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46.注意

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「お時間が迫っています。アメジスト様、お早く」
 それは数分前の事だった。ジャニスティの部屋から二つ隣にある書庫の部屋へ、二人は向かおうとしていた。

「ジャニス待って! クォーツが」
 足早に部屋を出ようとするジャニスティの様子を寂しそうに見つめる、くりくりの輝く瞳。それに気付いたアメジストは今後クォーツの保護者となりえるであろう彼を、呼び止めた。

「クォーツ?」
 部屋を出るため扉に手を置いていたジャニスティは一度、クォーツの元へ戻る。

「……ニシュティ?」
 言葉にならない一生懸命な“コトバ”で話す可愛いその子はなぜか? 瞳を潤ませ彼に何かを訴えかけるように、見つめてくる。それに答えるジャニスティの表情はとても穏やかでそして、優しく安心感のある声であった。

「いいかい? これから私はアメジストお嬢様を書庫までお送りしてくるから、この部屋でじっとしていてほしい。そして絶対に扉を開けてはならないし、出てはいけないよ。良いね?」
 大丈夫すぐに戻ってくるからと、寂しくないようクォーツの頭を重くゆっくりと撫でながら言い聞かせる。話している事をどこまで理解しているのか今は確認のしようもないが、ジャニスティはハキハキとした口調できちんと説明をしていた。

「はふっ!! んなぁ~♪」
 返事をするように頷き笑う、クォーツ。

 その様子がアメジストの目にはとても美しい花々が散りばめられた、絵画のように映った。

「良かった……」
(クォーツ、安心したみたいだわ)

「良い子だ。では行ってくるよ」

 ジャニスティの言葉で急ぎ足で部屋を出る。
 その二人の姿を満面の笑みで両手をめいっぱい振るクォーツはまるで、応援しているかのように見えた。

 キィー……ガチャ。

 静かにジャニスティの部屋から出る。そして物音を立てぬよう廊下を小走りで進むと隠し扉のある書庫へ、何事もなく辿り着いた。

「うっはぁ~ふぅ……良かった、着いた!! 息が止まっちゃうかと思ったわ」
 アメジストの少し頬を染めホッとした表情にジャニスティはクスッと微笑みながら、返事をした。

「誰にも見られず、何とか着きましたね」
 その後、彼の言う注意事項とは三つありさほど難しい話ではなかった。

 歩き始めたら絶対に後ろを振り返らない。
 気を引き締めしっかり進行方向へと意識を向ける。

 そして――。

「もし何か声のような音が聞こえたとしても、絶対に答えず、話さずに進み続ける事。これは特に厳守して下さい」

 そう、注意が伝えられた。
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