられたのは、無口な二人の兵士だけ。
彼らは私を罪人として扱い、必要最低限の言葉しか交わそうとしなかった。
数日後、馬車はある荒れ果てた土地で止まった。
「ここから先は、我らの管轄外だ」
「一人で生きていくがいい」
兵士たちはそう言い放つと、私を馬車から突き落とし、荷物を投げ捨て、さっさと王都の方へ引き返してしまった。
後に残されたのは、私一人。
見渡す限り、茶色い大地と枯れた草木が広がるばかり。
風が、砂塵を巻き上げながら、私の髪を乱暴に撫でていく。
「……これから、どうすればいいの」
涙も出なかった。
あまりの絶望に、感情が麻痺してしまったかのようだった。
とりあえず、歩き始めなければならない。
このままここにいても、野垂れ死にするだけだ。
どちらの方角に何があるのかもわからないまま、私はあてもなく歩き続けた。
日が暮れ、空腹と疲労で意識が朦朧としてきた頃、遠くに小さな灯りが見えた。
希望の光だった。
私は最後の力を振り絞り、その灯りに向かって歩いた。
そこは、数軒の家が寄り集まっただけの、小さな村だった。
村人たちは、突然現れた私を警戒し、遠巻きに見ているだけだった。
その誰もが、厳しい生活を物語るように、痩せて、汚れた服を着ていた。
「……助けて、ください」
私がか細い声で言うと、一人の老婆が近づいてきた。
「どこから来たんだい、お嬢ちゃん」
「王都、から……」
その言葉を聞いた途端、村人たちの目の色が変わった。
警戒が、あからさまな敵意に変わる。
「王都の人間だって?」
「貴族様が、こんなところで何をしてるんだ!」
石が飛んできた。
私の額に当たり、鈍い痛みが走る。
血が、視界を赤く染めた。
「出ていけ!」
「疫病神!」
罵声が浴びせられる。
王都から追放された罪人。
その噂は、こんな辺境の村にまで届いているのかもしれない。
意識が遠のいていく。
もう、駄目かもしれない。
そう思った時だった。
「やめろ、お前たち」
低く、けれどよく通る声が響いた。
村人たちが、はっとしたように口をつぐむ。
声のした方を見ると、一人の男が立っていた。
年の頃は二十代半ばくらいだろうか。
黒い髪を無造作に伸ばし、日に焼けた肌には、いくつかの古い傷跡が見える。
鋭い黒い瞳が、私をじっと見つめていた。
「この女は、俺が預かる」
男はそう言うと、いとも簡単に私を肩に担ぎ上げた。
抵抗する力は、残っていない。
「カイさん、そいつは……」
村人の一人が、不安そうに声をかける。
「黙れ」
カイと呼ばれた男は、それだけ言うと、村の外れにある一軒の小さな小屋へと私を運んでいった。
小屋の中は、質素だった。
木のテーブルと椅子が一つずつ。
奥には、藁が敷かれただけの寝床。
彼は私をその寝床に乱暴に下ろすと、どこからか濡れた布を持ってきた。
「動くな」
ぶっきらぼうに言うと、私の額の傷を手当てし始める。
その手つきは、見た目に似合わず、驚くほど優しかった。
「……ありがとう、ございます」
「礼を言う必要はない」
「気まぐれだ」
彼はそう言うと、テーブルの前に座り、パンの塊をナイフで切り分け始めた。
「なぜ、助けてくれたのですか?」
「……お前、何も食ってないんだろう」
「これを食え」
彼は、私の問いには答えず、パンの半分と水の入った革袋を投げてよこした。
私は、夢中でそれに食らいついた。
硬くて味気ないパンだったけれど、これほど美味しいと感じたことはなかった。
「お前、貴族だろう」
私が食べ終わるのを待って、カイが言った。
「……もう、違います」
「そうか」
彼はそれ以上、何も聞かなかった。
その沈黙が、私にはありがたかった。
その日から、私とカイの奇妙な共同生活が始まった。
彼は、私が何者で、なぜここにいるのかを一切聞かなかった。
ただ、生きるための術を、私に叩き込んでいった。
「薪も割れないのか」
「そんなやり方じゃ、水も汲めんだろうが」
カイの口調は、いつも命令形で、容赦がなかった。
私は生まれて初めて、自分の手で労働というものをした。
爪は割れ、手は豆だらけになり、毎晩、泥のように眠った。
最初は、悔しくて涙が出た。
こんなはずじゃなかった。
私は、レオナルド様と結ばれ、華やかな世界で生きていくはずだったのに。
でも、ある日、カイに言われた。
「泣いている暇があるなら、手を動かせ」
「過去を振り返っても、腹は膨れないぞ」
