36 / 91
第30話 歩行術の効果
しおりを挟む
シグマ隊長によると、ガウェインが移動で必要以上に疲れるのは「重心」と「魔力」をコントロールできていないかららしい。
彼の話によると、「歩行術」には接近戦闘による「肉弾戦」とはまた違う技術が必要だという。
それは、戦争のように長期的で広域的な戦いを強いられることのない「現代の魔王軍」では訓練されていない技であった。
なのでシグマは、1時間に1回10分程度の休憩を兼ねて「歩行術」についてガウェインに指南するという。
「明日の夜明けまでに習得できなかったら、グレイナル山脈を越えることはできない」
その場合は、ガウェインには城へ引き返してもらうと言うシグマ。
横に立つニャルラも「さすがに歩行術もままならないうちは山越えはむりだニャ」と首を振って頷いていた。
インドア派の私は何が何だかわからないのだが、ガウェインも「やります」と覚悟を決めているようなので、おそらく必要なことなのだろう。
シグマとニャルラによる講義が10分程度続き、私はその様子を近くの石の上に腰かけて見ていた。
休憩もかねてトレーニングとシグマは言っていたが、ガウェインの様子を見てると更なる負荷となっているような気がした。
しかし、シグマの言うように「歩行術」とやらを習得できれば肉体疲労を大幅に軽減できるのであれば、そのうち楽になるのかもしれない。
いずれにせよ、歩行術が習得できない限り物理的にグレイナル山脈の踏破は厳しいということなので訓練するしかないのだが。
----
シグマ親子による「歩行術」の授業を休憩ごとに挟みながら、私たちはグレイナル山脈のふもとを目指して移動していた。
だんだんと日も暮れ始めており、既に魔王城出発から5回ほど休憩をはさんでいる。
休憩ごとに訓練を受けているガウェインであったが、当初よりも余裕そうに森の中を駆けていた。
シグマの腕の中にいるだけの私は良く分かるのだが、明らかに休憩ごとに移動速度が上がっている。
ガウェインが歩行術を身に着け始めたことにより、シグマ達がスピードを落とす必要がなくなってきたのかもしれない。
「歩行術ってすごいのね、ガウェインがきちんとついてこれてるわ」
魔物の戦闘技術である「歩行術」の効果に驚いた私は、シグマの腕の中で声を漏らす。
それを受けて、遠慮なしのスピードで爆走するシグマは「この分なら山越えも大丈夫そうだ」とガウェインの歩行術を褒める。
ニコニコとガウェインのほうを振りかえって「恋をすると人も魔物も頑張れるんだニャ」と言うニャルラ。
魔王軍内に広く知られる噂として「ガウェインは魔王妃様に惚れている」というものがある。
ニャルラも例にもれずこの噂を信じているらしく、そういうわけでニヤニヤと後ろを振り返るのであった。
「いやいや、アリシアに惚れるならわかるけどさ」
ニャルラが口にした噂について私は「ないでしょ」と両断した。
おそらく、ガウェインの私に対する感情は「小さい妹」みたいなものだと思う。
時々ガウェインの見せる気恥ずかしさみたいなものも「主人」に対して「兄妹」のような関係性を感じるバツの悪さみたいなものだろう。
私たちの会話が後ろにも聞こえていたのか、ガウェインは魔力が乱れて少しバランスを崩すのだった。
「そういう話は夜にでもしとけ、そろそろ野営の準備をするぞ」
娘が年頃の女の子のように恋愛話を私とする様子を見てシグマが言う。
あたりも随分と暗くなってきたところで、キャンプをして一晩越すというわけである。
途中からハイペースで進んできたこともあり、私たち一行はすでにグレイナル山脈のふもとまでたどり着いていた。
この分だと明日は山越えになるだろう。
----
「この山を越えたら、いよいよ邪神教の魔物たちがかつて住んでいたエリアに入る」
私と一緒に火をおこしていたシグマが言う。
火おこしの様子を見ていた私は「いよいよってわけね」と緊張感を感じた。
ここから先は邪神教のテリトリーかもしれないと思うと、なんだか急に不安になってくる。
今までは自分に好意的な魔物ばかりであったが、敵対心を持った魔物とも遭遇する可能性が出てくるというわけだ。
少しうつむき気味に縮こまった私は、自分の両足が小さく震えていることに気づく。
「大丈夫だ魔王妃殿、儂とニャルラ、それにガウェインがついている」
