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第九話:世界樹の攻防と決死の突入
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静寂は破られた。
夜明けと共に、翠玉の森の東側から、地響きと共におびただしい数の魔族が姿を現した。
空は禍々しい暗雲に覆われ、太陽の光さえ遮られている。
先頭に立つのは、巨大な戦斧や歪んだ剣を手にした屈強な魔族たち。
その後ろには、無数の斥候タイプや、不気味な呪文を唱えるローブ姿の魔族が続く。
その数は、エルフたちの予想を遥かに超えていた。
まるで黒い津波のように、彼らは世界樹の心臓を目指して突き進んでくる。
「来たか…!」
防衛線の最前線に立つエルロンド長老が、苦々しく呟いた。
エルフたちの間に緊張が走る。
皆、弓を構え、あるいは魔法の力を練り上げ、息を殺して敵の接近を待つ。
フィンは、少し高くなった岩場の上から、戦況全体を見渡せる位置にいた。
隣にはリーナとロナンが控え、彼の指示を待っている。
フィンの心臓は激しく高鳴っていたが、恐怖よりも、故郷を守るという強い意志が勝っていた。
魔族の先頭集団が、フィンの予測通り、古い獣道へと殺到してきた。
そして、最初の罠が設置された区域に足を踏み入れる。
「今だ!」
フィンの合図と共に、隠れていたエルフたちが一斉に仕掛けを作動させた。
地面に張られた銀葉草の蔓(つる)が強い光を放ち、足を踏み入れた魔族たちが苦悶の声を上げる。
同時に、頭上からは銀葉草の粉末を詰めた袋が降り注ぎ、聖なる香りが魔族たちの動きを鈍らせた。
「放て!」
リーナの鋭い号令が響き渡る。
木々の上や岩陰に潜んでいた弓兵たちが、一斉に銀葉草の矢を雨のように降らせた。
矢は的確に魔族たちの急所を捉え、次々と敵を射抜いていく。
特にリーナの放つ矢は、目覚ましい精度で魔族の指揮官らしき個体を狙い撃ち、敵の統制を乱した。
序盤は、エルフたちの準備と地の利が功を奏し、魔族の進軍を食い止めているように見えた。
しかし、魔族の数はあまりにも多い。
倒しても倒しても、後続が次々と現れ、防衛線を押し返そうとしてくる。
「フィン! 嘆きの沼の手前の防衛線が押されている! 奴ら、沼を強引に突破しようとしているぞ!」
ロナンの報告に、フィンは眉をひそめた。
嘆きの沼は、銀葉草の効力が弱まる危険な場所だ。
あそこを突破されれば、一気に心臓部まで迫られてしまう。
「ロナン、側面部隊を率いて沼の入り口を叩け! 沼に入る前に少しでも数を減らすんだ!」
「リーナ! 沼を抜けた先の、第二防衛線にいる者たちに合図を! 敵が沼から出てきた瞬間を狙え!」
フィンは冷静に、しかし迅速に指示を飛ばす。
彼の指示は的確で、混乱しかけていたエルフたちの動きに再び秩序をもたらした。
フィン自身も、ただ指示を出しているだけではなかった。
彼は、以前森で採取していた、特定の周波数の音を出すことができる特殊な石を取り出した。
(古文書に、ある種の魔族はこの音を極端に嫌うとあった…試してみる価値はある!)
