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13.継母
しおりを挟む「分かっているの? アメジスト。親の言う事は絶対ですのよ」
幼い頃からずっと、毎日のように。
アメジストが母から言われ続けてきた言葉である。
これを“愛情”と呼んで良いものだろうか?
資産家であるベルメルシア家は、いわゆる富豪である。親の厳格な指導に素直に従うアメジストは、生まれてから十六年間。どんなに納得のいかない心情であっても理不尽な事を言われようとも、口答えは許されない環境で育った。
厳しい親へ抱く恐怖にも似た感情が、彼女の心には深く焼き付けられていった。無意識に心は怯えて暮らす日々であるアメジストは、もちろん親に隠しごとをした事など一度もない。そして小さな嘘すらついた事もなかった。
そんな彼女が初めて、親への反抗となる『秘密』。
――きっと、大丈夫よね? ジャニスは優秀な回復魔法師よ。必ず二人とも無事に助かっているはず。
「そしてあの子は絶対に、私が守るわ」
◇
キィ~……ガチャン。
「「「おはようございます、奥様」」」
朝食の支度をしていたお手伝いたちは全員、手を止めた。そして一斉に声を揃え深くお辞儀をし、挨拶をする。
「おはよう」
素っ気なく冷たい低めの声で返事をするのは、ベルメルシア氏の後妻である夫人のスピナ。アメジストの継母である。その名の通り棘のある性格だと陰では噂されている。
「おはようございます、お母様」
皆と同じように深いお辞儀で挨拶をするアメジスト。
「あら、いたの? おはよう」
「はい。本日も皆様が健康で良き一日となりますよう、お祈り申し上げます」
「えぇ」
ツンと見下すように冷淡な目で見る継母が、必要以上に言葉を発し口元を動かす事は、まず無い。
そう、親へ抱く――というよりも、この継母がアメジストにとって恐怖の原因であった。
「おぉ! 可愛い我が娘よ、今日も美しい挨拶をありがとう」
そう言うのは父であるオニキスだ。とても温厚でアメジストには甘々であった。
皆が食事のテーブルに着く頃。継母が彼女を呼び止める。
「お待ちなさい、アメジスト。もう少しハキハキとお話をなさい。全く何度言えば分かるのかしらね? あなたの声はいつも耳を澄まさないと聞こえませんわ。これは意地悪で言っているのではないのですよ。私は、あなたの為を思って言っているのです」
「はい、承知しております。申し訳ありません、お母様」
こうして毎朝のようにアメジストは叱られ、その度に「ありがとうございます」と、感謝の意を伝えなければならなかった。
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