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神殿中央議場。
高天井のもと、白い石壁に囲まれた静謐な空間。
その場に集っていたのは、神殿の高位神官、王家の評議官、各地から招かれた知識者、そして若手神官たち。
私の名が呼ばれた瞬間、議場の空気がぴんと張り詰めた。
「──エヴァリーナ=フォン=ヴァイセローゼ。
学び舎《アウストリアの灯》設立責任者。
聖女制度および信仰教育に関する外部顧問として、発言を許可する」
私は、迷いなく壇上に上がった。
誰もが私を見ていた。
かつて断罪された女。
かつて、何も語ることを許されなかった“役”に過ぎなかった私を。
けれど、今の私は違う。
「初めまして。……あるいは、もう皆さまの記憶に、私の名前は残っているかもしれません」
私の声はよく通った。
それだけで、議場の空気が微かに揺れた。
「私がこの場に立つ理由は、制度を否定するためでも、誰かを責めるためでもありません。
ただ、“語ることが許されなかった者たち”の声を、ここに届けるためです」
沈黙。
誰も発言を遮らなかった。
「私が設立した学び舎には、名を与えられなかった子どもたちが集まってきます。
王都で“制度の外”に置かれた者、神の名のもとに“選ばれなかった”者、
そして──“聖女であることをやめたかった少女”も」
後方にいた神官たちがざわめく。
その言葉が意味するものを、彼らは知っていた。
「けれど、彼らは皆、こう言いました。
“私は、選ばれなくても、生きていていいのか”と」
私はゆっくりと視線を巡らせる。
「制度とは、選ぶことです。
けれど、信仰とは“誰も切り捨てないこと”ではないのでしょうか」
王家の席に座るカミル王子が、わずかに頷いた。
「私は、制度を壊したいのではありません。
ただ、そこに“声を持てなかった者の居場所”を加えてほしいのです」
言葉が落ちた瞬間、会場に沈黙が満ちた。
それは重さではなく、“問いの響き”。
誰かを糾弾するでもなく、怒号もなく、
ただ問いかける声が、場の空気を変えはじめていた。
壇上から降りたとき、議場の片隅でひとりの老神官が立ち上がった。
「……我々が守ってきたのは、神の教えではなく、“形”だったのかもしれんな」
その声は、小さく震えていた。
けれど、その震えこそが、“揺らぎ”の始まりだった。
私は席に戻る途中、そっと息をつく。
語るべきことは、まだ山ほどある。
でも今日、私は“語ってよかった”と、心から思えた。
──あの日、断罪された自分が、
今日、ようやく“意味を持った存在”になったのだと。
高天井のもと、白い石壁に囲まれた静謐な空間。
その場に集っていたのは、神殿の高位神官、王家の評議官、各地から招かれた知識者、そして若手神官たち。
私の名が呼ばれた瞬間、議場の空気がぴんと張り詰めた。
「──エヴァリーナ=フォン=ヴァイセローゼ。
学び舎《アウストリアの灯》設立責任者。
聖女制度および信仰教育に関する外部顧問として、発言を許可する」
私は、迷いなく壇上に上がった。
誰もが私を見ていた。
かつて断罪された女。
かつて、何も語ることを許されなかった“役”に過ぎなかった私を。
けれど、今の私は違う。
「初めまして。……あるいは、もう皆さまの記憶に、私の名前は残っているかもしれません」
私の声はよく通った。
それだけで、議場の空気が微かに揺れた。
「私がこの場に立つ理由は、制度を否定するためでも、誰かを責めるためでもありません。
ただ、“語ることが許されなかった者たち”の声を、ここに届けるためです」
沈黙。
誰も発言を遮らなかった。
「私が設立した学び舎には、名を与えられなかった子どもたちが集まってきます。
王都で“制度の外”に置かれた者、神の名のもとに“選ばれなかった”者、
そして──“聖女であることをやめたかった少女”も」
後方にいた神官たちがざわめく。
その言葉が意味するものを、彼らは知っていた。
「けれど、彼らは皆、こう言いました。
“私は、選ばれなくても、生きていていいのか”と」
私はゆっくりと視線を巡らせる。
「制度とは、選ぶことです。
けれど、信仰とは“誰も切り捨てないこと”ではないのでしょうか」
王家の席に座るカミル王子が、わずかに頷いた。
「私は、制度を壊したいのではありません。
ただ、そこに“声を持てなかった者の居場所”を加えてほしいのです」
言葉が落ちた瞬間、会場に沈黙が満ちた。
それは重さではなく、“問いの響き”。
誰かを糾弾するでもなく、怒号もなく、
ただ問いかける声が、場の空気を変えはじめていた。
壇上から降りたとき、議場の片隅でひとりの老神官が立ち上がった。
「……我々が守ってきたのは、神の教えではなく、“形”だったのかもしれんな」
その声は、小さく震えていた。
けれど、その震えこそが、“揺らぎ”の始まりだった。
私は席に戻る途中、そっと息をつく。
語るべきことは、まだ山ほどある。
でも今日、私は“語ってよかった”と、心から思えた。
──あの日、断罪された自分が、
今日、ようやく“意味を持った存在”になったのだと。
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