我ら3人がその辺の魔物に後れを取るようなことは無いというシグマ。
私は頼れる虎の魔物に「そうよね」とほほ笑んで答える。
私のために頑張ってくれるシグマやニャルラのためにも、立派な魔王妃になって魔王軍を支えていかなくちゃと私は思うのだった。
彼の話によると、「歩行術」には接近戦闘による「肉弾戦」とはまた違う技術が必要だという。
それは、戦争のように長期的で広域的な戦いを強いられることのない「現代の魔王軍」では訓練されていない技であった。
なのでシグマは、1時間に1回10分程度の休憩を兼ねて「歩行術」についてガウェインに指南するという。
「明日の夜明けまでに習得できなかったら、グレイナル山脈を越えることはできない」
その場合は、ガウェインには城へ引き返してもらうと言うシグマ。
横に立つニャルラも「さすがに歩行術もままならないうちは山越えはむりだニャ」と首を振って頷いていた。
インドア派の私は何が何だかわからないのだが、ガウェインも「やります」と覚悟を決めているようなので、おそらく必要なことなのだろう。
シグマとニャルラによる講義が10分程度続き、私はその様子を近くの石の上に腰かけて見ていた。
休憩もかねてトレーニングとシグマは言っていたが、ガウェインの様子を見てると更なる負荷となっているような気がした。
しかし、シグマの言うように「歩行術」とやらを習得できれば肉体疲労を大幅に軽減できるのであれば、そのうち楽になるのかもしれない。
いずれにせよ、歩行術が習得できない限り物理的にグレイナル山脈の踏破は厳しいということなので訓練するしかないのだが。
----
シグマ親子による「歩行術」の授業を休憩ごとに挟みながら、私たちはグレイナル山脈のふもとを目指して移動していた。
だんだんと日も暮れ始めており、既に魔王城出発から5回ほど休憩をはさんでいる。
休憩ごとに訓練を受けているガウェインであったが、当初よりも余裕そうに森の中を駆けていた。
シグマの腕の中にいるだけの私は良く分かるのだが、明らかに休憩ごとに移動速度が上がっている。
ガウェインが歩行術を身に着け始めたことにより、シグマ達がスピードを落とす必要がなくなってきたのかもしれない。
「歩行術ってすごいのね、ガウェインがきちんとついてこれてるわ」
魔物の戦闘技術である「歩行術」の効果に驚いた私は、シグマの腕の中で声を漏らす。
それを受けて、遠慮なしのスピードで爆走するシグマは「この分なら山越えも大丈夫そうだ」とガウェインの歩行術を褒める。
ニコニコとガウェインのほうを振りかえって「恋をすると人も魔物も頑張れるんだニャ」と言うニャルラ。
魔王軍内に広く知られる噂として「ガウェインは魔王妃様に惚れている」というものがある。
ニャルラも例にもれずこの噂を信じているらしく、そういうわけでニヤニヤと後ろを振り返るのであった。
「いやいや、アリシアに惚れるならわかるけどさ」
ニャルラが口にした噂について私は「ないでしょ」と両断した。
おそらく、ガウェインの私に対する感情は「小さい妹」みたいなものだと思う。
時々ガウェインの見せる気恥ずかしさみたいなものも「主人」に対して「兄妹」のような関係性を感じるバツの悪さみたいなものだろう。
私たちの会話が後ろにも聞こえていたのか、ガウェインは魔力が乱れて少しバランスを崩すのだった。
「そういう話は夜にでもしとけ、そろそろ野営の準備をするぞ」
娘が年頃の女の子のように恋愛話を私とする様子を見てシグマが言う。
あたりも随分と暗くなってきたところで、キャンプをして一晩越すというわけである。
途中からハイペースで進んできたこともあり、私たち一行はすでにグレイナル山脈のふもとまでたどり着いていた。
この分だと明日は山越えになるだろう。
----
「この山を越えたら、いよいよ邪神教の魔物たちがかつて住んでいたエリアに入る」
私と一緒に火をおこしていたシグマが言う。
火おこしの様子を見ていた私は「いよいよってわけね」と緊張感を感じた。
ここから先は邪神教のテリトリーかもしれないと思うと、なんだか急に不安になってくる。
今までは自分に好意的な魔物ばかりであったが、敵対心を持った魔物とも遭遇する可能性が出てくるというわけだ。
少しうつむき気味に縮こまった私は、自分の両足が小さく震えていることに気づく。
