47 / 88
第47話『君のスキルは「種」』
しおりを挟む
「これで、終わりだ」
アレンの手のひらに宿る、まばゆい光の種。
それは、全ての闇を浄化し、消し去るほどの、清らかな力を秘めていた。
私兵部隊の指揮官は、『呪いの種』の茨に力を吸われながらも、アレンのその姿を見て、嘲るように言った。
「小僧……!
その聖なる力で、この私ごと、呪いを滅するつもりか……!
だが、それで、本当に全てが解決するとでも……!」
その言葉に、アレンの脳裏に、いくつもの光景が蘇った。
トレント・ベアの、苦しみに満ちた瞳。
「あなたまで同じになっちゃう」と、涙ながらに訴えた、リナリアの声。
アレンは、静かに、首を横に振った。
憎しみは、きっと、何も生まない。
僕のスキルは、そんなことのためにあるんじゃない。
彼は、指揮官に向かって、光の種を投げることはしなかった。
その足を、一歩、前へ進める。
目指すは、全ての元凶。
世界樹の心臓に突き刺さる、巨大な『呪いの棘』。
「お前も、ずっと、苦しかったんだろ。
こんな、暗くて、冷たい場所に、ずっと一人で刺さったままで。
もう、大丈夫だよ」
アレンは、まるで迷子の子供に語りかけるように、その巨大な『呪いの棘』に向かって、優しく話しかけた。
そして、彼は、最後の奇跡を起こす。
右手に『光の種』を、左手には、指揮官から力を吸い取り続ける『呪いの茨』を操りながら。
光と闇、二つの相反する力を、同時に発動させたのだ。
彼の目的は、破壊ではない。
この、巨大な呪いの塊そのものを、**『浄化』し、『癒す』**ことだった。
アレンの体から、黄金と白銀の光、そして、静かな闇のオーラが、巨大な渦となって、『呪いの棘』へと注ぎ込まれていく。
「グオオオオオオッ!」
『呪いの棘』は、まるで生き物のように、激しく抵抗し、洞窟全体を揺るがすほどの、邪悪な絶叫を上げた。
だが、アレンの、あまりにも純粋で、あまりにも温かい「癒したい」という気持ちが、徐々に、その憎悪に満ちた呪いを、上回っていく。
光の力が、棘に巣食う邪悪な意思を、優しく洗い流していく。
闇の力が、暴走する負のエネルギーを、静かに吸収し、制御していく。
やがて。
禍々しい黒曜石のようだった『呪いの棘』の表面から、黒い煤のような色が、ぱらぱらと剥がれ落ちていった。
そして、その内側から現れたのは、本来の姿である、美しい生命の輝きを宿した、巨大な「世界樹の心臓の核」だった。
呪いが、完全に浄化された。
その瞬間、指揮官に絡みついていた呪いの茨も、その役目を終えたかのように、力を失い、霧散していく。
指揮官は、完全に戦意を喪失し、その場に崩れ落ちた。
洞窟の外では、奇跡が起きていた。
枯れ果て、骸骨のようだった世界樹の幹に、みるみるうちに、鮮やかな緑色が戻っていく。
枯れ落ちた枝という枝から、一斉に、美しい銀色の若葉が、芽吹き始める。
森全体に、温かい生命の息吹が、風となって吹き抜けていった。
砦で、祈るようにその光景を見上げていたエルフたちが、歓喜の声を上げる。
白銀の森が、その輝きを取り戻したのだ。
◇
洞窟の中で、アレンは、全ての力を使い果たし、その場に、へなへないと座り込んだ。
でも、その顔には、これまでで一番、満足そうな、優しい笑みが浮かんでいた。
グレイが、指揮官をはじめとする私兵たちの身柄を、素早く確保する。
「こいつらの処遇は、儂と学院長、そして、国王陛下とで決めさせてもらう。
ヴァイス公爵の全ての罪も、これで完全に明らかになるだろう」
リナリアとルミナが、アレンに駆け寄った。
ルミナは、その気高い瞳に、大粒の涙を浮かべながら、アレンの前に、深く、深く、膝をついた。
「ありがとう……ございます。
アレン・リンク。
あなたは、我らが森の、そして、あるいは、この世界の、救い主です」
エルフの王族からの、最大級の感謝の言葉。
だが、アレンは、そんな大げさな言葉に、照れくさそうに頭を掻くと、いつもの、あの台詞を言った。
「ううん。
そんなことよりさ……」
彼は、にぱっと笑う。
「すっごく、お腹すいたなあ。
森が元気になったから、きっと、すごく美味しい木の実が、いっぱいなってるよね?」
最後の最後まで、アレンは、アレンだった。
その、あまりにも彼らしい一言に、リナリアも、ルミナも、そして、遠くで聞いていたグレイも、張り詰めていた緊張の糸が切れ、涙と、そして、温かい笑いに包まれた。
アレンの手のひらに宿る、まばゆい光の種。
それは、全ての闇を浄化し、消し去るほどの、清らかな力を秘めていた。
私兵部隊の指揮官は、『呪いの種』の茨に力を吸われながらも、アレンのその姿を見て、嘲るように言った。
「小僧……!
その聖なる力で、この私ごと、呪いを滅するつもりか……!
