62 / 65
第62話 不滅の結界
しおりを挟む
『黄昏の祭壇』。
世界の、終わりと、始まりが、交差する場所。
空の、太陽が、月影に、完全に、覆い隠されようとする、その、僅かな時間だけが、彼らに、残された、全てだった。
祭壇の中心では、『黎明の子供たち』の、数名の、術者たちが、厳かな、詠唱を、続けている。
彼らが、掲げた、両手から、放たれる、白銀の光が、祭壇の、中心で、渦を巻き、天へと、昇る、光の柱を、形成していた。
そして、その、儀式の、全てを、守るかのように、巨大な、半球状の、銀色の、結界が、祭壇全体を、覆っている。
「作戦開始だ!」
ブロックの、雄叫びを、合図に、一行は、最後の戦いへと、突撃した。
「まずは、あの、忌々しい、バリアを、叩き割る!」
ブロックが、その、剛腕で、戦斧を、力任せに、叩きつける。
アレクシスもまた、洗練された、剣技で、結界の、一点を、正確に、貫こうとした。
しかし。
カィン、と、甲高い、金属音のような、音がして、二人の攻撃は、結界に、触れる、まさに、その寸前で、弾き返されてしまった。
「なっ……!?手ごたえが、全く、ねえ!」
ブロックが、驚愕の声を上げる。
「これは、ただの、防御結界では、ない……!」
アレクシスも、後方へと、飛び退きながら、分析する。
「『敵意』そのものを、拒絶する、概念型の、結界です」
後方で、戦況を、見つめていた、ルナが、静かに、告げた。
「戦う、という、意志を持って、近づく者は、全て、その、意志の力に、比例して、弾き返される。戦士にとっては、まさに、難攻不落の、完璧な、守り……」
リリアナの顔に、絶望の色が、浮かぶ。
これでは、中に入ることすら、できない。
その、絶望的な、やり取りを、アッシュは、のんきに、聞いていた。
そして、彼なりに、状況を、理解した。
「そっか!つまり、『怒っちゃダメ』ってことだね!簡単だよ!」
「え?」
仲間たちが、呆気に取られる、その、横を、アッシュは、てくてくと、歩いていった。
まるで、近所の家に、遊びに行くかのように、彼は、その、誰も、近づくことさえ、できなかった、絶対防御の、結界へと、近づいていく。
そして、彼は、その、きらきらと輝く、光の壁の前に立つと、そっと、手を上げた。
殴るのでも、魔法を、放つのでもない。
彼は、ただ、その結界を、まるで、友達の家の、ドアを、ノックするかのように、こん、こん、と、優しく、叩いた。
「すみませーん!こんにちはー!中に入っても、いいですかー?」
その、あまりにも、礼儀正しく、そして、敵意の、かけらもない、「お願い」。
アッシュの手のひらが、結界に、触れた、その瞬間。
彼の、内なる、『黄金の光』――純粋な、生命と、喜びの、エネルギーが、結界に、流れ込んだ。
『白銀の光』で、構成された、結界の、システムは、その、あまりにも、異質で、暖かな、エネルギーを、「攻撃」とは、認識しなかった。
それは、システムにとって、「訪問者の、呼び鈴」として、解釈されたのだ。
しかし、その、「呼び鈴」の、エネルギーが、あまりにも、規格外すぎた。
結界の、秩序だった、論理回路は、完全に、ショートを起こし、暴走を始めた。
ぴしぴし、と、結界に、亀裂が走る。
そして、次の瞬間。
結界は、砕け散るのではなく、その、性質を、完全に、反転させた。
「拒絶」の力が、「吸引」の力へと、変わったのだ。
シュゴォォォォッ!