フィンが石を擦り合わせると、人間やエルフの耳にはほとんど聞こえない高周波の音が発生した。
すると、前線で戦っていた一部の魔族が、突然頭を抱えて苦しみ始め、動きが明らかに鈍くなったのだ。
「効いた!」
フィンはその隙を見逃さず、隠し持っていた銀葉草の粉末を詰めた投擲弾を投げつけ、敵陣をさらに混乱させた。
彼の機転と、森で培った知識が、戦況を支える一助となっていた。
しかし、戦いが激化するにつれて、魔族側にも変化が現れた。
後方から、これまでとは比較にならないほど巨大で、禍々しいオーラを放つ一体の魔族が進み出てきたのだ。
全身を黒曜石のような硬い鎧で覆い、手には燃え盛る炎を纏った巨大な剣を握っている。
その威圧感は、他の魔族とは明らかに異次元だった。
「あれは…まさか、ヴォルガレスの側近…『黒焔の将軍』ガルゾス…!」
エルロンド長老が、古の伝承に残る名を口にし、顔色を変えた。
ガルゾスは、闇の王に仕える最も強力な魔将の一人であり、その力はエルフの英雄数人がかりでも敵わなかったと伝えられている。
ガルゾスが一振りした炎の剣から放たれた衝撃波は、エルフの防壁の一部を容易く吹き飛ばし、銀葉草の結界をも焼き切った。
「ぐあああっ!」
前線のエルフたちが、なすすべもなく薙ぎ払われる。
ガルゾスの出現により、戦況は一気に魔族側へと傾き始めた。
エルフたちの間に動揺が広がる。
「このままでは、防衛線が突破される…!」
ロナンが焦りの声を上げる。
フィンは唇を噛みしめた。
ガルゾスを止めなければ、世界樹の心臓まで到達されてしまう。
しかし、あの強大な相手に、どう立ち向かえばいいのか。
(奴をここで足止めしている間に、誰かが心臓を守りに行かなければ…いや、あるいは…奴の目的が心臓そのものなら、奴を引きつければ…?)
フィンは、一瞬のうちに思考を巡らせた。
そして、一つの危険な賭けに出ることを決意した。
「リーナ、ロナン、長老に伝えてくれ! 僕が奴を引きつける! その隙に、残りの全力で防衛線を立て直し、心臓を守ってほしいと!」
「フィン!? 何を言っているの! あなた一人であんな化け物に!」
リーナが悲鳴のような声を上げる。
「一人じゃない。
それに、僕には考えがある。
僕なら、あいつを心臓から遠ざけることができるかもしれない」
フィンは、自分の森に関する知識と、変わり者ゆえの予測不能な行動が、あるいはガルゾスのような強大な敵に対して有効かもしれないと考えたのだ。
「頼む! 時間がないんだ!」
フィンの真剣な眼差しに、リーナとロナンは一瞬ためらったが、彼の覚悟を悟り、頷いた。
ロナンはすぐに長老の元へ走り、リーナはフィンを見つめた。
「…必ず、戻ってきて。
フィン」
「ああ、約束する」
短い言葉を交わし、フィンは岩場から飛び降りると、ガルゾスに向かって駆け出した。
彼は、あえて目立つように声を上げ、ガルゾスの注意を引いた。
「おい、そこの黒焦げ将軍! お前の相手はこっちだ!」
ガルゾスは、小さなエルフが自分に向かってくるのを見て、嘲るかのように鼻を鳴らした。
「愚かな虫けらが…死に急ぐか」
フィンはガルゾスの攻撃を紙一重でかわしながら、森の奥深く、世界樹の心臓とは逆の方向へと誘導するように走り始めた。
彼の狙いは、ガルゾスを自分におびき寄せ、その間にエルフたちが体勢を立て直す時間を稼ぐこと、そして、できれば森の地形を利用してガルゾスを罠にはめることだった。
ガルゾスは、フィンの挑発に乗り、彼を追って森の奥へと進んでいく。