だが、それで、本当に全てが解決するとでも……!」
その言葉に、アレンの脳裏に、いくつもの光景が蘇った。
トレント・ベアの、苦しみに満ちた瞳。
「あなたまで同じになっちゃう」と、涙ながらに訴えた、リナリアの声。
アレンは、静かに、首を横に振った。
憎しみは、きっと、何も生まない。
僕のスキルは、そんなことのためにあるんじゃない。
彼は、指揮官に向かって、光の種を投げることはしなかった。
その足を、一歩、前へ進める。
目指すは、全ての元凶。
世界樹の心臓に突き刺さる、巨大な『呪いの棘』。
「お前も、ずっと、苦しかったんだろ。
こんな、暗くて、冷たい場所に、ずっと一人で刺さったままで。
もう、大丈夫だよ」
アレンは、まるで迷子の子供に語りかけるように、その巨大な『呪いの棘』に向かって、優しく話しかけた。
そして、彼は、最後の奇跡を起こす。
右手に『光の種』を、左手には、指揮官から力を吸い取り続ける『呪いの茨』を操りながら。
光と闇、二つの相反する力を、同時に発動させたのだ。
彼の目的は、破壊ではない。
この、巨大な呪いの塊そのものを、**『浄化』し、『癒す』**ことだった。
アレンの体から、黄金と白銀の光、そして、静かな闇のオーラが、巨大な渦となって、『呪いの棘』へと注ぎ込まれていく。
「グオオオオオオッ!」
『呪いの棘』は、まるで生き物のように、激しく抵抗し、洞窟全体を揺るがすほどの、邪悪な絶叫を上げた。
だが、アレンの、あまりにも純粋で、あまりにも温かい「癒したい」という気持ちが、徐々に、その憎悪に満ちた呪いを、上回っていく。
光の力が、棘に巣食う邪悪な意思を、優しく洗い流していく。
闇の力が、暴走する負のエネルギーを、静かに吸収し、制御していく。
やがて。
禍々しい黒曜石のようだった『呪いの棘』の表面から、黒い煤のような色が、ぱらぱらと剥がれ落ちていった。
そして、その内側から現れたのは、本来の姿である、美しい生命の輝きを宿した、巨大な「世界樹の心臓の核」だった。
呪いが、完全に浄化された。
その瞬間、指揮官に絡みついていた呪いの茨も、その役目を終えたかのように、力を失い、霧散していく。
指揮官は、完全に戦意を喪失し、その場に崩れ落ちた。
洞窟の外では、奇跡が起きていた。
枯れ果て、骸骨のようだった世界樹の幹に、みるみるうちに、鮮やかな緑色が戻っていく。
枯れ落ちた枝という枝から、一斉に、美しい銀色の若葉が、芽吹き始める。
森全体に、温かい生命の息吹が、風となって吹き抜けていった。
砦で、祈るようにその光景を見上げていたエルフたちが、歓喜の声を上げる。
白銀の森が、その輝きを取り戻したのだ。
◇
洞窟の中で、アレンは、全ての力を使い果たし、その場に、へなへないと座り込んだ。
でも、その顔には、これまでで一番、満足そうな、優しい笑みが浮かんでいた。
グレイが、指揮官をはじめとする私兵たちの身柄を、素早く確保する。
「こいつらの処遇は、儂と学院長、そして、国王陛下とで決めさせてもらう。
ヴァイス公爵の全ての罪も、これで完全に明らかになるだろう」
リナリアとルミナが、アレンに駆け寄った。
ルミナは、その気高い瞳に、大粒の涙を浮かべながら、アレンの前に、深く、深く、膝をついた。
「ありがとう……ございます。
アレン・リンク。
あなたは、我らが森の、そして、あるいは、この世界の、救い主です」
エルフの王族からの、最大級の感謝の言葉。
だが、アレンは、そんな大げさな言葉に、照れくさそうに頭を掻くと、いつもの、あの台詞を言った。
「ううん。
そんなことよりさ……」
彼は、にぱっと笑う。
「すっごく、お腹すいたなあ。
森が元気になったから、きっと、すごく美味しい木の実が、いっぱいなってるよね?」
最後の最後まで、アレンは、アレンだった。
その、あまりにも彼らしい一言に、リナリアも、ルミナも、そして、遠くで聞いていたグレイも、張り詰めていた緊張の糸が切れ、涙と、そして、温かい笑いに包まれた。
25
あなたにおすすめの小説
ギルド受付嬢は今日も見送る~平凡な私がのんびりと暮らす街にやってきた、少し不思議な魔術師との日常~
弥生紗和
ファンタジー
【完結】私はギルド受付嬢のエルナ。魔物を倒す「討伐者」に依頼を紹介し、彼らを見送る毎日だ。最近ギルドにやってきたアレイスさんという魔術師は、綺麗な顔をした素敵な男性でとても優しい。平凡で代わり映えのしない毎日が、彼のおかげでとても楽しい。でもアレイスさんには何か秘密がありそうだ。
一方のアレイスは、真っすぐで優しいエルナに次第に重い感情を抱き始める――
恋愛はゆっくりと進展しつつ、アレイスの激重愛がチラチラと。大きな事件やバトルは起こりません。こんな街で暮らしたい、と思えるような素敵な街「ミルデン」の日常と、小さな事件を描きます。
大人女性向けの異世界スローライフをお楽しみください。
西洋風異世界ですが、実際のヨーロッパとは異なります。魔法が当たり前にある世界です。食べ物とかファッションとか、かなり自由に書いてます。あくまで「こんな世界があったらいいな」ということで、ご容赦ください。
※サブタイトルで「魔術師アレイス~」となっているエピソードは、アレイス側から見たお話となります。
この作品は小説家になろう、カクヨムでも公開しています。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~
九頭七尾
ファンタジー
子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。
女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。
「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」
「その願い叶えて差し上げましょう!」
「えっ、いいの?」
転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。
「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」
思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる