【完結】ホラー短編集「隣の怪異」

シマセイ

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無人島

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いやー、マジで勘弁してほしい体験しちゃったんだよ、この前…。
まだ、なんかこう、思い出しても背中がゾワゾワするっていうか。

俺、友達のヒロと二人でさ、先週、ちょっとした冒険気分で、
レンタルボート借りて、近場の海に釣りに出たんだ。
で、その時、地図にも載ってないような、小さな、緑に覆われた島を見つけてさ。
「なあ、あれ、無人島じゃね? ちょっと上陸してみようぜ!」って、ヒロが言い出して。
俺も、なんか面白そうだな、って、軽いノリで賛成しちゃったんだよな…。それが、間違いだった。

島に近づくと、砂浜はなくて、ゴツゴツした岩場ばっかり。
なんとかボートを岩場に寄せて、ロープで固定して、上陸した。
木々が、もう、手付かずって感じで、鬱蒼と茂ってる。
昼間なのに、島の中は薄暗くて、シーンとしてる。鳥の声もしない。風の音だけ。
なんか、最初から、嫌な感じはしてたんだよ。

「おい、こっち来てみろよ!」
ヒロの声に、ついていくと、少し開けた場所に、古びた、今にも崩れそうな小屋があった。
いや、小屋っていうか、木材とか、青いビニールシートとかで、無理やり作ったみたいな、粗末なシェルター?
中を覗くと、誰もいない。ただ、床に、何か黒い炭みたいなもので、ぐちゃぐちゃっと、
奇妙な模様っていうか、記号みたいなのが、いくつも描かれてた。気味が悪い。

さらに奥へ進むと、森の中に、不自然に開けた場所があったんだ。
そこには、黒くてゴツゴツした石が、円形に並べられてて。
で、その周りの木々の枝という枝に、色褪せた布切れとか、木の札みたいなのが、
いっぱい、いっぱい、ぶら下がってた。
風が吹くと、それが、カサカサ、ヒラヒラって、一斉に揺れるんだけど、
その音が、まるで、たくさんの人が、ヒソヒソ囁いてるみたいで…。

「なあ、ここ、ヤバくないか…?」ヒロも、さすがに顔がこわばってた。
俺も、もう、早く島から出たいって気持ちでいっぱいだった。
その時だよ。

——— ウゥ………ン………。

って、低い、唸るような音が、森の奥から、聞こえてきたんだ。
地鳴り? いや、違う。もっと、こう、生き物の声みたいな…でも、何の生き物かは全然わからない。
しかも、一つじゃない。いくつも、重なり合ってる感じ。

俺とヒロは、もう顔を見合わせて、無言で頷きあって、
一目散に、ボートを停めた岩場に戻ろうとした。

その帰り道。
大きな、ねじれた木の根元に、何か、白っぽいものが落ちてるのに気づいたんだ。
なんだろう?って、ヒロが、落ちてた木の枝で、それをツンツンって突いた。

それは、古びた、木彫りの人形だった。
子供の手くらいの大きさで、雑な作りなんだけど、人の形はしてる。
でも、その顔が、ヤバかった。
目は、ただ穿たれたような穴で、口は、大きく、歪に裂けてて、まるで、苦悶の表情で叫んでるみたいなんだ。

ヒロが、その人形を枝で持ち上げようとした、まさにその瞬間。

——— バキッ!!!!

森の奥で、太い木の枝が、へし折れるような、ものすごい音が響いたんだ!
と同時に、今まで聞こえてた、あの低い唸り声も、囁き声も、風の音さえも、
——— ピタッ!
と、完全に消えた。

シーン………。

森全体が、息を潜めたみたいに、静まり返った。
そして、俺とヒロは、同時に感じたんだ。
茂みの奥から、無数の、冷たい、悪意に満ちた「視線」が、俺たちに突き刺さってるのを。
見えないけど、確かに、「何か」が、俺たちを、じっと見てる。

「…逃げるぞ!!」
どっちが言ったか、もう覚えてない。
俺たちは、人形も何もかも放り出して、岩場まで、文字通り、転がるように逃げた。
ボートに飛び乗って、必死でエンジンかけて、全速力で、その島から離れた。

島が、だんだん小さくなっていく。
でも、ずっと、あの、見えない視線を感じてた。
島全体が、一つの大きな「目」になって、俺たちを見送ってるような、そんな錯覚さえした。

無人島って、本当に、誰もいないとは限らないんだな…。
俺たち、何かの領域に、踏み込んじまったんだろうか。
あそこの石のサークルとか、木の札とか、あの人形とか…。
あれは、一体、何のためのものだったんだろう。

あの人形の、叫ぶような顔。
今でも、夢に見るんだよ…。
思い出すだけで、ぞっとする…。
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