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64.地下 +

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 表の通りからは全く想像がつかないほどの賑わい、まるで隠れ処のような場所だった。ジャニーは物珍しい顔で店内を見ながらオニキスの後を、ついて行く。

「……」

 オニキスは後ろを振り返る事なくまた何の言葉も発せずに店の奥まで、ぐんぐんと進む。その後ろをジャニーは少し怪訝けげんな表情と未だ、出会って間もないオニキスの事を信じきれない不信感から鋭い目つきでその背中から距離を置き、歩いていた。

「わぁーハッハッハ」
「明日も仕事かい?」
「最近はお陰様で身体の調子が良くてな!」

 楽しそうに聞こえてくる、たくさんの声。
(こいつらは何故、そんな普通に話してるんだ)

 ジャニーは不思議で仕方がなかった。何処を歩いても変わらず様々な種族の者たちが一緒になり、盛り上がっているからだ。

 するとすれ違いざま誰かが、声を掛けてきた。
「よぉー久しゅう、ベルさんじゃあないか!!」
「やぁ、久しぶりだね。元気にしてたかい?」

 ここまで黙って歩き続けていたオニキスであったがどうも周りの者たちを、避けていたわけではないらしい。話し掛けられれば優しい笑顔で答え、相手の体調を随分と気遣っていた。

「えぇ、お陰様で……っと。客人ですかぃ?」
 ジャニーの存在に気付きそう言うと、その者はにっこりと笑い「初めまして、ようこそ!!」と、挨拶をする。

「……」
「おやおや、ははは。これは愛想が悪くてすまない。まだこの男には、コードもなくてな……勘弁してやってくれ」
 突然の事に言葉が出てこなかった、ジャニー。それをフォローするように代わりに、オニキスが答えた。

「いや!! ベルさん気にしないでくれよ。俺らも……最初そうだったからな」
 あんたも気にしないでくれよ~と、忌避きひするかのような態度をとるジャニーにも、笑ってくれていた。

(――も……最初って)

「そうか、君の寛大な心に感謝するよ。ところで、マスターを見なかったかい?」

 オニキスとその者は見るからに、種族が違う。しかし二人とも、互いに別け隔てなく話していた。

「いますぜ、角の小部屋で食事を――」
「ありがとう、行ってみるよ」
 軽く手を振るその者は終始笑顔で、去っていく。

 この世界で他種族が公平な態度で仲良くし合うなど有り得ない、見た事がないジャニーは「こんな世界が」と少しずつ熱く血が流れ出すような感覚で、心が満たされ始めた。

「ジャニー、驚いているのか?」
「まぁな」
「それは良かったよ」

 この地下空間はまさに、夢の世界であった。
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