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131.洋服
しおりを挟むゆったりとした空気の中で話をしながらも急ぎ歩いていたアメジストとお手伝いのラルミは気が付くと部屋の前へ、到着。
カチャ……キィー。
いつもと変わらないはずの自室の扉が今はなぜか少し、軽く感じる。それくらいにアメジストの心はラルミのおかげで安らぎ、落ち着いていた。
「お嬢様、お洋服はこちらにご用意してございます」
「ありがとう、ラルミ」
朝の一件で出かけるまでの時間が迫るアメジストは笑顔で答えながらも急いで学校へ行くための、準備を始める。しかし「何事も早めに準備を」という父オニキスの教えを守ってきた彼女にとって、そう時間のかかることではなかった。
支度を終わらせたアメジストは壁掛け時計に目をやり時間を確認すると再びラルミに笑いかけ、話しかける。
「このお洋服、ラルミが選んでくれたの?」
「えっ、あぁう、ハイッ!!」
それから不安げな様子で「お気に召さなかったでしょうか」と言いつつも意識の高いラルミは自分の仕事をきっちり、遂行する。お嬢様出発前のお辞儀をしながら部屋の扉を素早く、開けていた。
すると――フワッ……くるくる!
「あ、え、お嬢様?」
「うふふ、綺麗なお花柄のワンピースで、とっても楽しい気持ちになったの」
突然のことに驚き顔を上げた、ラルミ。その瞳にはにっこりと嬉しそうに頬を染めくるっとその場を回るアメジストの姿が、写る。
「お嬢様……とっても、お似合いでございます!」
「まぁ、ありがとう! ちょっぴり恥ずかしいけれど、ラルミが選んでくれたこのお洋服がとても素敵で、なんだか今日は外出するのが嬉しくなってきたわ」
特別な集まりでもない限り変化のない色柄で制服のような格好(いわゆる地味色)を自分で選び着ている、アメジスト。
しかしこの日はいつもと違う、時間。
それは普段、朝の準備に付き添うことのないラルミがいたからである。
毎朝アメジストがどのように準備をしているのか知らないラルミだったがそのようなことを気に留め臆することはなく、自身が長年お手伝いとして務めてきた経験と知識で自然と流れるように、身体は動く。そんな彼女の脳内は「大切なお嬢様が喜ぶように」という思いに、包まれていた。
そしてラルミはまるで母のような気持ちでクローゼットの中にある洋服一着一着を見極め似合う服を、選定する。それは想像通り、アメジストが着ると本当にお姫様のように美しく見え品の良さを際立たせる、ふんわりとした素敵なワンピースであった。
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