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第108話 再会と新たな波紋
しおりを挟む王都アステリアでの新たな生活。
Cランク冒険者としての活動にも慣れ、アルトは充実した日々を送っていた。
ギルドでの依頼、エリアーヌとのギフト研究、そして自身の鍛錬。
着実に力をつけ、経験を積む中で、彼はこの大都市で生きていくことへの確かな手応えを感じ始めていた。
そんなある日、アルトの元に、故郷アッシュフォード村のリナから久しぶりの手紙が届いた。
そこには、アルトの活躍を喜ぶ温かい言葉と共に、彼女自身の成長と、王都行きを示唆する言葉が綴られていた。
アルトは、リナとの再会への期待に胸を膨らませた。
そして、その期待は、予想よりもずっと早く、そして突然に現実のものとなった。
ギルドからの帰り道、活気あふれる中央市場の喧騒の中。
アルトは、人混みの向こうに、見間違えるはずのない、愛しい幼馴染の姿を見つけたのだ。
「リナっ!?」
思わず上げた声に、リナが驚いて振り返る。
「アルト!? うそ、本当にアルトなの!?」
二人は互いに駆け寄り、言葉にならない喜びで、しばし見つめ合った。
アッシュフォード村にいた頃よりも少しだけ大人びて、しかし変わらない優しい笑顔。
リナは、アルトの噂を聞き、そして自身の治癒師としての成長にも自信を得て、約束よりも早く、一人でこの王都までやってきたのだという。
その勇気と行動力に、アルトは心からの称賛を送った。
「すごいよ、リナ!一人でここまで来るなんて!本当にすごい!」
「もう、アルトこそ!Cランクになったり、すごく強い魔物を倒したり…村でも噂になってたんだよ!心配もしたけど…でも、すごいなって!」
リナは、アルトの胸で輝くCランクのプレートや、腰の黒曜の剣、腕のバックラーを見て、彼の確かな成長を目で追っているようだった。
彼女自身も、王都にある大神殿付属の医療院で、見習い治癒師として働くことが決まったばかりだと嬉しそうに話した。
これからは、この広い王都で、また二人で支え合っていける。
その事実が、アルトの心を温かく満たした。
リナとの再会は、アルトに新たな活力を与えた。
そして、彼は自分の現在の力を、改めて正確に知りたいという想いを強くした。
特に、あの極限状況で発現した麻痺効果のような力。
あれがギフトの成長によるものなら、今の反射率はどうなっているのだろうか?
エリアーヌにそのことを相談すると、彼女は「素晴らしいタイミングですわ!ちょうど、あなたのギフトエネルギーのパターン変化を再測定したいと思っていたところですの!」と、いつものように目を輝かせたが、「でも、正確な『反射率』となると、やはり大神殿の『神託の水晶』が一番ですわね」と付け加えた。
アルトは、リナにも事情を話し、彼女もぜひ一緒に行きたいと言うので、二人で王都の大神殿を訪れることにした。
荘厳な大神殿。
二度目の訪問となるアルトは、高位の神官に案内され、再びあの祈りの間へと通された。
リナは、神聖な場所に少し緊張しながらも、アルトの傍らで、祈るようにその様子を見守っている。
アルトは神託の水晶に両手を触れ、意識を集中させた。
水晶が、前回よりもさらに強く、清らかな光を放ち始める。
その光がアルトを包み込み、彼の脳裏に、更新されたギフトの情報が流れ込んできた。
『ギフト:ダメージ反射』
『現在の反射率:4割』
『特殊効果:リフレクト・ショック(仮称)。極度の精神集中及び強い守護意志をトリガーとし、反射ダメージと同時に精神・神経系に干渉する衝撃波を放出、対象の行動を一時的に阻害する(麻痺・鈍化)。発動条件・効果は未解明な点が多く、現状での任意制御は極めて困難』
(4割!上がってる!それに、特殊効果にも名前が…リフレクト・ショック!)
アルトは内心で歓喜した。
反射率が3割から4割へと、確かに成長している。
そして、あの麻痺効果も「リフレクト・ショック」という名前(?)と共に、ギフトの正式な(しかし未解明な)特殊効果として示唆されたのだ。
これまでの死線での経験が、確実に自分の力となっている。
その実感は、アルトに大きな自信を与えた。
神官も、その結果に静かに頷き、「…目覚ましい成長ですな、アルト殿。その力を、これからも正しきことのために」と、期待のこもった言葉をかけた。
大神殿を後にし、アルトは興奮冷めやらぬ様子で、待っていたリナに結果を報告した。
「すごいよ、アルト!4割なんて!それに、特別な力も…!本当によく頑張ったんだね!」
リナは、自分のことのように目を輝かせて喜んだ。
「この結果を、エリアーヌさんにも報告しないと!」
アルトは、ギフト研究の進展への期待も込めて言った。
「エリアーヌさん?……ああ、アルトが手紙で言ってた、ギフトの研究をしてるっていう人?」
リナの表情が、ほんの少しだけ曇ったのを、アルトは気づかなかった。
アルトはリナを連れて、エリアーヌの研究室を訪れた。
ドアを開けると、相変わらず部屋は雑然としていたが、エリアーヌ本人は、何かの分析に没頭していたようだった。
「エリアーヌさん、アルトです。大神殿でギフトレベルを確認してきました!」
「まあ、アルトさん!お待ちしておりましたわ!それで、結果は!?」
エリアーヌは、分析の手を止め、期待に満ちた目でアルトに詰め寄る。
アルトが、反射率が4割になったこと、そして特殊効果が「リフレクト・ショック」として示唆されたことを報告すると、エリアーヌは狂喜した。
「4割!そしてリフレクト・ショック!素晴らしい!やはり覚醒は本物でしたのね!このエネルギーパターンと精神干渉…古文書にあった『魂縛』との関連性も…ああ、研究テーマが尽きませんわ!」
エリアーヌは、アルトの手を取り、熱心にギフトのメカニズムについて語り始める。
その様子を、アルトの隣で見ていたリナの表情は、少し複雑だった。
知的な雰囲気の美しい女性研究者。
自分には全く分からない専門的な話で、アルトと親しげに(リナにはそう見えた)語り合っている。
アルトが、自分の知らない世界で、知らない人と、強い繋がりを持っている。
その事実に、リナはほんの少しだけ、胸がチクリとするような、寂しさと、そして軽い嫉妬心を覚えていた。
「あ、あの…」
リナが、意を決したように口を開いた。
「アルトのギフトは、昔からすごい力でしたけど…でも、すごく危なっかしいんです。エリアーヌさんも、あまり無茶な実験とかは…」
アルトの幼馴染として、そして彼の身を案じる者として、そう言わずにはいられなかった。
その言葉に、エリアーヌはようやくリナの存在を改めて認識したように、くるりと振り返った。
「あらあら、これは失礼いたしましたわ、リナさん。アルトさんのギフトに夢中になってしまって。初めまして、エリアーヌと申します。…ふむ、あなたも治癒師で、ギフトをお持ちとか?興味深いですわね。もしかしたら、あなたの癒しの力と、アルトさんの反射の力の間にも、何か関連性があるかもしれませんわ!ぜひ、今度、あなたのギフトについても、少し調べさせていただけませんか?」
エリアーヌは、悪気なく、純粋な研究者としての好奇心で、今度はリナに詰め寄り始めた。
「え、ええっ!?」
突然の申し出に、リナは戸惑いの表情を浮かべる。
アルトは、二人の女性の間で起こっている、微妙な空気の変化にようやく気づき、少しだけ困ったように頭を掻いた。
リナとの再会、そしてギフトレベルの確かな成長。
アルトの王都での冒険は、新たな仲間と、新たな力、そして少しだけ複雑になった(かもしれない)人間関係と共に、次の段階へと進もうとしていた。
アルトは、隣で戸惑うリナと、目を輝かせるエリアーヌを見ながら、自分の進むべき道を、改めて見据えるのだった。
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