落ちこぼれギフト【ダメージ反射】は諦めない ~1割返しから始まる異世界冒険譚~

シマセイ

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第81話 新たな仲間、未知なる遺跡へ

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Dランク冒険者となり、王都アステリアでの活動基盤も固まりつつあったアルト。
彼の視線は、すでに次なる目標Cランクへの昇格、そして自身のギフト【ダメージ反射】のさらなる探求へと向けられていた。
そんな折、ギルドの依頼掲示板で、彼の冒険心を強くくすぐる依頼が目に留まった。

『王都近郊・古代遺跡の入り口付近調査:最近発見された古代遺跡の初期調査。入り口付近の安全確保、及び内部へ続く可能性のある経路の調査。危険度不明、罠・魔物の可能性あり。報酬 銀貨2枚~(成果により変動)。ランクE以下単独不可、Dランク以上推奨』

未知の古代遺跡。
そこに潜むかもしれない謎と危険。
それは、これまでの討伐や採取とは違う、純粋な「冒険」の匂いを漂わせていた。
アルトは、この依頼に挑戦することを即座に決意した。

しかし、カウンターで依頼書を提出すると、ギルドマスターは少し難しい顔をして言った。

「ほう、あの遺跡調査か。興味を持つのは結構だが、あそこは文字通り何が潜んでいるか、全く分からん場所だぞ。ギルドとしてもまだ本格的な調査隊を送れていない。入り口付近とはいえ、古代の罠や、遺跡の守護者、あるいは予期せぬ魔物がいる可能性も十分にある。単独で向かうのは、あまりにも無謀だと言わざるを得んな」

マスターは、アルトの実力を認めつつも、その危険性を強調する。

「この依頼は、最低でも3人以上のパーティで臨むことを強く推奨する。斥候として先行し、罠を発見・解除できる者。前衛として、いざという時に壁となり、敵を食い止められる者。そしてできれば、遺跡の構造や、もし何か文字でも見つかった場合に、それを解読できるような知識を持つ者がいれば心強いのだが……」

まさにアルトがメンバーを探そうかと考えていた、その時だった。
ギルドマスターが、「ああ、そうだ。ちょうどいい奴らがいるかもしれん」と、ギルドの隅でそれぞれの時間を過ごしていた、対照的な二人組を手招きした。

一人は、小柄で華奢な体つきの少女だった。
顔の半分ほどが隠れるくらい、黒いフード付きのローブを目深にかぶっており、その表情はほとんど読み取れない。
腰には、大小様々な形状のナイフや、針金のような細い金属棒、小さな革袋などが、じゃらじゃらと無数にぶら下がっている。
どこか影のある、ミステリアスな雰囲気を漂わせていた。

もう一人は、アルトよりも背は低いものの、岩のようにがっしりとした体躯を持つドワーフの戦士だった。
使い込まれた重厚な金属鎧を身にまとい、背中には巨大な両手持ちの戦斧を背負っている。
顔には、戦いの激しさを物語るような深い傷跡が刻まれているが、その短い髭の下の口元は頑固そうに結ばれ、瞳には知的な光が宿っていた。

「紹介しよう。こっちはノエル。見ての通り、小柄だが、斥候としての腕は確かだ。特に、罠の発見と解除にかけては、このギルドでも指折りと言っていい。……ただし、少々…いや、かなり罠そのものが好きすぎるという、困った癖があるがな」

マスターが紹介すると、ノエルと呼ばれた少女は、アルトに向かって無表情のまま、こくりと小さく頷いただけだった。
その反応のなさが、逆に彼女の異質さを際立たせている。

「そして、こっちのドワーフはゴルドーだ。見ての通り、頼れる重戦士だが、元々は学者を志していた変わり種でな。古代文字の解読や、歴史に関する知識は、そこらの半端な学者より詳しかったりする。口は相当悪いし、頑固だが、知識とパワーは本物だ」

ゴルドーと呼ばれたドワーフは、「ふん、マスターも余計な紹介をしおって」と、太い眉をピクリと動かしながらも、アルトを一瞥した。
その視線は、値踏みするような鋭さを持っている。

