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長編版
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「みぎゃっ!!」
まるで尾を踏まれた猫のような声がして、腕を振り下ろした体勢のまま体が固まった。
──まずい。
「なん……っなんっですの、これは!? 粉!? どうして公爵家の娘のサロンから白い粉が……ってしょっぱい! 塩じゃありませんの!! どうしてサロンで突然塩が降ってくるのよ!!」
今日も見事に巻かれた黒い髪に雪が降り積もったような有様のこの声の主は、遅れてくると連絡があったお茶会の参加者で、私の友人だ。
今は顔を真っ赤にして髪を振り乱し、大騒ぎしている。
……よし、今のうちに逃げよう……。
そっと抜き足差し足でその横を通り抜けようとして──令嬢にあるまじき握力で腕をつかまれた。
「…………どこにいくのかしら、リシュフィ。まさかあなた……わたくしに塩を振ったまま、ここに置き去りにするつもりではありませんわよね……?」
「そんなそんな……滅相もありませんわ……タ、タオルでもお持ちしようかしらって……ね?」
友人は「それは助かりますわ」とにっこり笑った。
「こちらが降ってきた原因については、タオルをいただいてからにいたしましょうか」
けして逃がさないぞと笑顔が語っている。万事休す。
「それで。サロンに塩を撒くなど一体何事かしら。なにか怪しげな儀式でも行っていたのではないでしょうね」
あなたなら有り得そうで恐ろしいのよと睨まれる私は、現在床で正座の刑に処されている。
「そもそも公爵家の娘のサロンになぜ撒けるほどの塩が……」
「ああ、それはそのキャビネットを運び込むときに、そっと紛れ込ませたのよ。まさか女性の家具の引き出しを開けて見たりしないだろうから、ちょうど良」
「ロンズバーグのキャビネットを塩の運び屋にするなど言語道断! これ一つで一般家庭の一家が住む家が一軒建ちますのよ!?」
プリプリと怒る妙に現実的な友人の雷は今日も絶好調だ。
自慢の巻き髪に塩が残っていないかと丹念に鏡をのぞき込む彼女はエレシア。
エドワーズ公爵家の娘で私と同い年。
そして、あの因縁のお茶会で取り巻きを侍らせ、私をブタ呼ばわりした巻き髪お嬢様その人だ。
どうしてそんな彼女と私が友人関係になっているのかというと、話は殿下と婚約した八歳の頃にまで遡る。
※
私がノーと言えないまま話はあれよあれよと進められ、数週間後には私と殿下の婚約お披露目パーティが開かれてしまった。
まずい……まずい……これに出席したらいよいよ逃げられなくなる……。
せめてもの抵抗にお腹を出して寝たり、朝食のヨーグルトを豆腐かというほど発酵させて食べてみたが、適度な運動と食事制限を続けた私の体はこれ以上ないほどの健康優良状態で、なんの問題もなく当日を迎えてしまった。
当日、慣例だということで屋敷まで迎えにきた殿下は、挨拶もそこそこに私をまじまじと見つつ「ドレスがとてもよく似合っているな」と言った。不貞腐れつつ。棒読みで。
……陛下か王妃殿下にでもそう言うように言いつけられてきたのは明らかだ。
棒読みの褒め言葉には、棒読みのお礼で返す。
そもそもこのドレスは殿下と揃いのものになるようデザインや使う生地など事細かに王室から指示があったものだ。それだけに八歳の女の子に着せるにしては豪華で、いかにも私が主役! といった様相のものに仕上がっている。それは殿下も同じだ。
棒読みの挨拶以降、仏頂面の殿下はどう見てもこの婚約を喜んでいない様子で、ずっと不満そうにしていた。
