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269.正直
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アメジストを産み数時間後にはこの世を去ったという母、ベリル。当然のことながら母娘が言葉を交わした事はない。そんなアメジストが成長するにつれ、顔がベリルに似てきたとしても動作までを真似ることは出来ないはずだが、しかし。
――髪色は違っても、ベリルとアメジストはやはり母娘。会ったことが無くとも自然な仕草や表情までもが、遺伝するものなのだろうか。
そうオニキスはふと、思った。
◆
オニキスとアメジストは理解し合い信頼関係の築けた、父娘である。今日この貴重な時間、しっかり向き合い話そうという父の強い思いがアメジストの心へひしひしと伝わってきていた。
緊張と動揺で胸がドキドキと音を立てるかのようだったアメジストもそれに応えたいと動揺を落ち着けしっかりとした口調で、話し始める。
「お父様! 今日は私も、自分の胸にしまい込んでいたことを、ありのままに。正直にお話します」
「そう無理をせずともよいのだよ。アメジスト」
変わらぬ父の優しい眼差しと『無理をするな』という娘を気遣う言葉は彼女に安心感を、与える。しかし今日のアメジストは強い意思を持ち、普段オニキスの前では言えずにいる気持ちも表に出せる程にいつもの彼女とは違った様子を魅せた。
(あの日起こった出来事を、お話しなきゃ! きっとジャニスティは理解してくれるわ)
それからすぐ艶のある桃色の唇にキュッと力を入れ凛とした姿勢で「大丈夫です」と答え、話を続ける。
「お父様が仰る、そのベルメルシア家の屋敷にある“秘密”という場所。そこと同じなのかは分かりませんが。私は昨日、離れにある書庫で、隠し扉を見つけました」
「ん…………そうか」
ゆっくりと目を瞑り静かに頷いてから数秒後、一言だけ小さく声を発した父の口元は緩み微笑んでいるように、見えた。
(お父様、何だか嬉しそう? 穏やかに、笑むお顔をなさっているみたいで)
その柔らかな彼の表情は安堵にも、感じられた。
静寂の中、互いに様々な心情を交錯させる。
そしてしばらくして沈黙を破ったのは父、オニキスの声だ。
「昼食後に、そのラルミというお手伝いの手を取り笑っていたお前の力、手のひらに浮かんでいたあの美しき癒しの光に。気付けば私は、内心ホッと胸を撫でおろしていたのだ」
――それはまるで、自分が無意識のうちに愛娘の魔力開花を待っていたかのように。
愛娘の真摯に向き合う姿勢に彼もまた考えだけでなく自分の心が持つ感情を正直に、言うのであった。
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