【完結】魔王奮闘記

シマセイ

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初戦闘と混沌の戦場

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国境付近の村「ブラックホロウ」に到着したリオン一行は、目の前の光景に言葉を失った。
村はすでに炎に包まれ、家々が崩れ落ちていた。人間の騎士団が魔族の住民を鎖で縛り、馬車に詰め込んでいる。
騎士団のリーダーらしき男が、銀の鎧を輝かせて叫んだ。

「魔族どもめ、貴様らの時代は終わった！この地は我々がいただく！」

リオンは燃える村を見て目を潤ませた。
「ひどい……！なんでこんなことするの！？」

ガルドが剣を抜き、地面に唾を吐いた。
「人間どものやり口だ。小僧、泣いてる暇があったら戦え！」

ミリアがリオンの肩に手を置き、優しく言った。
「私が援護しますから、リオン様も頑張ってくださいね。」

リオンは涙を拭い、震える手で前に出た。
「うん……僕、みんなを守るよ！」

戦闘が始まった。
ガルドが雄叫びを上げて騎士団に突進し、巨大な剣を振り回して数人を吹き飛ばした。
ミリアは杖を振って炎の矢を放ち、騎士たちの馬を混乱させた。
ゼドラは後方から雷撃を放ち、敵の陣形を崩した。

だが、リオンは戦場で立ち尽くしていた。剣も持たず、魔法も満足に使えない少年に何ができるのか。
騎士の一人がリオンに気づき、剣を振り上げて突進してきた。

「魔王だと！？ガキじゃないか！」
騎士が剣を振り下ろす瞬間、リオンは咄嗟に叫んだ。
「やめてー！」

その声と同時に、リオンの周囲から黒い魔力が爆発的に広がった。
地面が割れ、騎士は衝撃波に吹き飛ばされて木に激突した。
周囲の騎士たちもバランスを崩し、混乱に陥る。

ガルドが振り返って叫んだ。
「む！？またあの魔力か！」

ミリアが目を輝かせて笑った。
「すごい！リオン様、これがあなたの力ですよ！」

リオンは目をパチパチさせて、自分の手を見た。
「え？僕、また何かやっちゃった？」

その隙に、騎士団のリーダーが馬に乗って突進してきた。
「貴様が魔王か！死ね！」

リオンは慌てて逃げようとしたが、足がもつれて転んだ。
剣が迫る瞬間、ミリアが杖を振り、炎の壁でリオンを守った。
ガルドがリーダーに飛びかかり、剣を叩きつけて馬から引きずり下ろした。

「小僧を狙うな！俺が相手だ！」
ガルドとリーダーの一騎打ちが始まり、剣と剣が火花を散らした。
リオンはミリアに支えられて立ち上がり、震えながらも叫んだ。
「僕だって……僕だって戦うよ！」

ミリアが微笑み、リオンの手を握った。
「じゃあ、一緒に魔法を撃ちましょう。イメージしてください、大きな火を！」

リオンは目を閉じ、ミリアと一緒に手を前に出した。
「火、火、火……燃えろー！」

今度は制御された魔力が放たれ、巨大な火球が騎士団の中心に炸裂した。
爆風で騎士たちが吹き飛び、馬車が炎に包まれた。リーダーがガルドに押されながら叫んだ。
「撤退だ！撤退しろ！」

人間の騎士団は慌てて逃げ出し、村は一時的に解放された。
リオンは息を切らしながら地面に座り込んだ。
「はあ、はあ……僕、勝ったの？」

ガルドが剣を地面に突き刺し、リオンを睨んだ。
「勝ったのは俺たちだ、小僧。お前はまだまだだな。」

ミリアがクスクスと笑い、リオンの頭を撫でた。
「でも、リオン様の魔力のおかげで助かりましたよ。少しずつ魔王らしくなってきましたね。」

ゼドラが静かに近づき、頷いた。
「うむ。だが、これは序章に過ぎん。人間どもは必ず報復に来る。リオン様、次の戦いに備えねばならんぞ。」

リオンは疲れ果てた顔で笑った。
「うん……僕、もっと頑張るよ。みんなを守りたいから！」

燃え尽きた村を見ながら、リオンは魔王としての覚悟を少しずつ固め始めた。

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