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第36話 襲い掛かる刺客
しおりを挟むシグマが今度の魔物は少し強いと言った。
それを受けて、ガウェインやニャルラが少し気を引き締める。
今回の戦闘では少し危険が伴うということで、私も地上に降ろされるのだった。
「来るぞ……」
静かにつぶやくシグマの声に、私たちはゴクリと息をのむ。
しかし、敵がいるといわれても全くピンとこない私は彼らの後ろに立ち尽くすばかりであった。
前方の茂みから何か勢いよく飛び出したと思ったら、ガウェインがそれを防ぐように立ちはだかる。
その瞬間、私の隣を何かがものすごい勢いで通過した。
「えっ……?」
後ろから風を感じて振り返る私の目の前には、背後から迫っていた魔物を地面に埋め込んだシグマの姿があった。
何を言っているのか自分でも良く分からないが、とにかく背後の魔物はシグマが処理をしたということである。
敵の息の根を止めたシグマは「やはり、魔王妃殿を狙っていたのう」と独り言つ。
シグマの一言を聞き逃さなかった私は、自分が魔物に狙われていたという事実に戦慄する。
「大丈夫だ魔王妃殿、儂らが守るから安心しろ」
ワタアメを抱えて小さく震える私の頭をぐしゃぐしゃと撫でるシグマ。
そんな彼の仕草に、なんだかお父さんのような温かみを感じる私であった。
シグマに守られながら、私はガウェインとニャルラが協力して前方の魔物を退治しているのを見ていた。
背後から襲ってきた魔物と同様に、人狼の魔物がガウェイン達と戦闘している。
人狼のパワフルな打撃をバックラーのような受け流し用の盾でいなしていくガウェイン。
そうして生まれた隙をついてニャルラが人狼に容赦ない蹴りを浴びせていく。
「少し離れるが大丈夫だ」
私の頭上でシグマが声を出したのち、彼はすごい勢いで前方へと跳躍した。
その次の瞬間、ガウェイン達と戦闘中であった人狼が盾を蹴って後ろへと逃げだす。
いきなり敵が戦闘離脱して一瞬呆気にとられたガウェイン達であったが、すでに跳躍していたシグマが人狼を上から押さえつける。
人狼の関節を外したのか、シグマは獲物を拘束した状態でこちらへ戻ってきた。
----
おそらく邪神教の魔物である人狼を捕まえた私たちは、邪神教の情報を聞き出すために尋問することになった。
こんな時のためというわけではないが、一応拷問の類についても本で学んだ私は「ついに私の出番!?」とドキドキする。
「大丈夫ニャ、尋問は私がやるニャ」
緊張した面持ちの私にニコニコしながら話すニャルラ。
人狼から情報を聞き出すのは自分がやるから、魔王妃様は指示をくれというニャルラであった。
なんだか、ニコニコしながら拷問の準備を始めている彼女が怖い。
もともと軍の騎士団にいたガウェインは意外にもこういったことに慣れているらしく「自分も手伝います」とニャルラの準備を助けていた。
だが、そんな私たちの思惑とは裏腹に、拘束されている人狼が動きを見せる。
「なあ、あんたら魔王軍の魔物だろ?」
関節が外された上での拘束状態で逃げ出すことができない魔物は、観念したように私たちに話しかけてきた。
この人狼は、私たちが魔王軍であることを知ったうえで襲ってきたという。
そして、やはり彼は「邪神教」の魔物であった。
私たち一同は、いくら捕まったからといって自分から情報をペラペラしゃべるような人狼に困惑する。
「俺がなんでこんな風に余裕そうにしてるかって?」
ニヤリと笑みを浮かべた人狼の様子に、シグマとニャルラが何かに気づいたように私の前に立ちふさがった。
一瞬何が起こったのかわからない私であるが、視界いっぱいに獣人親子の背中が見えることに気づく。
シグマ達の動きを見て気づいたガウェインも騎士剣を盾にするように構えていた。
「残念だが、フェイリス様の復活はもう止められねえ!!」
人狼の魔物が大きく空に吠えたのちに、あたり一帯をすさまじい量の光が覆う。
そして、それに付随してけたたましい爆音と砂ぼこりが私たちに襲い掛かってきた。
なんと、人狼は「自爆」したのである。
魔王軍の魔物に捕まった時は自決する覚悟で挑んできたというわけだ。
「くぅ、なんとか間に合ったな……」
全身傷だらけのシグマとニャルラが私の前で仁王立ちしていた。
ニャルラも「でもこれ、結構痛いニャ……」と爆破による傷をなめている。
剣だけでは爆風を防ぎきれなかったガウェインは後方に吹っ飛ばされていた。
地面に転がっているガウェインに気づいた私は、急いで彼のもとへと走っていく。
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