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77.真実

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 静かにソファに座るオニキスは正面に腰掛け優しい眼差しで真っ直ぐにジャニスティの事を、見つめている。

「……オニキス。やはり貴方相手に、この違和感は隠せず、だな」
(しかし、たとえ受け入れられなかったとしても、真実を話す)

「いやいや! ジャニー、それは私の事を買い被り過ぎというものだよ」
 何も分かっちゃいないさと、右手を軽く振り笑う彼の表情には物柔らかな性格が、垣間見える。

「そう言ってもらえると、気が楽になる」
 オニキスの温かな視線から沁み入ってくるのは、余裕と包容力。そして信頼する気持ちと安心感は彼の全身から滲み出る、ふところの深さにあった。

 それをジャニスティは出会った頃から大きく、強く、感じているのだ。

「はっは、そんなに重く考えるな、ジャニー。気負わず話してみるといいさ」
「あぁ、分かった」

 それから浅い深呼吸を一つすると落ち着いた様子で、話し始めるジャニスティ。流暢に淡々と口から発せられる言葉の数々は一瞬たりとも詰まる事はない。

 まるで水が流れるように滑らかで穏やかな雰囲気だ。
 その理由はオニキスの座る場所にもある。

『正面に腰掛ける』
(忙しい中、俺なんかの話に本気の姿勢で向き合い、聞いてくれるんだな)

――有難い。オニキスには、心の底から感謝している。

 普通であれば目の前に座られると緊張で話す事もままならなくなりそうだがジャニスティの思いは、違っていた。

 話される内容、クォーツを大雨の中救助した事やその後どのように処置し治療(治癒魔法)を施したか。自分がサンヴァル種族として出来うる最後の手段を使い助けた代償と、今後予想されるリスクまで。

 簡潔にしかし詳細に状況説明をしたジャニスティは、オニキスの顔を再度、うかがった。

「……なるほど」
 その言葉からしばらくの間、沈黙が続く。

 この時クォーツにはまだレヴシャルメの屋敷が襲われた事件との関連性や種族間の話をしていなかったジャニスティはその辺りの内容を、省いていた。

 そして――。
「話は理解した。そうだな……ジャニー、一つだけ質問をさせてくれるかい?」
「ん、あ、あぁ。何でも……聞いてくれ」
 返事を戸惑うジャニスティ、実は話せなかった事があったのだ。

(アメジストお嬢様ではなく、私が助けると言ったことにするべきだろう)
 そう考え、発見した者が誰なのか? その経緯については触れていなかったのだ。

「そんなに怖がるな」
 しかし瞬間オニキスが向けた瞳は信じられない程、穏やかであった。
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