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第八十五話:聖山の攻防、最初の石碑
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私とフレイヤさんは、夜の闇に紛れて、眠れる聖山の、本格的な潜入を開始した。
手に入れた、敵の地図。
それは、私たちの、唯一の生命線であり、道しるべだった。
フレイヤさんは、その卓越した狩人としての技術で、敵の警戒網を、巧みに、すり抜けていく。
彼女は、風の音、獣の気配、そして、遠くの焚火の匂いから、敵の斥候(せっこう)が潜む場所を、正確に読み取っていた。
そして、私の役割は……。
「……ミキ、どうだ?
こっちの方角で、間違いないか?」
フレイヤさんが、低い声で、私に尋ねる。
私は、目を閉じ、胸の奥の『聖光(せいこう)の聖力』に、意識を集中させた。
すると、地図に記された、いくつかの、奇妙な印の一つが、私の頭の中で、微かな、しかし、確かな光を放ち、方向を、示してくれるのだ。
まるで、私の力が、この山の、古(いにしえ)の力と、共鳴しているかのように。
「……はい。
こっちです。
この、岩場の向こうに、何か、強い気配を感じます」
「よし。
行くぞ」
私たちの間には、もう、多くの言葉は必要なかった。
彼女の、荒野の知恵と、私の、特別な力。
二つが合わさることで、私たちは、まるで、一人の人間のように、この、敵地に満ちた聖山を、進んでいく。
数時間後、私たちは、地図に示された、最初の目的地へと辿り着いた。
そこは、月明かりに照らされた、小さな広場。
そして、その中央には、円を描くようにして、数本の、苔(こけ)むした、巨大な石柱(メンヒル)が、静かに、佇(たたず)んでいた。
あの、私が、森の奥深くで出会った石碑と、同じ、古の気配。
しかし、その聖なる場所は、すでに、土足で踏み荒らされていた。
二人の、黒い外套(マント)の男が、石柱の周りをうろつき、何か、調査をしているようだった。
『蒐集家(コレクター)』の、見張りだ。
「……どうする?」
フレイヤさんが、弓に矢を番(つが)えながら、尋ねる。
「……音を立てずに、やります」
私は、短剣を抜き放ち、答えた。
もう、私の心に、躊躇(ためら)いはない。
フレイヤさんが、息を吸う。
そして、吐く息と共に、矢が、音もなく、放たれた。
ヒュッ、という、わずかな風切り音。
見張り役の一人が、喉に矢を受け、声もなく、その場に崩れ落ちた。
「なっ!?」
もう一人の男が、驚き、こちらを向く。
でも、彼の意識は、フレイヤさんのいる、茂みの方へと向いていた。
その隙を、私は逃さない。
幻惑魔法で、自分の足音と気配を、完全に消し、一気に、その男の背後へと回り込む!
そして、訓練通りに、聖なる光を纏わせた刃を、その、黒い外套ごと、心臓めがけて、突き刺した!
「……がっ……!」
男は、短い呻き声を一つ残し、前のめりに倒れる。
……静かすぎるほどの、勝利。
私たちが、初めて、本当の意味で、「仲間」として、戦った瞬間だった。
私たちは、すぐに、石柱の元へと駆け寄った。
「ミキ、こいつが、何だかわかるか?」
フレイヤさんが、石柱に刻まれた、複雑なルーン文字を指差す。
私には、その文字を、読むことはできない。
でも……。
私は、導かれるように、一番大きな、中央の石柱に、そっと、手を触れた。
そして、胸の奥の『聖光の聖力』を、その石へと、流し込む。
すると、あの、山の岩屋の時と同じように、石柱が、金色の、温かい光を放ち始めた!
円形に並んだ、全ての石柱が、次々と、共鳴するように、輝き出す。
そして、私の頭の中に、再び、あの、古の記憶の奔流が、流れ込んできた。
でも、今度は、以前のような、混沌としたものではない。
もっと、はっきりとした、一つの「映像」として。
それは、『鍵』の姿だった。
美しい、水晶のような、多面体。
それが、何者かによって、砕かれ、いくつかの、光の欠片となって、この聖山の、あちこちへと、飛び散っていく光景。
(……鍵は、一つじゃなかったんだ……!)
