【完結】腹ペコ貴族のスキルは「種」でした

シマセイ

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第47話『君のスキルは「種」』

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「これで、終わりだ」

アレンの手のひらに宿る、まばゆい光の種。
それは、全ての闇を浄化し、消し去るほどの、清らかな力を秘めていた。

私兵部隊の指揮官は、『呪いの種』の茨に力を吸われながらも、アレンのその姿を見て、嘲るように言った。

「小僧……!
その聖なる力で、この私ごと、呪いを滅するつもりか……!
だが、それで、本当に全てが解決するとでも……!」

その言葉に、アレンの脳裏に、いくつもの光景が蘇った。
トレント・ベアの、苦しみに満ちた瞳。
「あなたまで同じになっちゃう」と、涙ながらに訴えた、リナリアの声。

アレンは、静かに、首を横に振った。
憎しみは、きっと、何も生まない。
僕のスキルは、そんなことのためにあるんじゃない。

彼は、指揮官に向かって、光の種を投げることはしなかった。
その足を、一歩、前へ進める。
目指すは、全ての元凶。
世界樹の心臓に突き刺さる、巨大な『呪いの棘』。

「お前も、ずっと、苦しかったんだろ。
こんな、暗くて、冷たい場所に、ずっと一人で刺さったままで。
もう、大丈夫だよ」

アレンは、まるで迷子の子供に語りかけるように、その巨大な『呪いの棘』に向かって、優しく話しかけた。

そして、彼は、最後の奇跡を起こす。
右手に『光の種』を、左手には、指揮官から力を吸い取り続ける『呪いの茨』を操りながら。
光と闇、二つの相反する力を、同時に発動させたのだ。

彼の目的は、破壊ではない。
この、巨大な呪いの塊そのものを、**『浄化』し、『癒す』**ことだった。

アレンの体から、黄金と白銀の光、そして、静かな闇のオーラが、巨大な渦となって、『呪いの棘』へと注ぎ込まれていく。

「グオオオオオオッ!」

『呪いの棘』は、まるで生き物のように、激しく抵抗し、洞窟全体を揺るがすほどの、邪悪な絶叫を上げた。
だが、アレンの、あまりにも純粋で、あまりにも温かい「癒したい」という気持ちが、徐々に、その憎悪に満ちた呪いを、上回っていく。

光の力が、棘に巣食う邪悪な意思を、優しく洗い流していく。
闇の力が、暴走する負のエネルギーを、静かに吸収し、制御していく。

やがて。
禍々しい黒曜石のようだった『呪いの棘』の表面から、黒い煤のような色が、ぱらぱらと剥がれ落ちていった。
そして、その内側から現れたのは、本来の姿である、美しい生命の輝きを宿した、巨大な「世界樹の心臓の核」だった。

呪いが、完全に浄化された。
その瞬間、指揮官に絡みついていた呪いの茨も、その役目を終えたかのように、力を失い、霧散していく。
指揮官は、完全に戦意を喪失し、その場に崩れ落ちた。

洞窟の外では、奇跡が起きていた。
枯れ果て、骸骨のようだった世界樹の幹に、みるみるうちに、鮮やかな緑色が戻っていく。
枯れ落ちた枝という枝から、一斉に、美しい銀色の若葉が、芽吹き始める。
森全体に、温かい生命の息吹が、風となって吹き抜けていった。

砦で、祈るようにその光景を見上げていたエルフたちが、歓喜の声を上げる。
白銀の森が、その輝きを取り戻したのだ。



洞窟の中で、アレンは、全ての力を使い果たし、その場に、へなへないと座り込んだ。
でも、その顔には、これまでで一番、満足そうな、優しい笑みが浮かんでいた。

グレイが、指揮官をはじめとする私兵たちの身柄を、素早く確保する。

「こいつらの処遇は、儂と学院長、そして、国王陛下とで決めさせてもらう。
ヴァイス公爵の全ての罪も、これで完全に明らかになるだろう」

リナリアとルミナが、アレンに駆け寄った。
ルミナは、その気高い瞳に、大粒の涙を浮かべながら、アレンの前に、深く、深く、膝をついた。

「ありがとう……ございます。
アレン・リンク。
あなたは、我らが森の、そして、あるいは、この世界の、救い主です」

エルフの王族からの、最大級の感謝の言葉。
だが、アレンは、そんな大げさな言葉に、照れくさそうに頭を掻くと、いつもの、あの台詞を言った。

「ううん。
そんなことよりさ……」

彼は、にぱっと笑う。

「すっごく、お腹すいたなあ。
森が元気になったから、きっと、すごく美味しい木の実が、いっぱいなってるよね?」

最後の最後まで、アレンは、アレンだった。
その、あまりにも彼らしい一言に、リナリアも、ルミナも、そして、遠くで聞いていたグレイも、張り詰めていた緊張の糸が切れ、涙と、そして、温かい笑いに包まれた。
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