まだ八歳の子供だから仕方ない。こんな行事ごとよりも早く同じ年頃の男の子と遊びたいと思っているのだろう。
そうして特に話題もないまま、車は動き出し、あっという間に会場へと到着した。
会場に着いてからは殿下の様子に気を配る余裕などない。
次々に来る挨拶はほとんど殿下が対応するから私はその後ろで作り笑顔を浮かべる役だった。
そうして殿下の背後霊、もとい添え物のようになっていると、一人の十歳くらいの男の子が人懐っこい笑みを浮かべて「ドレスがとてもお似合いですね。それにその髪飾りも。レストリド公爵令嬢の銀の御髪に映える見事な白金の意匠で素晴らしい」と褒めてくれた。
この髪飾りも王家から指示のあったものだ。それでもこの男の子の年齢でよくもこうスラスラと褒める言葉が出てくるものだと感心したし、その笑顔は心からの言葉に思えてなんだかくすぐったいような気持ちになる。
「ありがとうございます」
と心を込めてお礼を言うと、また笑顔が返されて、年下趣味ではないが癒された。
誰かさんとは大違いだ。
「それは俺が……」
隣から小さく、どこか拗ねたような声がした。
「殿下。どうかされまして?」
「なんでもない」
不貞腐れが悪化した殿下はこの後もろくに会話をしてくれなくて、ほとほと疲れ果てた。
八歳の男の子とはいえ、モラハラ予備軍ぶりに拍車がかかっているなぁ……。
「これはこれは殿下。ご機嫌麗しゅう。」
太鼓を叩いたような、太く響く大きな声だった。
「この度はご婚約おめでとうございます」
「ありがとう、エドワーズ公。お久しぶりですね」
エドワーズ公爵は声と同じ太鼓腹の体の大きなおじさんだった。快活に笑いながら、初めて会う私に目を向ける。
その目に内心首を傾げた。なんだか妙に粘りつくような、嫌な目だ。
「こちらが婚約者の……レストリド公の御息女でしたな」
「はじめまして。エドワーズ公爵様。レストリド公爵の娘、リシュフィでございます」
「そうだった。リシュフィ嬢ですな。茶会ではお見かけしたことがありませんが、レストリド公自慢のご令嬢にようやくお会いできて嬉しく思いますよ」
嘘を付け。
エドワーズ公爵は好意的な言葉に乗せて、殿下に対する媚びた蛇のような目とは明らかに違う、嫌らしい挑戦的な目を私に向けてきていた。
「そうそう、私にも娘がおりましてな。エレシアと申します。良ければリシュフィ嬢のご友人に加えていただきたいと申しておりましてねぇ」
そう言ったエドワーズ公爵に背中を些か乱暴に押されて出てきたのは、見覚えのある女の子だった。
『殿下。まさかの淑女をデブ呼ばわり!? 王家の一員としての資質が問われる』と私の脳内新聞一面の見出しを飾ったあの忌まわしきお茶会で、多数の取り巻きを抱え込んでいた巻き髪お嬢様だ。
この三年で顔や体の丸みがなくなり、大人びた印象の淑女へと成長している──が、私の姿を見て口をまん丸に開けて固まってしまっていた。
ふふん。そうでしょう。びっくりでしょう。と内心鼻が得意げに伸びる。
この子と会ったのは正真正銘あのお茶会が最初で最後だ。
つまりこの表情は、あのおデブちゃんがこんなに綺麗になったの!? ってことに違いない。
殿下の時はケーキの嫌がらせもあって苛立ったものの、エレシアちゃんのこの反応はなんとも気分がいい。綺麗になって、馬鹿にしてきた相手を見返すことのなんと気持ちいいこと! わたくしの美しさにひれ伏しなさい!
などと悦に浸っていたら手をがっしりと掴まれた。
「リシュフィ様……わたくしと、仲良くしてくださいませ!! 是非そのダイエッ……美しさの秘訣を教えてください!!」
淑女にあるまじき絶叫とも取れる叫びだった。
しかし私はわずかに質量を増やし始めた胸を張った。
同じ女としてその気持ち、汲んで差し上げてよ!
「あなたに、ついて来られるかしらね!」
「臨むところですわ!!」
こうして私と巻き髪お嬢様──エレシアちゃんの友情は始まった。
殿下? さぁ。その辺でケーキでも食べてるんじゃないですか。
まるで尾を踏まれた猫のような声がして、腕を振り下ろした体勢のまま体が固まった。
──まずい。
「なん……っなんっですの、これは!? 粉!? どうして公爵家の娘のサロンから白い粉が……ってしょっぱい! 塩じゃありませんの!! どうしてサロンで突然塩が降ってくるのよ!!」
今日も見事に巻かれた黒い髪に雪が降り積もったような有様のこの声の主は、遅れてくると連絡があったお茶会の参加者で、私の友人だ。
今は顔を真っ赤にして髪を振り乱し、大騒ぎしている。
……よし、今のうちに逃げよう……。
そっと抜き足差し足でその横を通り抜けようとして──令嬢にあるまじき握力で腕をつかまれた。
「…………どこにいくのかしら、リシュフィ。まさかあなた……わたくしに塩を振ったまま、ここに置き去りにするつもりではありませんわよね……?」
「そんなそんな……滅相もありませんわ……タ、タオルでもお持ちしようかしらって……ね?」
友人は「それは助かりますわ」とにっこり笑った。
「こちらが降ってきた原因については、タオルをいただいてからにいたしましょうか」
けして逃がさないぞと笑顔が語っている。万事休す。
「それで。サロンに塩を撒くなど一体何事かしら。なにか怪しげな儀式でも行っていたのではないでしょうね」
あなたなら有り得そうで恐ろしいのよと睨まれる私は、現在床で正座の刑に処されている。
「そもそも公爵家の娘のサロンになぜ撒けるほどの塩が……」
「ああ、それはそのキャビネットを運び込むときに、そっと紛れ込ませたのよ。まさか女性の家具の引き出しを開けて見たりしないだろうから、ちょうど良」
「ロンズバーグのキャビネットを塩の運び屋にするなど言語道断! これ一つで一般家庭の一家が住む家が一軒建ちますのよ!?」
プリプリと怒る妙に現実的な友人の雷は今日も絶好調だ。
自慢の巻き髪に塩が残っていないかと丹念に鏡をのぞき込む彼女はエレシア。
エドワーズ公爵家の娘で私と同い年。
そして、あの因縁のお茶会で取り巻きを侍らせ、私をブタ呼ばわりした巻き髪お嬢様その人だ。
どうしてそんな彼女と私が友人関係になっているのかというと、話は殿下と婚約した八歳の頃にまで遡る。
※
私がノーと言えないまま話はあれよあれよと進められ、数週間後には私と殿下の婚約お披露目パーティが開かれてしまった。
まずい……まずい……これに出席したらいよいよ逃げられなくなる……。
せめてもの抵抗にお腹を出して寝たり、朝食のヨーグルトを豆腐かというほど発酵させて食べてみたが、適度な運動と食事制限を続けた私の体はこれ以上ないほどの健康優良状態で、なんの問題もなく当日を迎えてしまった。
当日、慣例だということで屋敷まで迎えにきた殿下は、挨拶もそこそこに私をまじまじと見つつ「ドレスがとてもよく似合っているな」と言った。不貞腐れつつ。棒読みで。
……陛下か王妃殿下にでもそう言うように言いつけられてきたのは明らかだ。
棒読みの褒め言葉には、棒読みのお礼で返す。
そもそもこのドレスは殿下と揃いのものになるようデザインや使う生地など事細かに王室から指示があったものだ。それだけに八歳の女の子に着せるにしては豪華で、いかにも私が主役! といった様相のものに仕上がっている。それは殿下も同じだ。
棒読みの挨拶以降、仏頂面の殿下はどう見てもこの婚約を喜んでいない様子で、ずっと不満そうにしていた。
まだ八歳の子供だから仕方ない。こんな行事ごとよりも早く同じ年頃の男の子と遊びたいと思っているのだろう。
そうして特に話題もないまま、車は動き出し、あっという間に会場へと到着した。
会場に着いてからは殿下の様子に気を配る余裕などない。