その言葉が、私の胸にすとんと落ちた。
そうだ。
私はもう、クライネルト伯爵令嬢アリアンナではない。
ただの、アリアだ。
ここで、生きていかなければならない。
私は、長い髪をナイフでばっさりと切った。
動きやすいように、男物のズボンを借りて穿いた。
鏡に映った自分の姿は、まるで別人のようだった。
でも、不思議と心は軽かった。
村人たちの態度は、相変わらず冷たかった。
でも、私が毎日必死に働く姿を見て、少しずつその視線が和らいでいくのを感じた。
時々、老婆がスープを分けてくれることもあった。
私は、カイと共に森へ狩りに行き、畑を耕した。
カイは、見た目によらず、森の知識が豊富で、薬草にも詳しかった。
「どうして、そんなに色々なことを知っているのですか?」
ある日、私が尋ねると、彼は少しだけ遠い目をした。
「……昔、少しだけ、そういう場所にいた」
それ以上は、語ろうとしなかった。
彼にも、何か訳があるのだろう。
この辺境の地に流れ着いた、深い訳が。
私たちは、多くを語り合わなかった。
でも、隣にいるだけで、不思議な安心感があった。
彼の不器用な優しさが、凍り付いていた私の心を、少しずつ溶かしていく。
ある夜、高熱を出して私がうなされていると、カイは一晩中、そばで看病してくれた。
冷たい布で汗を拭い、薬草を煎じた苦い汁を飲ませてくれた。
朦朧とする意識の中、私は彼の手に自分の手を重ねた。
彼の大きな手は、温かかった。
「……カイ」
「なんだ」
「ここに、いて」
彼は何も言わず、ただ、私の手を強く握り返してくれた。
その温もりを感じながら、私は思った。
王都での華やかな生活は、偽りの幸福だったのかもしれない。
今、この貧しく厳しい生活の中にこそ、本物の温かさがあるのかもしれない、と。
まだ、イザベラへの憎しみが消えたわけではない。
私を裏切ったレオナルド様を、許したわけでもない。
でも、私はもう、過去に囚われた哀れな令嬢ではなかった。
私は、この荒野で、もう一度立ち上がろうと決めたのだ。
身分を証明するものは全て取り上げられ、着ているものも、粗末な旅人用の服一枚だけ。
わずかな食料と水だけが、情けとして与えられた。
護衛として付けられたのは、無口な二人の兵士だけ。
彼らは私を罪人として扱い、必要最低限の言葉しか交わそうとしなかった。
数日後、馬車はある荒れ果てた土地で止まった。
「ここから先は、我らの管轄外だ」
「一人で生きていくがいい」
兵士たちはそう言い放つと、私を馬車から突き落とし、荷物を投げ捨て、さっさと王都の方へ引き返してしまった。
後に残されたのは、私一人。
見渡す限り、茶色い大地と枯れた草木が広がるばかり。
風が、砂塵を巻き上げながら、私の髪を乱暴に撫でていく。
「……これから、どうすればいいの」
涙も出なかった。
あまりの絶望に、感情が麻痺してしまったかのようだった。
とりあえず、歩き始めなければならない。
このままここにいても、野垂れ死にするだけだ。
どちらの方角に何があるのかもわからないまま、私はあてもなく歩き続けた。
日が暮れ、空腹と疲労で意識が朦朧としてきた頃、遠くに小さな灯りが見えた。
希望の光だった。
私は最後の力を振り絞り、その灯りに向かって歩いた。
そこは、数軒の家が寄り集まっただけの、小さな村だった。
村人たちは、突然現れた私を警戒し、遠巻きに見ているだけだった。
その誰もが、厳しい生活を物語るように、痩せて、汚れた服を着ていた。
「……助けて、ください」
私がか細い声で言うと、一人の老婆が近づいてきた。
「どこから来たんだい、お嬢ちゃん」
「王都、から……」
その言葉を聞いた途端、村人たちの目の色が変わった。
警戒が、あからさまな敵意に変わる。
「王都の人間だって?」
「貴族様が、こんなところで何をしてるんだ!」
石が飛んできた。
私の額に当たり、鈍い痛みが走る。
血が、視界を赤く染めた。
「出ていけ!」
「疫病神!」
罵声が浴びせられる。
王都から追放された罪人。
その噂は、こんな辺境の村にまで届いているのかもしれない。
意識が遠のいていく。
もう、駄目かもしれない。
そう思った時だった。
「やめろ、お前たち」
低く、けれどよく通る声が響いた。
村人たちが、はっとしたように口をつぐむ。
声のした方を見ると、一人の男が立っていた。