一方、フィンの決死の陽動により、エルフたちは一時的にガルゾスの猛攻から解放され、必死に防衛線の再構築を進めていた。
フィンは、息を切らしながらも、知っている限りの複雑な地形や、精霊力が不安定な場所を選んで走り続けた。
ガルゾスは、その圧倒的なパワーで木々をなぎ倒しながら追ってくるが、フィンの素早さと地の利を活かした動きに、少しずつ苛立ちを見せ始めていた。
(もう少しだ…もう少しで、あの場所に…)
フィンには、目指している場所があった。
それは、古代の遺跡近くにある、特に精霊力が乱れやすく、空間が歪むこともあると言われる危険な谷だ。
そこならば、ガルゾスの強大な力も、何らかの影響を受けるかもしれない。
ついに、フィンは目的の谷へとたどり着いた。
背後からは、ガルゾスの怒りに満ちた咆哮が迫っている。
谷底は薄暗く、奇妙な光が明滅している。
そして、谷の中心には…
フィンは息をのんだ。
そこには、世界樹の心臓とは違う、しかし同様に強い力を放つ、もう一つの巨大な水晶体が鎮座していたのだ。
それは、まるで闇に染まったかのような、黒く脈打つ水晶だった。
(なんだ…これは…? 古文書にもなかった…)
フィンが愕然としていると、谷の上からガルゾスが飛び降りてきた。
「逃げ場はないぞ、小僧。
ここで終わりだ」
ガルゾスは炎の剣を振り上げる。
しかし、その瞬間、黒い水晶が禍々しい光を放ち、ガルゾスの動きが一瞬止まった。
まるで、水晶がガルゾスに何かを語りかけているかのようだ。
そして、ガルゾスは剣を下ろし、代わりに黒い水晶に向かって恭しく頭を下げた。
「…ヴォルガレス様…ご命令とあらば…」
フィンは、信じられない光景を目の当たりにしていた。
あのガルゾスが、黒い水晶に対して「ヴォルガレス様」と呼びかけたのだ。
(まさか…この水晶が…闇の王の…?)
闇の王ヴォルガレスは、単なる伝説上の存在ではなかった。
その意思、あるいは本体の一部が、この翠玉の森の奥深くに、世界樹の心臓と対を成すかのように存在していたのだ。
そして、黒い水晶は、フィンに向かって、直接語りかけてきたかのように、彼の精神に冷たく、重いプレッシャーを与えてきた。
『フフフ…エルフの異端児…面白い…余興にはなるか…』
声にならない声が、フィンの脳内に響き渡る。
絶望的な状況。
最強の魔将と、復活を目論む闇の王の意思。
フィンは、たった一人で、翠玉の森の、そして世界の運命を左右するかもしれない、最大の危機に直面していた。
夜明けと共に、翠玉の森の東側から、地響きと共におびただしい数の魔族が姿を現した。
空は禍々しい暗雲に覆われ、太陽の光さえ遮られている。
先頭に立つのは、巨大な戦斧や歪んだ剣を手にした屈強な魔族たち。
その後ろには、無数の斥候タイプや、不気味な呪文を唱えるローブ姿の魔族が続く。
その数は、エルフたちの予想を遥かに超えていた。
まるで黒い津波のように、彼らは世界樹の心臓を目指して突き進んでくる。
「来たか…!」
防衛線の最前線に立つエルロンド長老が、苦々しく呟いた。
エルフたちの間に緊張が走る。
皆、弓を構え、あるいは魔法の力を練り上げ、息を殺して敵の接近を待つ。
フィンは、少し高くなった岩場の上から、戦況全体を見渡せる位置にいた。
隣にはリーナとロナンが控え、彼の指示を待っている。
フィンの心臓は激しく高鳴っていたが、恐怖よりも、故郷を守るという強い意志が勝っていた。
魔族の先頭集団が、フィンの予測通り、古い獣道へと殺到してきた。
そして、最初の罠が設置された区域に足を踏み入れる。
「今だ!」
