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67.鋭感 ☆

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「ふふ、そうですか。善かれ悪しかれ記憶を思い浮かべる時は、誰しもあるものです。が、しかし坊ちゃま」
 穏やかな雰囲気の中で話を聞くジャニスティであったが、エデの発した次の言葉で、表情は一変した。

「――時間を忘れる程となりますと、私も心配してしまいますがね」
「あぁ、確かに。言う通りだな」
(私とした事が、クォーツのふわふわとした可愛らしさに、心緩め過ぎたか)

 優しくも厳しいエデの視線はまさに“あの夜”と同じであった。その何でもお見通しのようなエデの言葉に気付かされたジャニスティは改めて、身の引き締まる思いである。

「さて、あまり時間もございませんので。ご依頼の御品です」
 エデが衣類の入った袋を窓越しに、手渡した。

「急ですまない……ん? 珍しい袋だな」
 まぁ、しっかりしていて良いが、と不思議そうに話すジャニスティに柔らかな声で微笑みながらエデは、答える。

「それは、マリーからだよ」
「そうか! 元気に……しているんだな」
 マリーとはエデの妻である。その袋は布製で夜な夜な届ける危険を少しでも緩和させようと周りに音が響かぬようにという、彼女の気遣いであった。

「えぇ、とても元気です。坊ちゃまに会いたがっていましたよ」
「そう……だな」
 エデの嬉しそうな言葉に再び頭をぎる“思い出”を、抑え込む。

(しっかりしろ、まだまだこれからだ)
 自分を奮起させ気持ちを切り替える。そして明日に備えるべく袋の中身を確認する、ジャニスティ。そこでまた驚く彼の心は震えるように血が巡り、温かな気持ちになっていく。

「エデ! こ、これは……?!」
 その中には自分が伝えた情報以上の、素晴らしい品物がたくさん入っていた。

「今回は時間がなかった事もありますが、マリーと選びましたのでね。気に入って頂けましたかな?」
「気に入るも何も! 素晴らしいセンスだな……しかし――」
「坊ちゃまの言わんとする事は、理解しております」
「あぁ……それがな」

 不安気なジャニスティの顔を見たエデは再び微笑むと、話を続ける。

「あの子はレヴ族、だったのではないですか?」
「――?!」
(まだその事は、話していないはずだが)

「お聞きした情報から女の子の方がよろしいかと思いまして、そちらで準備しましたが」
「待て、待ってくれ! エデ、何故知っている?」

 そこまで聞いたジャニスティは一瞬、怪訝けげんな顔をし言い返す。しかしエデは全く動じずに想定内だと言わんばかりで、表情一つ変えず理由を述べ始めた。
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