という、奇妙な、掃除機のような音と共に、アッシュたち、五人の体は、抵抗する間もなく、結界の中へと、猛烈な勢いで、吸い込まれていった。
そして、儀式の、中心、詠唱を続ける、術者たちの、目と鼻の先に、どさどさ、と、無様に、叩きつけられた。
「うわっ!」
背後で、結界は、何事もなかったかのように、再び、その、輝きを、取り戻す。
今度は、彼らを、内側に、閉じ込める、牢獄として。
儀式を、行っていた、『黎明の子供たち』は、詠唱を、止め、突然、自分たちの、聖域の、中心に、現れた、侵入者たちを、信じられない、といった、表情で、見つめていた。
アッシュは、服についた、埃を、ぱんぱん、と払いながら、立ち上がった。
「わあ、楽しかったなあ!ここが、中なんだね!なんだか、ちょっと、灰色っぽい感じだ」
彼は、驚き、固まっている、ローブの人物たちを、見渡すと、満面の笑みで、言った。
「こんにちは!みなさん、パーティの、真っ最中ですか?僕たち、おやつを、持ってきたんですよ!」
彼は、そう言うと、リリアナが、大事そうに、抱えていた、保冷箱から、『黄金プリン』を、一つ、取り出した。
絶対防御の、結界は、破られた。
しかし、それは、同時に、彼らが、敵の、本拠地の、ど真ん中に、閉じ込められたことも、意味していた。
予期せぬ形で、最終決戦の、舞台は、整えられてしまったのだ。
世界の、終わりと、始まりが、交差する場所。
空の、太陽が、月影に、完全に、覆い隠されようとする、その、僅かな時間だけが、彼らに、残された、全てだった。
祭壇の中心では、『黎明の子供たち』の、数名の、術者たちが、厳かな、詠唱を、続けている。
彼らが、掲げた、両手から、放たれる、白銀の光が、祭壇の、中心で、渦を巻き、天へと、昇る、光の柱を、形成していた。
そして、その、儀式の、全てを、守るかのように、巨大な、半球状の、銀色の、結界が、祭壇全体を、覆っている。
「作戦開始だ!」
ブロックの、雄叫びを、合図に、一行は、最後の戦いへと、突撃した。
「まずは、あの、忌々しい、バリアを、叩き割る!」
ブロックが、その、剛腕で、戦斧を、力任せに、叩きつける。
アレクシスもまた、洗練された、剣技で、結界の、一点を、正確に、貫こうとした。
しかし。
カィン、と、甲高い、金属音のような、音がして、二人の攻撃は、結界に、触れる、まさに、その寸前で、弾き返されてしまった。
「なっ……!?手ごたえが、全く、ねえ!」
ブロックが、驚愕の声を上げる。
「これは、ただの、防御結界では、ない……!」
アレクシスも、後方へと、飛び退きながら、分析する。
「『敵意』そのものを、拒絶する、概念型の、結界です」
後方で、戦況を、見つめていた、ルナが、静かに、告げた。
「戦う、という、意志を持って、近づく者は、全て、その、意志の力に、比例して、弾き返される。戦士にとっては、まさに、難攻不落の、完璧な、守り……」
リリアナの顔に、絶望の色が、浮かぶ。
これでは、中に入ることすら、できない。
その、絶望的な、やり取りを、アッシュは、のんきに、聞いていた。
そして、彼なりに、状況を、理解した。
「そっか!つまり、『怒っちゃダメ』ってことだね!簡単だよ!」
「え?」
仲間たちが、呆気に取られる、その、横を、アッシュは、てくてくと、歩いていった。
まるで、近所の家に、遊びに行くかのように、彼は、その、誰も、近づくことさえ、できなかった、絶対防御の、結界へと、近づいていく。
そして、彼は、その、きらきらと輝く、光の壁の前に立つと、そっと、手を上げた。
殴るのでも、魔法を、放つのでもない。
彼は、ただ、その結界を、まるで、友達の家の、ドアを、ノックするかのように、こん、こん、と、優しく、叩いた。
「すみませーん!こんにちはー!中に入っても、いいですかー?」
その、あまりにも、礼儀正しく、そして、敵意の、かけらもない、「お願い」。
アッシュの手のひらが、結界に、触れた、その瞬間。
彼の、内なる、『黄金の光』――純粋な、生命と、喜びの、エネルギーが、結界に、流れ込んだ。
『白銀の光』で、構成された、結界の、システムは、その、あまりにも、異質で、暖かな、エネルギーを、「攻撃」とは、認識しなかった。
それは、システムにとって、「訪問者の、呼び鈴」として、解釈されたのだ。
しかし、その、「呼び鈴」の、エネルギーが、あまりにも、規格外すぎた。
結界の、秩序だった、論理回路は、完全に、ショートを起こし、暴走を始めた。
ぴしぴし、と、結界に、亀裂が走る。
そして、次の瞬間。
結界は、砕け散るのではなく、その、性質を、完全に、反転させた。
「拒絶」の力が、「吸引」の力へと、変わったのだ。
シュゴォォォォッ!
