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132.恋心

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「ジャニスティ様とクォーツ様。本当に仲がよろしいのですね」
 頬を少し染めたラルミは我が事のように、嬉しい顔をする。

「そうね……」
 返事をしたアメジストの表情はとても、幸せそうだった。そんな彼女の心奥にはキュンとする温かなある想いが、ぽわりと生まれていた。

「お嬢……さ、ま? 申し訳ありません。私何か、お気に障るようなことを――」

 急に黙りこくってしまった自分の様子に慌て始めたラルミの言葉。その声にハッと気付いたアメジストはうふふと笑み、気持ちを話す。

「違うの。出会って十年以上になるジャニスと、出会ったばかりの可愛い妹……そう、私にとっても妹となってくれたクォーツの事が、すでに私の中で大切な存在だなぁって」

――なぜかしら? ジャニスとクォーツが二人で仲良くしている姿を見ると心が幸せで、とても温かい気持ちになるの。

「愛に溢れた、本当にとても素敵な兄妹だと思うわ」

 光りを放つかのようなキラキラと輝く笑顔でそう答えたアメジストは再び、壁掛け時計へ目を向ける。

「あっ! そろそろ行かなくちゃ」
「はい、お嬢様。迎えの馬車も着く頃かと……きっと、ジャニスティ様もお待ちでございますよ」

「えぇ、そうね。うふふ、ジャニスは時間にいつもぴったりだから……このお洋服、気に入っ――」

(やだわ私……どうして、ジャニスの事を!?)

 ハッと自分の言葉の意味に気付いたアメジストは恥ずかしそうに両手で口を、抑えた。ドキドキときめく信じられないような感情に、彼女は動揺を隠しきれない。

「お嬢様……」
(もしや、ジャニスティ様の事を)
 その瞬間アメジスト自身も気付いていないであろうある“想い”を察したラルミはそれ以上言葉をかけたり、話すこともなくただただ微笑んだ。

「な、何でもないの! 行きましょう」
 恥ずかしそうにスカートを掴む、アメジスト。

 ラルミが選んでくれた可愛いワンピースに腕を通した瞬間からわくわくとした高揚感と喜びを、胸に抱いていた。そのいつもと違う自分の姿を「ジャニスに見てもらいたい」と無意識に、思っていたのである。

「はい、承知しました」
 ふふふ、と返事をしたラルミもまた幸せそうに笑みを溢す。

「あ、そうだわ」
(可愛いワンピース……クォーツにも着せてあげたい)

 ふとそんなことを思いながらご機嫌なアメジストは浮き立つ気持ちを、抑える。部屋を出ると両足を揃え立ち止まり目を瞑る。そして胸に手を当てると深い深呼吸一つ、元気よく歩き出した。
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