【完結】腹ペコ貴族のスキルは「種」でした

シマセイ

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第48話『平穏の終わりと侵略の狼煙』

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白銀の森での死闘から、半年が過ぎた。
季節は巡り、アストライア王国の学院は、生命力あふれる夏の光に包まれていた。

十三歳になったアレンたちの日常は、穏やかで、希望に満ちていた。
『王立特別農園』の作物は、多くの人々を癒し、アレンの周りには、リナリア、ルミナ、グレイといった、かけがえのない仲間たちの笑顔があった。
ヴァイス公爵の失脚により、王国から一つの大きな闇が消え、誰もがこの平和が続くと信じていた。



だが、その平和は、水面下で静かに、しかし、確実に蝕まれていた。

王城の一室。
国王陛下と学院長、そしてグレイが、大陸地図を前に、重い表情で向かい合っていた。

「――報告は以上です。この一月で、東方諸国の国境沿いの村や砦が、正体不明の軍団に襲われ、壊滅する事件が、すでに七件発生しております」

グレイが、地図上の地点を指し示しながら報告する。

「生存者の証言によれば、襲撃者は、一様に、黒い鎧を纏い、人間離れした力を持つ、角の生えた兵士であった、と。……間違いなく、魔族です」

学院長が、厳しい声で続けた。

「大陸の東方、暗黒海流のその先にある『魔大陸』にて、魔王が代替わりし、新たなる魔王ゾルディアスの名の下、魔族が、我々の大陸への侵略を開始したと見て、間違いないでしょう」

長すぎた平和の時代の終わり。
新たな、そして、かつてないほどの大きな脅威が、大陸全体を覆い尽くそうとしていた。



数週間後。
エルフの国、『白銀の森』。
アレンの力で完全に復活した世界樹の麓で、大陸中の国々から、王や指導者たちが集結していた。
表向きは、世界の平和と友好を祈念する『世界樹の祭り』。
しかし、その実態は、頻発する魔族の襲撃に対し、大陸全体の結束を固め、対抗策を練るための、緊急首脳会議だった。

アレンは、その類まれなる作物の生産能力から、将来の食糧・医療支援のキーパーソンとして、アストライア王国代表団の特別顧問という、身の丈に合わない肩書で、この祭りに参加していた。

もちろん、彼自身はそんな難しい話はそっちのけで、自分の育てた作物を使ったフルーツジュースの屋台を出し、各国の代表たちに振る舞っては、「美味しい!」と絶賛され、満面の笑みを浮かべていた。

リナリアやルミナも、美しい民族衣装に身を包み、祭りの陽気な雰囲気を楽しんでいた。
誰もが、この一瞬だけは、迫りくる脅威を忘れ、笑顔を交わし合っていた。

その、平和の象徴のような光景が、一瞬にして、地獄へと変わる。

カン! カン! カン! カン!

突如として、森全体に、最高レベルの警戒を告げる、警鐘の音が鳴り響いた。

「敵襲!
敵襲ーッ!」

「東の国境が、突破されました!
魔族の大軍団が、この世界樹の麓に、まっすぐ向かってきます!」

エルフの衛兵たちの、悲鳴のような報告。
祭りの会場は、一瞬にして、パニックと混乱の渦に叩き込まれた。

そして、間も無く。
空を黒く染めるほどの数の、翼を持つ魔獣たちと共に、彼らは現れた。

漆黒の鎧を纏った、魔族の軍団。
その先頭に立つのは、巨大な戦斧を肩に担ぎ、その身から、凄まじい闘気を放つ、牛のような二本の角を持つ、大柄な魔族だった。

魔族の将軍は、眼下に広がる、混乱に陥った祭りの会場と、そこにいる各国の指導者たちを見下ろすと、心底楽しそうに、その口を歪ませた。

「脆弱なる人間、矮小なるエルフ、穴倉のドワーフどもよ!
我が名は、魔王ゾルディアス様が四天王が一人、剛力のバザックス!」

将軍バザックスは、その戦斧を天に掲げ、腹の底から、轟くような声で宣言した。

「貴様らの、ままごとのような平和は、今日で終わりだ!
我が魔王様の名において、この場にいる者、一人残らず、皆殺しにしてくれる!」

宣言と同時に、バザックスは、その戦斧を、祭りの会場の中心部に向かって、無慈悲に振り下ろした。
凄まじい衝撃波が、アレンたちの屋台を、そして、逃げ惑う人々を、吹き飛ばそうとする。

「させるか!」

グレイが、即座にアレンたちの前に立ち、その衝撃波を剣で切り裂く。
各国の騎士たちも、慌てて王たちを守り、迎撃態勢を取る。

平和な祭りの会場は、一瞬にして、血と炎の匂いが渦巻く、阿鼻叫喚の戦場と化した。

アレンは、目の前で起きた、あまりにも突然で、理不尽な暴力に、呆然としていた。
だが、リナリアや、祭りに来ていた子供たちが、恐怖に震えているのを見て、その小さな手に、ぐっと力がこもる。

(僕の……僕の作ったジュースを、みんな、美味しいって笑って飲んでくれたのに……!)

アレンの瞳から、いつもの呑気な光が消えた。
彼は、大地に手を突き、自分のスキルで、この理不尽な侵略者に応戦することを、決意した。
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