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359.憂懼
しおりを挟む「はい、旦那様……」
(気になる言葉? 何だろうか)
ジャニスティの身体に緊張が走る。しかしオニキスはいつものような清々しい笑みを向け、質問してきた。
「あぁ、さっきジャニスがベリルの枕元にあった花のことで、一体いつどのようにそこへ置かれたか、推察してくれていただろう? それが『ベリルの希望で信頼の置ける何者かに依頼し、用意をさせたのではないか』という話についてなのだが」
「え、えぇ。しかし本当にそれは、私の想像で……」
「それでも、構わんのだ。ベリルが目覚める可能性への手掛かりが欲しい」
戸惑った表情を見せる彼へオニキスは悲し気にしかし強い意思を感じさせる声で返答を、促す。
その想いをひしひしと感じ取ったジャニスティに心の迷いはなくなる。
(たとえこれが夢の話で……皆の願望に終わったとしても――)
「まず、旦那様があれだけ鮮やかな色と、存在感のある花に気付かれないとは思えない。だとすれば、やはり産後すぐに置かれたのではなく、ベリル様が息を引き取られるまでの短時間で、マリーゴールドは枕元に置かれたものと考えます。が……先程も申し上げた通り、スピナ様が持ってきたとはどうしても思えない」
途中、オニキスの顔色を窺うようにジャニスティは一呼吸。その緊張が痛いほど伝わってきたエデは彼の心を落ち着かせ頭の中がまとまるよう、口を開く。
「なるほど。スピナ様の件は判りませぬが、産後のベリル様がご自分で立ち上がり、ましてや歩き回ることなどは出来なかったでしょう。それで、坊ちゃまは第三者の存在をご想像なさったのですかな?」
「そうだ。もし本当にベリル様が花言葉を知って思いを乗せ、何かそこに意味を残していたのだとしたら……」
カラ~……ン――カラン。
数分の沈黙。
グラスの水に融け揺れた氷は彼らの気分とは裏腹で楽しそうに、音を鳴らす。そのグラスを伝う水滴が自身の中で流れる汗のようだとジャニスティは感じながらも、沈黙を破る。
「旦那様。ベリル様の“永眠”が、そのご本人が持つ強い御力で創られたものであるとすれば、必ず協力者がいると私は思うのです」
「協力者?」
「はい。ご友人スピナ様を信じる心を持ちながらも、日々の挙動をこれまでの彼女と鑑み、好ましくない事態になる事を心配なさっていた。だから、旦那様に託すようにお話をされたのでしょう。そして――」
鋭い眼差しでジャニスティの話に耳を傾けるオニキスとエデは様々な思考を、巡らせていた。
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