年の頃は二十代半ばくらいだろうか。
黒い髪を無造作に伸ばし、日に焼けた肌には、いくつかの古い傷跡が見える。
鋭い黒い瞳が、私をじっと見つめていた。
「この女は、俺が預かる」
男はそう言うと、いとも簡単に私を肩に担ぎ上げた。
抵抗する力は、残っていない。
「カイさん、そいつは……」
村人の一人が、不安そうに声をかける。
「黙れ」
カイと呼ばれた男は、それだけ言うと、村の外れにある一軒の小さな小屋へと私を運んでいった。
小屋の中は、質素だった。
木のテーブルと椅子が一つずつ。
奥には、藁が敷かれただけの寝床。
彼は私をその寝床に乱暴に下ろすと、どこからか濡れた布を持ってきた。
「動くな」
ぶっきらぼうに言うと、私の額の傷を手当てし始める。
その手つきは、見た目に似合わず、驚くほど優しかった。
「……ありがとう、ございます」
「礼を言う必要はない」
「気まぐれだ」
彼はそう言うと、テーブルの前に座り、パンの塊をナイフで切り分け始めた。
「なぜ、助けてくれたのですか?」
「……お前、何も食ってないんだろう」
「これを食え」
彼は、私の問いには答えず、パンの半分と水の入った革袋を投げてよこした。
私は、夢中でそれに食らいついた。
硬くて味気ないパンだったけれど、これほど美味しいと感じたことはなかった。
「お前、貴族だろう」
私が食べ終わるのを待って、カイが言った。
「……もう、違います」
「そうか」
彼はそれ以上、何も聞かなかった。
その沈黙が、私にはありがたかった。
その日から、私とカイの奇妙な共同生活が始まった。
彼は、私が何者で、なぜここにいるのかを一切聞かなかった。
ただ、生きるための術を、私に叩き込んでいった。
「薪も割れないのか」
「そんなやり方じゃ、水も汲めんだろうが」
カイの口調は、いつも命令形で、容赦がなかった。
私は生まれて初めて、自分の手で労働というものをした。
爪は割れ、手は豆だらけになり、毎晩、泥のように眠った。
最初は、悔しくて涙が出た。
こんなはずじゃなかった。
私は、レオナルド様と結ばれ、華やかな世界で生きていくはずだったのに。
でも、ある日、カイに言われた。
「泣いている暇があるなら、手を動かせ」
「過去を振り返っても、腹は膨れないぞ」
その言葉が、私の胸にすとんと落ちた。
そうだ。
私はもう、クライネルト伯爵令嬢アリアンナではない。
ただの、アリアだ。
ここで、生きていかなければならない。
私は、長い髪をナイフでばっさりと切った。
動きやすいように、男物のズボンを借りて穿いた。
鏡に映った自分の姿は、まるで別人のようだった。
でも、不思議と心は軽かった。
村人たちの態度は、相変わらず冷たかった。
でも、私が毎日必死に働く姿を見て、少しずつその視線が和らいでいくのを感じた。
時々、老婆がスープを分けてくれることもあった。
私は、カイと共に森へ狩りに行き、畑を耕した。
カイは、見た目によらず、森の知識が豊富で、薬草にも詳しかった。
「どうして、そんなに色々なことを知っているのですか?」
ある日、私が尋ねると、彼は少しだけ遠い目をした。
「……昔、少しだけ、そういう場所にいた」
それ以上は、語ろうとしなかった。
彼にも、何か訳があるのだろう。
この辺境の地に流れ着いた、深い訳が。
私たちは、多くを語り合わなかった。
でも、隣にいるだけで、不思議な安心感があった。
彼の不器用な優しさが、凍り付いていた私の心を、少しずつ溶かしていく。
ある夜、高熱を出して私がうなされていると、カイは一晩中、そばで看病してくれた。
冷たい布で汗を拭い、薬草を煎じた苦い汁を飲ませてくれた。
朦朧とする意識の中、私は彼の手に自分の手を重ねた。
彼の大きな手は、温かかった。
「……カイ」
「なんだ」
「ここに、いて」
彼は何も言わず、ただ、私の手を強く握り返してくれた。
その温もりを感じながら、私は思った。
王都での華やかな生活は、偽りの幸福だったのかもしれない。
今、この貧しく厳しい生活の中にこそ、本物の温かさがあるのかもしれない、と。
まだ、イザベラへの憎しみが消えたわけではない。
私を裏切ったレオナルド様を、許したわけでもない。
でも、私はもう、過去に囚われた哀れな令嬢ではなかった。
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