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第7話 魔物に与えられた名前
しおりを挟む魔王に絶え間ない言葉の攻撃を浴びせ、謁見の間を後にした私は黒翼に案内されるように廊下を歩いていた。
私たち3人のために用意された部屋に向かう道すがら、魔王城についての説明を黒翼から受ける。
「この魔王城は、当代の魔王ルシフェル様がお造りになったものでございます」
彼の説明によると、このお城はさっきの俺様系魔王が作ったというわけである。
おそらく、建造物を生成する魔法のようなものがあるのかもしれない。
廊下には赤い絨毯が敷かれており、大きな魔物が行きかう中央を私たちも歩いていた。
象のようなサイズ感の魔物やリスのように小さい魔物まで、私たちを見つけると畏まった様子で道を譲ってくれる。
「あら、ごめんなさい皆さん。道を譲ってくれてありがとね!」
謁見の間に敷き詰められていた「如何にも魔物」といった強そうな見た目ではなく、可愛い動物のような比較的弱そうな魔物たちには気楽に接する私。
小型犬みたいな魔物や小鳥の集団みたいな動物っぽい連中とは仲良くなれそうだった。
二足歩行で歩く犬たちは制服のようなものを着ていて、私と同じようなサイズ感なのでなんだか親近感が沸く。
驚くことに、すれ違う魔物の最後尾にいるふさふさした白い毛の犬が「し、失礼しました!」と言葉を操っていた。
「魔物って喋れるのね、驚いたわ」
前世でもこの世界でも魔物など初めて見た私は、魔物が人語を操ることに驚く。
それに対して、「私も魔王様も言葉を発しているではないですか」と黒翼は少し呆れたように零す。
確かに黒翼や魔王も魔物ではあるが、明らかに人型なので人間感がなんとなくあったのである。
半歩ほど後ろを歩くアリシアとガウェインも「たしかに……」とうなずいているので、私の認識は間違っていなかったようであった。
「ちなみに、魔王様みたいに魔物にも名前がきちんとありますよ」
黒翼の魔物が「そういえば、私の自己紹介もまだでしたね」と思い出したかのように言う。
彼の名前は「アドラメレク」というらしい。
なんだか呼びづらかったので、私が「アドルでいいかしら?」と彼に問うと「アドル……」と嬉しそうにほほ笑んでいた。
どうやら、魔物同士ではあまり愛称で呼ぶことはないらしい。
そのためか、私にあだ名で呼ばれたアドラメレクは久しぶりに喜びを感じたということだった。
いや、もっと日々のあれこれに喜びを感じろよと私は思わざるを得ない。
「アドル、さっきすれ違ったサモエドみたいな白い犬はなんて名前なのかしら?」
早速アドラメレクをあだ名で呼びつけた私。
少しうれしそうな様子で「もちろんありますよメルヴィナ様」とアドルは答える。
アリシアも「あのワンコさんは可愛らしかったですね!お嬢様!」とニコニコしていた。
愛称で呼ばれているアドルを見て、少し羨ましそうにしているガウェインのことは気にしない。
「さっきの彼の名前はたしか「ビッケ」というはずです」
アドルによると、愛らしい白いモフモフは「ビッケ」という名前らしい。
軽く振り返ってみると、犬の連中はまだ声の届きそうな範囲を歩いていた。
そこで私は早速一つ試してみることにする。
「ビッケーーー!!」
私は前振りなく後ろを振り返り、大きな声で白い犬の名前を叫んだのだった。
一緒に歩いていたアドル達は驚いて何事かと私の方を見る。
私に名前を叫ばれたビッケはもちろん、廊下を行きかっていた多くの魔物たちが足を止めてこちらに注目した。
「お!ちゃんと振り返ったわ!!」
ビッケという名前の白い犬が「僕何かしました!?」と私の方を振り向きすごく驚いている。
そして、犬集団の他の犬達に「お前なにやらかしたんだ!!」と問い詰められるビッケ。
なんだかその様子が面白くて、私は「名前を呼んでみただけだから気にしないで!!」と言って手を振る。
「お嬢様、いきなり叫ばれたので何事かと思いました」
そう言ってガウェインは「ふぅ」と肩を下ろす。
私たちを先導するアドルは「臣下の者たちも、上の者に名前を覚えてもらうことは名誉なことですよ」と私に言う。
そうか、魔物たちも基本的には「人間」と変わらないのかと私は思った。
魔物の名前を叫んだことによって、より一層注目されながら私たちは今晩泊まる部屋へと案内される。
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