「ノエル、ゴルドー。このアルト君が、例の古代遺跡調査の依頼を受けたいそうだ。どうだね?君たちも、それぞれ遺跡には興味があるだろう?今回は、試しにこの若者と組んでみてはどうかね?斥候、前衛、そしてアルト君の特殊な防御能力。役割分担としては、なかなか悪くない組み合わせだと思うのだが」

マスターの提案に、まず反応したのはノエルだった。
彼女は、アルトの顔と、依頼書に書かれた「古代遺跡」の文字を、無表情のまま交互に見比べると、小さな声で、しかしはっきりと呟いた。

「……遺跡。…罠、あるかも……。……行く」

どうやら、「罠」というキーワードが、彼女の心を強く動かしたらしい。

次に、ゴルドーが、アルトの持つ黒曜の剣と、新調したばかりのバックラー、そして使い込まれた革鎧を、じろりと鑑定するような目で見つめた。

「ほう、お前さんが、あのオーガやホブゴブリンを倒したっていう、噂のルーキーか。まあ、その装備を見る限り、ただの運だけではなさそうだな」

ゴルドーは、腕を組み、ふむ、と一度唸った。

「よかろう。わしも、その新発見の遺跡とやらは気になっていたところだ。お前さんが足手まといにならんというのなら、組んでやってもいいぜ。ただし、わしの指示にはちゃんと従ってもらうぞ、若造」

その口調は相変わらず上から目線だが、彼の目には確かな好奇心と、アルトの実力を試そうというような光が宿っていた。

こうして、アルトにとって初めてとなる、本格的な冒険者パーティが、その場でやや唐突に、しかし期待感を伴って結成されることになった。
前衛・防御担当のアルト。
斥候・罠解除担当のノエル。
前衛・パワー・知識担当のゴルドー。
役割分担としては、確かにバランスが取れているように思えた。

3人は、ギルドのテーブルの一つに集まり、早速、依頼に向けての作戦会議を始めた。
アルトは、これまでの戦闘経験とギフトについて説明し、前衛としての役割を再確認した。
ノエルは、ほとんど言葉を発しないながらも、地図を指さし、罠がありそうな箇所や、安全なルートについて、的確な指摘をする。
ゴルドーは、古代遺跡に関する自身の知識を披露しつつ、力仕事や、いざという時の突破役を担うことを約束した。

初めてのパーティ活動。
アルトは、少しの緊張と、それ以上の大きな期待を感じていた。
無口で罠に異常な執着を見せるノエル。
ぶっきらぼうだが博識で頼りになりそうなゴルドー。
個性的な仲間たちとの冒険は、きっとこれまでとは全く違う、新しい経験をもたらしてくれるだろう。

3人はそれぞれ、遺跡探索に必要な装備――ロープ、多めの松明、食料、薬、ノエルの多種多様な罠解除ツール、ゴルドーの鑑定用ルーペやハンマーなど――を念入りに準備し、翌日の早朝に出発することを約束した。

そして翌朝。
約束の時間にギルド前で合流した3人は、王都の門をくぐり、王都近郊の東部山麓にあるという、古代遺跡へと向かった。
道中、ゴルドーが延々と古代ドワーフ文明の栄光について語り始めたり、ノエルが道端で見つけた鳥の巣の構造に異常な興味を示して立ち止まってしまったりと、早くも個性がぶつかり合う場面もあったが、アルトはそのどこかちぐはぐなやり取りを、不思議と微笑ましく感じていた。

森の奥深く、木々が密集し、ほとんど人の踏み入った形跡のない場所。
ついに彼らは、目的の場所にたどり着いた。
苔むし、太い蔦に覆われた、巨大な石造りの建造物の一部が、森の緑の中に埋もれるようにして存在していた。

おそらく、かつては壮麗な神殿か、あるいは何らかの重要な施設だったのだろう。
巨大な石の扉は、その半分が崩れ落ち、暗く、冷たい内部へと続く通路が、まるで獣の口のようにぽっかりと開いている。
周囲には、人の気配も、動物の気配すらもほとんど感じられず、不気味なほどの静寂が漂っていた。

未知なる古代遺跡。
個性的な仲間、ノエルとゴルドー。
アルトにとって、初めての本格的なパーティでの冒険が、今まさに始まろうとしていた。
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