そして、映像は、さらに、一つの欠片が、眠る場所を、私に、示してくれた。
山の、中腹にある、古びた、滝の裏側の洞窟……。
映像が、ふっと消える。
同時に、石柱の光も、静かに、消え去った。
「……ミキ、大丈夫か!?」
フレイヤさんが、私の肩を支えてくれる。
私は、荒い息をつきながらも、彼女に、今、見たものを、伝えた。
鍵が、砕かれていること。
そして、最初の欠片のありかを。
私が持っていた、敵の地図を広げると、不思議なことに、私が映像で見た、滝の洞窟の場所が、淡く、光を放ち始めていた。
「……なるほどな」
フレイヤさんが、納得したように頷く。
「この石碑は、『鍵』のありかを示すための、道しるべ、というわけか。
あんたの力で、それを、起動させたんだな」
そうだとしたら、サイラスたちが、この石碑の周りをうろついていたのも、頷ける。
彼らは、私のような、『星の子』の力なしに、無理やり、この石碑から、情報を引き出そうとしていたのかもしれない。
「……急ごう、フレイヤさん」
私は、立ち上がった。
「奴らより先に、最初の欠片を、手に入れる!」
「ああ!」
フレイヤさんも、力強く頷く。
私たちは、光り始めた地図を頼りに、滝の洞窟へと、向かう準備を始めた。
敵の本隊は、まだ、別の場所を調べているはずだ。
今なら、先回りできるかもしれない。
でも、油断はできない。
私たちの、この行動も、いずれ、奴らに気づかれるだろう。
眠れる聖山を舞台にした、『鍵』を巡る、本格的な戦い。
それは、もう、始まっている。
私は、フレイヤさんと、互いの目を見て、強く頷き合った。
そして、夜の闇の中を、次なる目的地へと、駆け出した。
手に入れた、敵の地図。
それは、私たちの、唯一の生命線であり、道しるべだった。
フレイヤさんは、その卓越した狩人としての技術で、敵の警戒網を、巧みに、すり抜けていく。
彼女は、風の音、獣の気配、そして、遠くの焚火の匂いから、敵の斥候(せっこう)が潜む場所を、正確に読み取っていた。
そして、私の役割は……。
「……ミキ、どうだ?
こっちの方角で、間違いないか?」
フレイヤさんが、低い声で、私に尋ねる。
私は、目を閉じ、胸の奥の『聖光(せいこう)の聖力』に、意識を集中させた。
すると、地図に記された、いくつかの、奇妙な印の一つが、私の頭の中で、微かな、しかし、確かな光を放ち、方向を、示してくれるのだ。
まるで、私の力が、この山の、古(いにしえ)の力と、共鳴しているかのように。
「……はい。
こっちです。
この、岩場の向こうに、何か、強い気配を感じます」
「よし。
行くぞ」
私たちの間には、もう、多くの言葉は必要なかった。
彼女の、荒野の知恵と、私の、特別な力。
二つが合わさることで、私たちは、まるで、一人の人間のように、この、敵地に満ちた聖山を、進んでいく。
数時間後、私たちは、地図に示された、最初の目的地へと辿り着いた。
そこは、月明かりに照らされた、小さな広場。
そして、その中央には、円を描くようにして、数本の、苔(こけ)むした、巨大な石柱(メンヒル)が、静かに、佇(たたず)んでいた。
あの、私が、森の奥深くで出会った石碑と、同じ、古の気配。
しかし、その聖なる場所は、すでに、土足で踏み荒らされていた。
二人の、黒い外套(マント)の男が、石柱の周りをうろつき、何か、調査をしているようだった。
『蒐集家(コレクター)』の、見張りだ。
「……どうする?」
フレイヤさんが、弓に矢を番(つが)えながら、尋ねる。
「……音を立てずに、やります」
私は、短剣を抜き放ち、答えた。
もう、私の心に、躊躇(ためら)いはない。
フレイヤさんが、息を吸う。
そして、吐く息と共に、矢が、音もなく、放たれた。
ヒュッ、という、わずかな風切り音。
見張り役の一人が、喉に矢を受け、声もなく、その場に崩れ落ちた。
「なっ!?」
もう一人の男が、驚き、こちらを向く。
でも、彼の意識は、フレイヤさんのいる、茂みの方へと向いていた。
その隙を、私は逃さない。
幻惑魔法で、自分の足音と気配を、完全に消し、一気に、その男の背後へと回り込む!
