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第70話『心の声と共鳴りの花』
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アレンのスキルによって、『真実を映す睡蓮』が咲き、偽りの恩師の幻は、霧のように消え去った。
だが、森は、不気味なほどの静寂に包まれたままだ。
敵は、まだ、この森のどこかに潜んでいる。
「姿を見せろ、卑怯者!」
グレイが、鋭い声で、闇に向かって叫ぶ。
しかし、返事はない。
その代わり、一行の耳に、奇妙な現象が起こり始めた。
『アレン、あなたのその力、本当は、少し怖いの……』
それは、すぐ隣にいるはずの、リナリアの声だった。
だが、本物のリナリアは、一言も発していない。
「え……?」
アレンが、戸惑ってリナリアを見る。
『リンク君、君の力は、平和のためではなく、争いの火種にしかならんのかもしれんな……』
今度は、アストライア王国の、国王陛下の、威厳に満ちた声が、どこからともなく響いてくる。
『あの子は、リンク家の恥だ……』
『お前のせいで、我々の森が、めちゃくちゃだ……』
アレンの両親の声、ルミナの声、ゴードン先生の声。
次々と、大切な人たちの声が、アレンを、じわじわと、責め立てる。
幻惑のロキシーは、姿を現すことなく、アレンの心の奥底にある、ほんのわずかな「不安」や「罪悪感」を、的確に、そして、執拗に、刺激してきたのだ。
「ち、違う……」
アレンの心が、揺れる。
「そんなこと、ない……。
みんな、そんなこと、言うはずない……」
頭では分かっていても、大切な人たちからの(偽りの)非難の声は、彼の純粋な心を、やすりのように、少しずつ、削っていく。
敵は、アレンの、仲間を思う、その優しい心こそが、最大の弱点になり得ることを、完全に見抜いていた。
アレンが、混乱に、その顔を歪ませた、その時だった。
ぐっ、と。
本物のリナリアが、アレンの手を、その両手で、強く、強く、握りしめた。
「アレン、しっかりして!」
その、温かい、手のぬくもり。
そして、耳元で聞こえる、本物の、力強い声。
「それは、偽物よ!
私が、あなたの力を、怖いなんて、思うわけないじゃない!
あなたの力は、優しくて、温かくて、たくさんの人を笑顔にする、世界で一番、素敵な力よ!」
「そうです、アレン!」
ルミナも、風の魔法で、周囲の魔力の流れを探りながら、叫ぶ。
「惑わされないで!
あれは、ただの音の魔法!
あなたの心を、かき乱すための、卑劣な罠です!」
そして、グレイが、アレンの前に、まるで、揺るぎない岩のように、立ちはだかった。
「アレン、耳を貸すな。
お前の後ろには、儂らがいる。
偽物ではない、本物の、な」
仲間たちの、温かい声。
握りしめられた、手のぬくもり。
その、確かな「繋がり」が、アレンを、幻聴の、暗い呪縛から、力強く、引き戻した。
◇
「……そっか」
アレンは、我に返った。
そして、彼の心に、怒りではない、静かで、しかし、燃えるような、決意の炎が灯った。
(僕の、大切な、大好きな、みんなの声を、勝手に使わないで!)
敵が、音で、声で、自分の心を揺さぶってくるのなら。
こちらも、同じ方法で、反撃すればいい。
アレンは、スキルを発動させた。
イメージするのは、「偽物の音を打ち消し、真実の音だけを、世界中に、響かせる」植物。
彼の手の中に生まれたのは、まるで、教会の鐘を、そのまま小さくしたかのような、青く、透き通った、『共鳴りの花(エコー・ベル)』の種だった。
アレンは、その種を、そっと、足元の地面に置いた。
すると、そこから、小さな、青い鐘の形をした花が、一つ、また一つと、次々と、静かに咲き始めた。
そして。
ちりん……、ちりん……。
その、無数の花々が、一斉に、あまりにも澄み切った、美しい音色を、奏で始めた。
その清らかな音色は、ロキシーが生み出していた、偽りの幻聴の、禍々しい魔力を、まるで、聖なる光が、闇を払うかのように、打ち消し、かき消していく。
さらに、その音色は、この森の中に存在する、「本物の音」だけを、優しく、そして、正確に、増幅させ始めた。
仲間たちの、力強い心臓の鼓動の音。
葉が、風に擦れる音。
遠くで、虫が鳴く声。
そして――。
森の奥深く。
一本の、ひときわ大きな木の、その枝の上で。
息を殺し、アレンたちの様子を、驚愕の表情で窺っていた、ロキシー自身の。
わずかな、衣擦れの音と。
驚きと、焦りに、急激に、速くなった、心臓の鼓動の音までも。
アレンの生み出した『共鳴りの花』の音によって、幻惑の魔族、その完璧な隠れ場所が、完全に、特定されてしまったのだ。
グレイの鋭い目が、音が響いてくる、その一点を、正確に、捉えた。
「――そこか!」
木の枝の上。
隠れ場所を、完璧に暴かれたロキCーが、信じられない、という表情で、その姿を、闇の中から、現した。
アレンは、彼女に向かって、静かに、そして、少し、悲しそうに、言った。
「もう、やめて。
そんな、みんなを傷つけるような、悲しい音を出すのは」
心理戦は、決着した。
アレンが、再び、敵の術を、彼らしい、あまりにも平和的で、しかし、あまりにも、根本的な方法で、打ち破った。
追い詰められた、幻惑の魔族。
対峙する、アレンたち。
だが、森は、不気味なほどの静寂に包まれたままだ。
敵は、まだ、この森のどこかに潜んでいる。
「姿を見せろ、卑怯者!」
グレイが、鋭い声で、闇に向かって叫ぶ。
しかし、返事はない。
その代わり、一行の耳に、奇妙な現象が起こり始めた。
『アレン、あなたのその力、本当は、少し怖いの……』
それは、すぐ隣にいるはずの、リナリアの声だった。
だが、本物のリナリアは、一言も発していない。
「え……?」
アレンが、戸惑ってリナリアを見る。
『リンク君、君の力は、平和のためではなく、争いの火種にしかならんのかもしれんな……』
今度は、アストライア王国の、国王陛下の、威厳に満ちた声が、どこからともなく響いてくる。
『あの子は、リンク家の恥だ……』
『お前のせいで、我々の森が、めちゃくちゃだ……』
アレンの両親の声、ルミナの声、ゴードン先生の声。
次々と、大切な人たちの声が、アレンを、じわじわと、責め立てる。
幻惑のロキシーは、姿を現すことなく、アレンの心の奥底にある、ほんのわずかな「不安」や「罪悪感」を、的確に、そして、執拗に、刺激してきたのだ。
「ち、違う……」
アレンの心が、揺れる。
「そんなこと、ない……。
みんな、そんなこと、言うはずない……」
頭では分かっていても、大切な人たちからの(偽りの)非難の声は、彼の純粋な心を、やすりのように、少しずつ、削っていく。
敵は、アレンの、仲間を思う、その優しい心こそが、最大の弱点になり得ることを、完全に見抜いていた。
アレンが、混乱に、その顔を歪ませた、その時だった。
ぐっ、と。
本物のリナリアが、アレンの手を、その両手で、強く、強く、握りしめた。
「アレン、しっかりして!」
その、温かい、手のぬくもり。
そして、耳元で聞こえる、本物の、力強い声。
「それは、偽物よ!
私が、あなたの力を、怖いなんて、思うわけないじゃない!
あなたの力は、優しくて、温かくて、たくさんの人を笑顔にする、世界で一番、素敵な力よ!」
「そうです、アレン!」
ルミナも、風の魔法で、周囲の魔力の流れを探りながら、叫ぶ。
「惑わされないで!
あれは、ただの音の魔法!
あなたの心を、かき乱すための、卑劣な罠です!」
そして、グレイが、アレンの前に、まるで、揺るぎない岩のように、立ちはだかった。
「アレン、耳を貸すな。
お前の後ろには、儂らがいる。
偽物ではない、本物の、な」
仲間たちの、温かい声。
握りしめられた、手のぬくもり。
その、確かな「繋がり」が、アレンを、幻聴の、暗い呪縛から、力強く、引き戻した。
◇
「……そっか」
アレンは、我に返った。
そして、彼の心に、怒りではない、静かで、しかし、燃えるような、決意の炎が灯った。
(僕の、大切な、大好きな、みんなの声を、勝手に使わないで!)
敵が、音で、声で、自分の心を揺さぶってくるのなら。
こちらも、同じ方法で、反撃すればいい。
アレンは、スキルを発動させた。
イメージするのは、「偽物の音を打ち消し、真実の音だけを、世界中に、響かせる」植物。
彼の手の中に生まれたのは、まるで、教会の鐘を、そのまま小さくしたかのような、青く、透き通った、『共鳴りの花(エコー・ベル)』の種だった。
アレンは、その種を、そっと、足元の地面に置いた。
すると、そこから、小さな、青い鐘の形をした花が、一つ、また一つと、次々と、静かに咲き始めた。
そして。
ちりん……、ちりん……。
その、無数の花々が、一斉に、あまりにも澄み切った、美しい音色を、奏で始めた。
その清らかな音色は、ロキシーが生み出していた、偽りの幻聴の、禍々しい魔力を、まるで、聖なる光が、闇を払うかのように、打ち消し、かき消していく。
さらに、その音色は、この森の中に存在する、「本物の音」だけを、優しく、そして、正確に、増幅させ始めた。
仲間たちの、力強い心臓の鼓動の音。
葉が、風に擦れる音。
遠くで、虫が鳴く声。
そして――。
森の奥深く。
一本の、ひときわ大きな木の、その枝の上で。
息を殺し、アレンたちの様子を、驚愕の表情で窺っていた、ロキシー自身の。
わずかな、衣擦れの音と。
驚きと、焦りに、急激に、速くなった、心臓の鼓動の音までも。
アレンの生み出した『共鳴りの花』の音によって、幻惑の魔族、その完璧な隠れ場所が、完全に、特定されてしまったのだ。
グレイの鋭い目が、音が響いてくる、その一点を、正確に、捉えた。
「――そこか!」
木の枝の上。
隠れ場所を、完璧に暴かれたロキCーが、信じられない、という表情で、その姿を、闇の中から、現した。
アレンは、彼女に向かって、静かに、そして、少し、悲しそうに、言った。
「もう、やめて。
そんな、みんなを傷つけるような、悲しい音を出すのは」
心理戦は、決着した。
アレンが、再び、敵の術を、彼らしい、あまりにも平和的で、しかし、あまりにも、根本的な方法で、打ち破った。
追い詰められた、幻惑の魔族。
対峙する、アレンたち。
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