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65.親和 +
しおりを挟む聞いた角に位置する部屋へ向かった、オニキスとジャニー。カーテンで仕切られた簡易な小部屋からは、美味しそうな香りがしていた。
「マスター、いるかい?」
オニキスの声を聞くとカーテンがゆっくりと開き、小部屋へ案内される。
「ベル様、そろそろご到着の頃かと、お待ちしておりました」
“マスター”と呼ばれたその者は人の良さそうな優しい表情で、二人を出迎える。歳は見た目六十代前後だろうか――天然パーマで穏やかな印象、しかしどこか哀愁漂い貫禄のある男であった。
「ありがとう、今夜は面倒かけるが……よろしく頼む」
「いえいえ、喜んでお引き受けいたしますよ」
とても親しそうに話す二人をジャニーは、凝視する。するとその視線に気付いた男は彼に、優しく話しかけた。
「初めまして、ジャニー君。私はこの店を任されている者だ。皆はマスターと呼んでくれるのだがね」
何故かその雰囲気、声、感じる波動に親近感を覚えたジャニー。しかし警戒心の強い彼はすぐには心を、開かない。
「何故? あんたも俺の名を知っているんだ」
そう、会いに来たと言ったオニキスもそうだが何故、自分の存在がこの者たちに知られているのか? 気味が悪かったのである。
「はっは。確かにそうだね、疑念を持たれても無理はない」
「あぁ、違いないな」
二人は心配しないでくれと、ジャニーに笑いかける。
「まぁまぁ、立ったままでは何ですし。料理も準備出来ているので、少し食事をしてから話をしようじゃあないですか」
どうぞお掛け下さいと席へ座るよう、促される。しかしジャニーは納得のいかぬ顔でマスターの目を、じっと見ていた。
「……」
「ん? せっかくだ、ジャニーどうだ? 話をしようにも、腹が減っては頭も回らぬというものだぞ」
裏のない笑顔に見える二人からの優しさや親切心に触れ、戸惑うジャニー。これまでに味わった事のない恥ずかしいような気持ち、そして心をくすぐられるような思いを感じながら目線を外し黙って、頷いた。
――コクッ。
「はは、よし! 決まりだ。あぁ~良い香りだ……私はちょうど腹をすかしていたところだったのでな」
オニキスは準備された出来立てのご馳走を目の前にとても喜び、一息つく。
「では食事の前に、私の名だけはお伝えしておきましょうかな」
「え、あぁ。どっちでも」
軽く答えたジャニーの言葉にマスターと呼ばれているその男は、再び厳しい視線になる。丁寧に話すその様は重厚な雰囲気を、作り出していくのであった。
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