そして、訓練通りに、聖なる光を纏わせた刃を、その、黒い外套ごと、心臓めがけて、突き刺した!
「……がっ……!」
男は、短い呻き声を一つ残し、前のめりに倒れる。
……静かすぎるほどの、勝利。
私たちが、初めて、本当の意味で、「仲間」として、戦った瞬間だった。
私たちは、すぐに、石柱の元へと駆け寄った。
「ミキ、こいつが、何だかわかるか?」
フレイヤさんが、石柱に刻まれた、複雑なルーン文字を指差す。
私には、その文字を、読むことはできない。
でも……。
私は、導かれるように、一番大きな、中央の石柱に、そっと、手を触れた。
そして、胸の奥の『聖光の聖力』を、その石へと、流し込む。
すると、あの、山の岩屋の時と同じように、石柱が、金色の、温かい光を放ち始めた!
円形に並んだ、全ての石柱が、次々と、共鳴するように、輝き出す。
そして、私の頭の中に、再び、あの、古の記憶の奔流が、流れ込んできた。
でも、今度は、以前のような、混沌としたものではない。
もっと、はっきりとした、一つの「映像」として。
それは、『鍵』の姿だった。
美しい、水晶のような、多面体。
それが、何者かによって、砕かれ、いくつかの、光の欠片となって、この聖山の、あちこちへと、飛び散っていく光景。
(……鍵は、一つじゃなかったんだ……!)
そして、映像は、さらに、一つの欠片が、眠る場所を、私に、示してくれた。
山の、中腹にある、古びた、滝の裏側の洞窟……。
映像が、ふっと消える。
同時に、石柱の光も、静かに、消え去った。
「……ミキ、大丈夫か!?」
フレイヤさんが、私の肩を支えてくれる。
私は、荒い息をつきながらも、彼女に、今、見たものを、伝えた。
鍵が、砕かれていること。
そして、最初の欠片のありかを。
私が持っていた、敵の地図を広げると、不思議なことに、私が映像で見た、滝の洞窟の場所が、淡く、光を放ち始めていた。
「……なるほどな」
フレイヤさんが、納得したように頷く。
「この石碑は、『鍵』のありかを示すための、道しるべ、というわけか。
あんたの力で、それを、起動させたんだな」
そうだとしたら、サイラスたちが、この石碑の周りをうろついていたのも、頷ける。
彼らは、私のような、『星の子』の力なしに、無理やり、この石碑から、情報を引き出そうとしていたのかもしれない。
「……急ごう、フレイヤさん」
私は、立ち上がった。
「奴らより先に、最初の欠片を、手に入れる!」
「ああ!」
フレイヤさんも、力強く頷く。
私たちは、光り始めた地図を頼りに、滝の洞窟へと、向かう準備を始めた。
敵の本隊は、まだ、別の場所を調べているはずだ。
今なら、先回りできるかもしれない。
でも、油断はできない。
私たちの、この行動も、いずれ、奴らに気づかれるだろう。
眠れる聖山を舞台にした、『鍵』を巡る、本格的な戦い。
それは、もう、始まっている。
私は、フレイヤさんと、互いの目を見て、強く頷き合った。
そして、夜の闇の中を、次なる目的地へと、駆け出した。
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