フィンの合図と共に、隠れていたエルフたちが一斉に仕掛けを作動させた。
地面に張られた銀葉草の蔓(つる)が強い光を放ち、足を踏み入れた魔族たちが苦悶の声を上げる。
同時に、頭上からは銀葉草の粉末を詰めた袋が降り注ぎ、聖なる香りが魔族たちの動きを鈍らせた。
「放て!」
リーナの鋭い号令が響き渡る。
木々の上や岩陰に潜んでいた弓兵たちが、一斉に銀葉草の矢を雨のように降らせた。
矢は的確に魔族たちの急所を捉え、次々と敵を射抜いていく。
特にリーナの放つ矢は、目覚ましい精度で魔族の指揮官らしき個体を狙い撃ち、敵の統制を乱した。
序盤は、エルフたちの準備と地の利が功を奏し、魔族の進軍を食い止めているように見えた。
しかし、魔族の数はあまりにも多い。
倒しても倒しても、後続が次々と現れ、防衛線を押し返そうとしてくる。
「フィン! 嘆きの沼の手前の防衛線が押されている! 奴ら、沼を強引に突破しようとしているぞ!」
ロナンの報告に、フィンは眉をひそめた。
嘆きの沼は、銀葉草の効力が弱まる危険な場所だ。
あそこを突破されれば、一気に心臓部まで迫られてしまう。
「ロナン、側面部隊を率いて沼の入り口を叩け! 沼に入る前に少しでも数を減らすんだ!」
「リーナ! 沼を抜けた先の、第二防衛線にいる者たちに合図を! 敵が沼から出てきた瞬間を狙え!」
フィンは冷静に、しかし迅速に指示を飛ばす。
彼の指示は的確で、混乱しかけていたエルフたちの動きに再び秩序をもたらした。
フィン自身も、ただ指示を出しているだけではなかった。
彼は、以前森で採取していた、特定の周波数の音を出すことができる特殊な石を取り出した。
(古文書に、ある種の魔族はこの音を極端に嫌うとあった…試してみる価値はある!)
フィンが石を擦り合わせると、人間やエルフの耳にはほとんど聞こえない高周波の音が発生した。
すると、前線で戦っていた一部の魔族が、突然頭を抱えて苦しみ始め、動きが明らかに鈍くなったのだ。
「効いた!」
フィンはその隙を見逃さず、隠し持っていた銀葉草の粉末を詰めた投擲弾を投げつけ、敵陣をさらに混乱させた。
彼の機転と、森で培った知識が、戦況を支える一助となっていた。
しかし、戦いが激化するにつれて、魔族側にも変化が現れた。
後方から、これまでとは比較にならないほど巨大で、禍々しいオーラを放つ一体の魔族が進み出てきたのだ。
全身を黒曜石のような硬い鎧で覆い、手には燃え盛る炎を纏った巨大な剣を握っている。
その威圧感は、他の魔族とは明らかに異次元だった。
「あれは…まさか、ヴォルガレスの側近…『黒焔の将軍』ガルゾス…!」
エルロンド長老が、古の伝承に残る名を口にし、顔色を変えた。
ガルゾスは、闇の王に仕える最も強力な魔将の一人であり、その力はエルフの英雄数人がかりでも敵わなかったと伝えられている。
ガルゾスが一振りした炎の剣から放たれた衝撃波は、エルフの防壁の一部を容易く吹き飛ばし、銀葉草の結界をも焼き切った。
「ぐあああっ!」
前線のエルフたちが、なすすべもなく薙ぎ払われる。
ガルゾスの出現により、戦況は一気に魔族側へと傾き始めた。
エルフたちの間に動揺が広がる。
「このままでは、防衛線が突破される…!」
ロナンが焦りの声を上げる。
フィンは唇を噛みしめた。
ガルゾスを止めなければ、世界樹の心臓まで到達されてしまう。
しかし、あの強大な相手に、どう立ち向かえばいいのか。
(奴をここで足止めしている間に、誰かが心臓を守りに行かなければ…いや、あるいは…奴の目的が心臓そのものなら、奴を引きつければ…?)
フィンは、一瞬のうちに思考を巡らせた。
そして、一つの危険な賭けに出ることを決意した。
「リーナ、ロナン、長老に伝えてくれ! 僕が奴を引きつける! その隙に、残りの全力で防衛線を立て直し、心臓を守ってほしいと!」
「フィン!? 何を言っているの! あなた一人であんな化け物に!」
リーナが悲鳴のような声を上げる。
「一人じゃない。
それに、僕には考えがある。
僕なら、あいつを心臓から遠ざけることができるかもしれない」
フィンは、自分の森に関する知識と、変わり者ゆえの予測不能な行動が、あるいはガルゾスのような強大な敵に対して有効かもしれないと考えたのだ。
「頼む! 時間がないんだ!」
フィンの真剣な眼差しに、リーナとロナンは一瞬ためらったが、彼の覚悟を悟り、頷いた。
ロナンはすぐに長老の元へ走り、リーナはフィンを見つめた。
「…必ず、戻ってきて。
フィン」
「ああ、約束する」
短い言葉を交わし、フィンは岩場から飛び降りると、ガルゾスに向かって駆け出した。
彼は、あえて目立つように声を上げ、ガルゾスの注意を引いた。
「おい、そこの黒焦げ将軍! お前の相手はこっちだ!」
ガルゾスは、小さなエルフが自分に向かってくるのを見て、嘲るかのように鼻を鳴らした。
「愚かな虫けらが…死に急ぐか」
フィンはガルゾスの攻撃を紙一重でかわしながら、森の奥深く、世界樹の心臓とは逆の方向へと誘導するように走り始めた。
彼の狙いは、ガルゾスを自分におびき寄せ、その間にエルフたちが体勢を立て直す時間を稼ぐこと、そして、できれば森の地形を利用してガルゾスを罠にはめることだった。
ガルゾスは、フィンの挑発に乗り、彼を追って森の奥へと進んでいく。
一方、フィンの決死の陽動により、エルフたちは一時的にガルゾスの猛攻から解放され、必死に防衛線の再構築を進めていた。
フィンは、息を切らしながらも、知っている限りの複雑な地形や、精霊力が不安定な場所を選んで走り続けた。
ガルゾスは、その圧倒的なパワーで木々をなぎ倒しながら追ってくるが、フィンの素早さと地の利を活かした動きに、少しずつ苛立ちを見せ始めていた。
(もう少しだ…もう少しで、あの場所に…)
フィンには、目指している場所があった。
それは、古代の遺跡近くにある、特に精霊力が乱れやすく、空間が歪むこともあると言われる危険な谷だ。
そこならば、ガルゾスの強大な力も、何らかの影響を受けるかもしれない。
ついに、フィンは目的の谷へとたどり着いた。
背後からは、ガルゾスの怒りに満ちた咆哮が迫っている。
谷底は薄暗く、奇妙な光が明滅している。
そして、谷の中心には…
フィンは息をのんだ。
そこには、世界樹の心臓とは違う、しかし同様に強い力を放つ、もう一つの巨大な水晶体が鎮座していたのだ。
それは、まるで闇に染まったかのような、黒く脈打つ水晶だった。
(なんだ…これは…? 古文書にもなかった…)
フィンが愕然としていると、谷の上からガルゾスが飛び降りてきた。
「逃げ場はないぞ、小僧。
ここで終わりだ」
ガルゾスは炎の剣を振り上げる。
しかし、その瞬間、黒い水晶が禍々しい光を放ち、ガルゾスの動きが一瞬止まった。
まるで、水晶がガルゾスに何かを語りかけているかのようだ。
そして、ガルゾスは剣を下ろし、代わりに黒い水晶に向かって恭しく頭を下げた。
「…ヴォルガレス様…ご命令とあらば…」
フィンは、信じられない光景を目の当たりにしていた。
あのガルゾスが、黒い水晶に対して「ヴォルガレス様」と呼びかけたのだ。
(まさか…この水晶が…闇の王の…?)
闇の王ヴォルガレスは、単なる伝説上の存在ではなかった。
その意思、あるいは本体の一部が、この翠玉の森の奥深くに、世界樹の心臓と対を成すかのように存在していたのだ。
そして、黒い水晶は、フィンに向かって、直接語りかけてきたかのように、彼の精神に冷たく、重いプレッシャーを与えてきた。
『フフフ…エルフの異端児…面白い…余興にはなるか…』
声にならない声が、フィンの脳内に響き渡る。
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