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134.親心
しおりを挟むジャニスティとエデ。二人の間に流れる穏やかな空気を感じたクォーツは瞬時に――敵ではない、と理解する。そして朝オニキスの前で披露した素晴らしい挨拶を、深いお辞儀をつけやって見せた。
「お初にお目にかかります。私ジャニーの妹、クォーツと申します」
「おぉ、なんと可愛らしい! 初めまして、クォーツお嬢様」
表情を変えることなく答えたエデであったが内心、驚いていた。それもそのはず――あの夜、大雨に濡れ息も絶え絶え命の灯火が消えかかっていたあの小さな子が、ほんの数十時間という短い間でこんなに立派な立ち振舞いが出来るまでに回復していたのだ。
(なんと、見違える程の成長と美しいお姿だろう)
それからエデはクォーツの発した言葉と行動に一驚を喫し、表情を崩す。
「まぁ! 可愛いと言って下さるのですか!?」
エデの褒め言葉に無邪気に喜ぶクォーツは満面の笑みだ。そしてジャニスティに「わぁ~い」と嬉しさのあまりに、抱きつく。
「ぅおっと! 危ないぞ、クォーツ。あぁ、良かったな」
「えっへへ~♪ ありがとうございます、えっとえっと“えで”さま……?」
「――ッ!?」
(まさか、この子は今私の名を、呼んだのか)
「クォーツ! すごいじゃないか」
「エッ? だってお兄様が、お名前を言っていたのです」
「そうか、よく聞いて……覚えていたな。クォーツ、本当に利口だよ」
「うきゃふぅ! あ、えっと~えへへ、嬉しいのです」
舞い上がったクォーツの口からは思わずレヴ族の言葉が出てしまう。しかしそんな声にも気付かずただ驚いた面持ちのエデは様々な思いが、交錯する。
すると後ろから明るく楽しそうな声が聞こえてきた。
「お待たせしました――あら! クォーツ!!」
「おねぇさまぁー♪」
「申し訳ございません、お嬢様。クォーツがどうしても行くと聞かないので」
眉を下げ困り顔でアメジストへ話すジャニスティであったが、すぐに優しい笑みを浮かべ、クォーツを抱き上げる。
「ねぇ、お姉様。馬車だけ……」
「うふふ、えぇ! 私も嬉しいわ、クォーツ」
「……」
アメジストとクォーツ、そしてジャニスティのやり取りを無言で見つめていたエデの瞳は、潤む。その奥に映し出されたのは昔の記憶――アメジストの幼少期姿が、頭を過ぎっていた。
――アメジストお嬢様が、幸せとなれれば。
それはずっとベルメルシア家で御者を務めるエデだからこそ感じた“心”。
幸せな光景に目を細め見つめるエデの胸中は、まるで親心のようであった。
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