という、奇妙な、掃除機のような音と共に、アッシュたち、五人の体は、抵抗する間もなく、結界の中へと、猛烈な勢いで、吸い込まれていった。
そして、儀式の、中心、詠唱を続ける、術者たちの、目と鼻の先に、どさどさ、と、無様に、叩きつけられた。
「うわっ!」
背後で、結界は、何事もなかったかのように、再び、その、輝きを、取り戻す。
今度は、彼らを、内側に、閉じ込める、牢獄として。
儀式を、行っていた、『黎明の子供たち』は、詠唱を、止め、突然、自分たちの、聖域の、中心に、現れた、侵入者たちを、信じられない、といった、表情で、見つめていた。
アッシュは、服についた、埃を、ぱんぱん、と払いながら、立ち上がった。
「わあ、楽しかったなあ!ここが、中なんだね!なんだか、ちょっと、灰色っぽい感じだ」
彼は、驚き、固まっている、ローブの人物たちを、見渡すと、満面の笑みで、言った。
「こんにちは!みなさん、パーティの、真っ最中ですか?僕たち、おやつを、持ってきたんですよ!」
彼は、そう言うと、リリアナが、大事そうに、抱えていた、保冷箱から、『黄金プリン』を、一つ、取り出した。
絶対防御の、結界は、破られた。
しかし、それは、同時に、彼らが、敵の、本拠地の、ど真ん中に、閉じ込められたことも、意味していた。
予期せぬ形で、最終決戦の、舞台は、整えられてしまったのだ。
56
あなたにおすすめの小説
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
無能令嬢、『雑役係』として辺境送りされたけど、世界樹の加護を受けて規格外に成長する
タマ マコト
ファンタジー
名門エルフォルト家の長女クレアは、生まれつきの“虚弱体質”と誤解され、家族から無能扱いされ続けてきた。
社交界デビュー目前、突然「役立たず」と決めつけられ、王都で雑役係として働く名目で辺境へ追放される。
孤独と諦めを抱えたまま向かった辺境の村フィルナで、クレアは自分の体調がなぜか安定し、壊れた道具や荒れた土地が彼女の手に触れるだけで少しずつ息を吹き返す“奇妙な変化”に気づく。
そしてある夜、瘴気に満ちた森の奥から呼び寄せられるように、一人で足を踏み入れた彼女は、朽ちた“世界樹の分枝”と出会い、自分が世界樹の血を引く“末裔”であることを知る——。
追放されたはずの少女が、世界を動かす存在へ覚醒する始まりの物語。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
SE転職。~妹よ。兄さん、しばらく、出張先(異世界)から帰れそうにない~
しばたろう
ファンタジー
ブラック企業で倒れたSEが、
目を覚ますと――そこは異世界だった。
賑やかなギルド、個性豊かな仲間たち、
そして「魔法」という名のシステム。
元エンジニアの知識と根性で、男は再び“仕事”を始める。
一方、現実世界では、
兄の意識が戻らぬまま、妹が孤独と絶望の中で抗っていた。
それでも彼女は、心ある人々に支えられながら、
科学と祈りを武器に、兄を救う道を探し続ける。
二つの世界を隔てる“システム”の謎が、やがて兄妹を結びつける。
異世界と現実が交錯するとき、物語は再起動する――。
《「小説家になろう」にも投稿しています》
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる