【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

第10話：軽量ブーツと市場の仕掛け

誠也は作業場の片隅で  
暖炉ストーンに手を当てていた。  

冬の朝、  
二つの太陽が昇っても  
リムドの町は冷え込んでいた。  

「足元が寒いな…  
動きやすい靴があったら便利かも」  

市場で耳にした  
「重い靴で疲れる」という  
冒険者の愚痴が頭に浮かぶ。  

「軽くて動きやすいブーツなら  
売れるかな？」  

現代のスニーカーをイメージし、  
新しい魔道具を考えた。  

材料を探しに  
市場の雑貨屋へ向かう。  

町は静かで、  
冷たい風が石畳を吹き抜ける。  

雑貨屋の屋台に着くと、  
おばさんが厚いコートを着込んでいた。  

「おはよう、おばさん。  
寒そうだね」  

「おお、誠也か。  
この冬、ほんと冷えるよ。  
何か用かい？」  

「ブーツを作りたいんだ。  
革と魔石、ある？」  

「ブーツか、いいねえ。  
これでどうだい？」  
おばさんが硬い革と  
小さな魔石を出す。  

「革は銅貨25枚、魔石は5枚。  
動きやすいのが欲しいなら  
軽い革だよ」  

「ありがとう。  
これなら良さそう」  
銅貨30枚を渡し、材料を受け取る。  

作業場に戻り、  
机に革を広げた。  
硬いが柔軟性もあり、  
ブーツにぴったり。  

「これなら丈夫そうだな」  
製作に取りかかる。  

ナイフで革を切り、  
足の形に沿ったパーツを作る。  

「サイズは…  
俺の足で試そう」  
自分の足に当てて調整。  

革の端を糸と針で縫い、  
靴底と側面を組み立てる。  

「底は厚めにしないと  
すぐ擦り減るかな」  

別の革を重ね、  
頑丈に縫い合わせる。  

「これ、結構時間かかるな…  
でも形になってきた」  

次に、魔石を加工。  
小さくて丸い形を活かし、  
靴の内側に埋め込む。  

ノミで魔石の表面を削り、  
滑らかに整える。  

「割れないように…  
慎重に」  
細かく調整し、  
革の内側に溝を掘る。  

魔石を嵌め込み、  
糸でしっかり固定。  

「見た目は普通のブーツだ。  
怪しまれないな」  

能力を込める時が来た。  
目を閉じ、  
「軽くなれ」と意識を集中。  

魔石に力を注ぐと、  
ブーツが一瞬光り、  
手に持つと驚くほど軽い。  

試しに履いてみる。  
足が軽やかに動き、  
まるで浮いてるみたい。  

「おお！動きやすい！  
これなら売れるぞ！」  

完成したのは「軽量ブーツ」。  
履くと数分間、  
足取りが軽くなる魔道具だ。  

「『魔石の軽量化魔法』ってことにしよう」  
言い訳を用意し、  
市場へ向かう。  

市場は昼時で賑わっていた。  
「軽いブーツですよ～  
動きやすさにどうですか？」  
ブーツを手に呼び込む。  

冒険者が近づいてきた。  

「おい、それ軽いのか？  
見せてみろよ」  

「履いてみてください」  
誠也が渡すと、  
冒険者が試す。  

「おおお！  
足が軽いぞ！  
いくらだ？」  

「銅貨35枚でお願いします」  

「少し高いが…  
まあいい。1つくれ」  
銅貨を渡してきた。  

その後も売れ行きは順調。  
商人や旅人が興味を示し、  
夕方までに4個で銅貨140枚を稼ぐ。  

片付けていると、  
バロンが鍛冶場から現れた。  

「おい、誠也。  
そのブーツ、動きやすいのか？」  

「うん、バロンさんも試してみて」  

バロンが履くと、  
「おお、確かに軽いな！  
鍛冶場で動き回るのにいいぜ。  
1つくれよ」  

「ありがとう。  
銅貨35枚でいいよ」  

「安くねえな…  
でも便利だ。ほら」  
銅貨を渡す。  

「レザック、最近妙な動きしてるぞ。  
気をつけな」  

「またか…  
今度は何？」  

「市場で変な噂流すだけじゃねえ。  
お前の道具に細工してるって話だ」  

「細工？  
どういうこと？」  

「分からねえが、  
お前を潰そうとしてるのは確かだ。  
用心しろよ」  

「ありがとう。  
気をつけるよ」  

市場が終わり、  
作業場に戻る途中、  
妙なことが起きた。  

客が持ってたはずの  
軽量ブーツが机に戻ってる。  

「おかしいな…  
売ったのに？」  

よく見ると、  
ブーツの底に小さな穴が開いてる。  

「これ、細工されたのか！？」  
驚いていると、  
グラントが傭兵仲間と現れた。  

「おお、誠也！  
何か困った顔してるな。  
どうした？」  

「これ見てよ。  
売ったブーツが戻ってきて、  
底に穴が…」  

「おいおい、  
それはやばいぜ。  
誰かに細工されたんじゃねえか？」  

「バロンさんが  
レザックが何かしてるって言ってた。  
これも？」  

「ありえるな。  
あいつ、噂流すだけじゃなく  
こんな手まで使うか。  
気をつけろよ」  

「うん、  
どうしよう…  
信用落とされたら終わりだよ」  

「心配すんな。  
俺らがお前の道具使って  
評判上げてやるぜ。  
今夜酒場来いよ！」  

「ありがとう。  
じゃあ行くよ」  

酒場では、  
バロンとグラントが待っていた。  

「おお、誠也！  
遅かったな！」  
グラントが酒を差し出す。  

「市場で変なことあってさ。  
レザック、ブーツに細工したみたい」  

「おい、マジかよ？  
あいつ、姑息だな！」  
グラントが怒る。  

バロンが頷き、  
「噂流すだけじゃ飽き足らず、  
細工までか。  
お前、ほんと目立ってるな」  

「目立つの嫌なのに…  
どうすればいいかな？」  

「俺らがお前の道具使って  
良い噂流すよ。  
あいつの策略潰してやるぜ」  
グラントが笑う。  

「頼もしいな。  
ありがとう、二人とも」  

楽しい夜が更け、  
作業場に戻る途中、  
指輪がブブッと震えた。  

「え、また！？」  
暗闇を見回すと、  
路地で黒い影が動く。  

獣の唸り声。  
「また魔獣！？」  

指輪が激しく震え、  
影が飛びかかってきた。  

「おい、そっちだ！」  
グラントの声が響き、  
傭兵たちが駆けつける。  

バロンがハンマーを振り、  
「下がれ、誠也！」  

小型の狼が怯えて逃げ、  
指輪の震えが止まる。  

「何だよ、  
レザックじゃなくてまた魔獣か…」  

「町の近くに出てるらしいぜ。  
用心しろよ」  
バロンが言う。  

「助かった、ありがとう」  

作業場に戻り、  
銅貨175枚を机に並べる。  

「レザックの細工に魔獣か…  
忙しいな。  
でも友達がいて良かった」  

「次は何にしよう…  
防水マントとかどうかな？」  
星空を見上げ、  
誠也は次のアイデアを考えるのだった。