落ちこぼれギフト【ダメージ反射】は諦めない ~1割返しから始まる異世界冒険譚~

シマセイ

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第80話 敗北の価値、新たなる旅路へ

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王都武闘大会の熱狂が、徐々に日常の喧騒へと戻っていく中、アルトは下宿屋のベッドで数日間の深い休息をとっていた。

「閃光」のシルヴィとの激戦で負った傷はリナがくれた軟膏で癒えつつあったが、体力の消耗は想像以上だった。
しかし、心の中には、敗北の悔しさ以上に、確かな手応えと未来への希望が満ちていた。

アルトが休息している間にも、彼の名は王都の冒険者たちの間で急速に広まっていた。
大会そのものは、大方の予想通り、Bランクの「閃光」シルヴィが、決勝戦でも相手を寄せ付けない圧倒的な強さを見せつけ、見事に優勝を飾った。

しかし、それと同時に、多くの冒険者たちの間で語られていたのは、準々決勝(あるいは準決勝)で見せた、無名のDランク冒険者アルトの驚くべき健闘ぶりだった。

「おい、聞いたか?大会でシルヴィをあと一歩まで追い詰めたっていうDランクの小僧のこと」

「ああ、アルトとか言ったか。決勝戦もすごかったが、正直、あのシルヴィとの試合の方が手に汗握ったぜ」

「反射のギフトを使うらしいな。あんな戦い方、初めて見たぞ」

「ただの反射使いじゃねえ。あの立ち回りと根性…将来有望だな」

ギルドを訪れると、その注目度は明らかだった。
以前は遠巻きに見ていただけの冒険者たちが、気さくに声をかけてきたり、情報交換を求めてきたりする。

ギルドマスターも、「よくやった、アルト君。敗れはしたが、君の価値はギルド中に、いや、この王都中に知れ渡ったと言っても過言ではないぞ。優勝したシルヴィ嬢も、君のことを高く評価していたそうだ。今後の活躍、大いに期待している」と、温かい言葉をかけてくれた。

談話室の隅で、クラウスとマルコは、アルトの姿を見るとバツが悪そうに目を逸らすだけだった。

休息しながら、アルトは大会での戦いを冷静に、そして徹底的に振り返っていた。
特にシルヴィ戦。
あの圧倒的なスピードにどう対抗するか。
手数で押し切られる前に、どうやって決定打を与えるか。
スタミナ不足も明らかだった。
持久戦に持ち込めたのは良かったが、最後の最後で息切れしてしまった。

そして、ギフト【ダメージ反射】。
物理攻撃には絶大だが、魔法や高速連撃には限界があること。
「衝撃波(仮)」の応用は有効だったが、威力も範囲もまだ足りない。
そして何より、あの麻痺効果…。なぜホブゴブリン戦では発動し、シルヴィ戦では発動しなかったのか…?
課題は山積みだ。

体力が完全に回復したアルトは、まずエリアーヌの研究室を訪れた。
「アルトさん!お待ちしておりましたわ!大会、拝見しました!特にシルヴィさんとの一戦!素晴らしいデータが山ほど…!」
エリアーヌは興奮気味に大量のメモを見せてくる。

二人は、大会でのギフトの反応について詳しく分析した。
やはり、麻痺効果の発動条件は不明瞭なままだったが、エリアーヌは新たな仮説を立てた。

「もしかすると、アルトさん自身の生命力が極限まで低下した状態、いわゆる『瀕死状態』に近い状況がトリガーの一つになっているのかもしれませんわ。あるいは、相手から放たれる『殺意』の強さのような、精神的な要素も…?非常に危険な仮説ですが、検証してみる価値はあるかもしれません」

さらにエリアーヌは、「ギフトの謎を解く鍵は、古代の遺物や、特殊な力を持つ魔物の素材にあるかもしれませんわ。もしよろしければ、今後、そういったものの調査や採取に関する依頼があれば、わたくしに協力していただけませんか?」と、新たな提案を持ち掛けてきた。
アルトは、その提案に興味を惹かれた。

大会を経て、アルトは今後の活動方針を固めた。

第一に、Dランク冒険者として、着実に依頼をこなし、経験と資金を蓄えること。目標はCランクへの早期昇格だ。

第二に、剣術と盾術の訓練を継続し、特にスタミナ強化と高速戦闘への対応力を高めること。

第三に、エリアーヌと協力しながら、ギフトの謎、特に麻痺効果の解明を目指すこと。

第四に、装備のさらなる強化。攻撃力不足を補うためのサブウェポン(投擲ナイフなど)や、あるいは魔法的な効果を持つアイテムの導入も検討したい。

休息と準備の期間を終え、アルトは新たな気持ちでギルドの依頼掲示板の前に立った。
彼のランクはD。
しかし、その名は既に、王都の多くの冒険者に知られている。
彼が次に選ぶ依頼は、単なる仕事ではなく、彼のさらなる成長への試金石となるだろう。

掲示板には、様々なDランク依頼が並んでいた。
「鉱山都市ドゥリンホルムへの護衛任務」「沼地に潜むリザードマン・シャーマンの討伐」「王都近郊で発見された古代遺跡の入り口付近の調査」…。
アルトは、それらの依頼内容を注意深く吟味し、自分の目標と照らし合わせながら、次なる挑戦を選び始めた。
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