【完結】勇者の孫は、自分が最強だとまだ知らない

シマセイ

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第62話 不滅の結界

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『黄昏の祭壇』。
世界の、終わりと、始まりが、交差する場所。
空の、太陽が、月影に、完全に、覆い隠されようとする、その、僅かな時間だけが、彼らに、残された、全てだった。

祭壇の中心では、『黎明の子供たち』の、数名の、術者たちが、厳かな、詠唱を、続けている。
彼らが、掲げた、両手から、放たれる、白銀の光が、祭壇の、中心で、渦を巻き、天へと、昇る、光の柱を、形成していた。
そして、その、儀式の、全てを、守るかのように、巨大な、半球状の、銀色の、結界が、祭壇全体を、覆っている。

「作戦開始だ!」

ブロックの、雄叫びを、合図に、一行は、最後の戦いへと、突撃した。

「まずは、あの、忌々しい、バリアを、叩き割る!」

ブロックが、その、剛腕で、戦斧を、力任せに、叩きつける。
アレクシスもまた、洗練された、剣技で、結界の、一点を、正確に、貫こうとした。
しかし。

カィン、と、甲高い、金属音のような、音がして、二人の攻撃は、結界に、触れる、まさに、その寸前で、弾き返されてしまった。

「なっ……!?手ごたえが、全く、ねえ!」
ブロックが、驚愕の声を上げる。

「これは、ただの、防御結界では、ない……!」
アレクシスも、後方へと、飛び退きながら、分析する。

「『敵意』そのものを、拒絶する、概念型の、結界です」
後方で、戦況を、見つめていた、ルナが、静かに、告げた。

「戦う、という、意志を持って、近づく者は、全て、その、意志の力に、比例して、弾き返される。戦士にとっては、まさに、難攻不落の、完璧な、守り……」
リリアナの顔に、絶望の色が、浮かぶ。
これでは、中に入ることすら、できない。

その、絶望的な、やり取りを、アッシュは、のんきに、聞いていた。
そして、彼なりに、状況を、理解した。

「そっか!つまり、『怒っちゃダメ』ってことだね!簡単だよ!」

「え?」
仲間たちが、呆気に取られる、その、横を、アッシュは、てくてくと、歩いていった。
まるで、近所の家に、遊びに行くかのように、彼は、その、誰も、近づくことさえ、できなかった、絶対防御の、結界へと、近づいていく。

そして、彼は、その、きらきらと輝く、光の壁の前に立つと、そっと、手を上げた。
殴るのでも、魔法を、放つのでもない。
彼は、ただ、その結界を、まるで、友達の家の、ドアを、ノックするかのように、こん、こん、と、優しく、叩いた。

「すみませーん!こんにちはー!中に入っても、いいですかー?」

その、あまりにも、礼儀正しく、そして、敵意の、かけらもない、「お願い」。

アッシュの手のひらが、結界に、触れた、その瞬間。
彼の、内なる、『黄金の光』――純粋な、生命と、喜びの、エネルギーが、結界に、流れ込んだ。

『白銀の光』で、構成された、結界の、システムは、その、あまりにも、異質で、暖かな、エネルギーを、「攻撃」とは、認識しなかった。
それは、システムにとって、「訪問者の、呼び鈴」として、解釈されたのだ。
しかし、その、「呼び鈴」の、エネルギーが、あまりにも、規格外すぎた。
結界の、秩序だった、論理回路は、完全に、ショートを起こし、暴走を始めた。

ぴしぴし、と、結界に、亀裂が走る。
そして、次の瞬間。
結界は、砕け散るのではなく、その、性質を、完全に、反転させた。
「拒絶」の力が、「吸引」の力へと、変わったのだ。

シュゴォォォォッ!

という、奇妙な、掃除機のような音と共に、アッシュたち、五人の体は、抵抗する間もなく、結界の中へと、猛烈な勢いで、吸い込まれていった。
そして、儀式の、中心、詠唱を続ける、術者たちの、目と鼻の先に、どさどさ、と、無様に、叩きつけられた。

「うわっ!」

背後で、結界は、何事もなかったかのように、再び、その、輝きを、取り戻す。
今度は、彼らを、内側に、閉じ込める、牢獄として。

儀式を、行っていた、『黎明の子供たち』は、詠唱を、止め、突然、自分たちの、聖域の、中心に、現れた、侵入者たちを、信じられない、といった、表情で、見つめていた。

アッシュは、服についた、埃を、ぱんぱん、と払いながら、立ち上がった。

「わあ、楽しかったなあ!ここが、中なんだね!なんだか、ちょっと、灰色っぽい感じだ」

彼は、驚き、固まっている、ローブの人物たちを、見渡すと、満面の笑みで、言った。

「こんにちは!みなさん、パーティの、真っ最中ですか?僕たち、おやつを、持ってきたんですよ!」

彼は、そう言うと、リリアナが、大事そうに、抱えていた、保冷箱から、『黄金プリン』を、一つ、取り出した。

絶対防御の、結界は、破られた。
しかし、それは、同時に、彼らが、敵の、本拠地の、ど真ん中に、閉じ込められたことも、意味していた。
予期せぬ形で、最終決戦の、舞台は、整えられてしまったのだ。
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