次々に来る挨拶はほとんど殿下が対応するから私はその後ろで作り笑顔を浮かべる役だった。
そうして殿下の背後霊、もとい添え物のようになっていると、一人の十歳くらいの男の子が人懐っこい笑みを浮かべて「ドレスがとてもお似合いですね。それにその髪飾りも。レストリド公爵令嬢の銀の御髪に映える見事な白金の意匠で素晴らしい」と褒めてくれた。
この髪飾りも王家から指示のあったものだ。それでもこの男の子の年齢でよくもこうスラスラと褒める言葉が出てくるものだと感心したし、その笑顔は心からの言葉に思えてなんだかくすぐったいような気持ちになる。
「ありがとうございます」
と心を込めてお礼を言うと、また笑顔が返されて、年下趣味ではないが癒された。
誰かさんとは大違いだ。
「それは俺が……」
隣から小さく、どこか拗ねたような声がした。
「殿下。どうかされまして?」
「なんでもない」
不貞腐れが悪化した殿下はこの後もろくに会話をしてくれなくて、ほとほと疲れ果てた。
八歳の男の子とはいえ、モラハラ予備軍ぶりに拍車がかかっているなぁ……。
「これはこれは殿下。ご機嫌麗しゅう。」
太鼓を叩いたような、太く響く大きな声だった。
「この度はご婚約おめでとうございます」
「ありがとう、エドワーズ公。お久しぶりですね」
エドワーズ公爵は声と同じ太鼓腹の体の大きなおじさんだった。快活に笑いながら、初めて会う私に目を向ける。
その目に内心首を傾げた。なんだか妙に粘りつくような、嫌な目だ。
「こちらが婚約者の……レストリド公の御息女でしたな」
「はじめまして。エドワーズ公爵様。レストリド公爵の娘、リシュフィでございます」
「そうだった。リシュフィ嬢ですな。茶会ではお見かけしたことがありませんが、レストリド公自慢のご令嬢にようやくお会いできて嬉しく思いますよ」
嘘を付け。
エドワーズ公爵は好意的な言葉に乗せて、殿下に対する媚びた蛇のような目とは明らかに違う、嫌らしい挑戦的な目を私に向けてきていた。
「そうそう、私にも娘がおりましてな。エレシアと申します。良ければリシュフィ嬢のご友人に加えていただきたいと申しておりましてねぇ」
そう言ったエドワーズ公爵に背中を些か乱暴に押されて出てきたのは、見覚えのある女の子だった。
『殿下。まさかの淑女をデブ呼ばわり!? 王家の一員としての資質が問われる』と私の脳内新聞一面の見出しを飾ったあの忌まわしきお茶会で、多数の取り巻きを抱え込んでいた巻き髪お嬢様だ。
この三年で顔や体の丸みがなくなり、大人びた印象の淑女へと成長している──が、私の姿を見て口をまん丸に開けて固まってしまっていた。
ふふん。そうでしょう。びっくりでしょう。と内心鼻が得意げに伸びる。
この子と会ったのは正真正銘あのお茶会が最初で最後だ。
つまりこの表情は、あのおデブちゃんがこんなに綺麗になったの!? ってことに違いない。
殿下の時はケーキの嫌がらせもあって苛立ったものの、エレシアちゃんのこの反応はなんとも気分がいい。綺麗になって、馬鹿にしてきた相手を見返すことのなんと気持ちいいこと! わたくしの美しさにひれ伏しなさい!
などと悦に浸っていたら手をがっしりと掴まれた。
「リシュフィ様……わたくしと、仲良くしてくださいませ!! 是非そのダイエッ……美しさの秘訣を教えてください!!」
淑女にあるまじき絶叫とも取れる叫びだった。
しかし私はわずかに質量を増やし始めた胸を張った。
同じ女としてその気持ち、汲んで差し上げてよ!
「あなたに、ついて来られるかしらね!」
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こうして私と巻き髪お嬢様──エレシアちゃんの友情は始まった。
殿下? さぁ。その辺でケーキでも食べてるんじゃないですか。
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