「大丈夫だ魔王妃殿、儂とニャルラ、それにガウェインがついている」
我ら3人がその辺の魔物に後れを取るようなことは無いというシグマ。
私は頼れる虎の魔物に「そうよね」とほほ笑んで答える。
私のために頑張ってくれるシグマやニャルラのためにも、立派な魔王妃になって魔王軍を支えていかなくちゃと私は思うのだった。
0
あなたにおすすめの小説
男として育てられた公爵家の令嬢は聖女の侍女として第2の人生を歩み始めましたー友人経由で何故か帝国の王子にアプローチされておりますー
高井繭来
恋愛
ルーシュ・サウザント・ドラゴニアは公爵家の第8子だった。
武で名をはせたドラゴニア家には上に7人の姉。
待望の男児が生まれなかったドラゴニア公爵はルーシュを男児として育てる。
男として育てられたルーシュは剣と魔法の才能を発揮し12歳にして国家聖騎士団の一員となり功績を積むが、父より届いた手紙で全てを失う。
『待望の男児が生まれたから明日から女として生きろ』
こうしてルーシュは神殿仕えの身となって聖女の侍女となった。
ウザい聖女に絡まれながらもルーシュは今日も侍女としても務めを果たす。
侍女として働く一方で魔獣の王都侵入を防いだり、曲者の親友が家出してきたせいで何故か大帝国の王子に見初められたりと第2の人生は波乱万丈だった。
※聖女の力を姉に譲渡し国を出て行った元聖女は実は賢者でした~隣国の後宮で自重せずに生きていこうと思います~とリンクしています。
※ちょっぴり題名変えました。
カテゴリ【恋愛】に変えました。
ファンタジーだけど恋愛が中心になってきてしまったので(;^ω^)
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…
ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。
王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。
それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。
貧しかった少女は番に愛されそして……え?
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
虐げられていた次期公爵の四歳児の契約母になります!~幼子を幸せにしたいのに、未来の旦那様である王太子が私を溺愛してきます~
八重
恋愛
伯爵令嬢フローラは、公爵令息ディーターの婚約者。
しかし、そんな日々の裏で心を痛めていることが一つあった。
それはディーターの異母弟、四歳のルイトが兄に虐げられていること。
幼い彼を救いたいと思った彼女は、「ある計画」の準備を進めることにする。
それは、ルイトを救い出すための唯一の方法──。
そんな時、フローラはディーターから突然婚約破棄される。
婚約破棄宣言を受けた彼女は「今しかない」と計画を実行した。
彼女の計画、それは自らが代理母となること。
だが、この代理母には国との間で結ばれた「ある契約」が存在して……。
こうして始まったフローラの代理母としての生活。
しかし、ルイトの無邪気な笑顔と可愛さが、フローラの苦労を温かい喜びに変えていく。
さらに、見目麗しいながら策士として有名な第一王子ヴィルが、フローラに興味を持ち始めて……。
ほのぼの心温まる、子育て溺愛ストーリーです。
※ヒロインが序盤くじけがちな部分ありますが、それをバネに強くなります
※「小説家になろう」が先行公開です(第二章開始しました)
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
【完結】愛されないと知った時、私は
yanako
恋愛
私は聞いてしまった。
彼の本心を。
私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。
父が私の結婚相手を見つけてきた。
隣の領地の次男の彼。
幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。
そう、思っていたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる