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第50話 医務室のエルフ
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瀕死のメルヴィナ達を抱えて山を越えるシグマとニャルラ。
魔物たちに構うことなくグレイナル山脈を疾走した二人は、夜も更ける頃に魔王城へと到着した。
傷だらけの身体で魔王妃とその騎士を担いで帰ってきたシグマとニャルラを見た門番は、大慌てで魔王と宰相に報告へと向かう。
城内へ駆けていく兵士たちを見つめるシグマたちも、負傷したガウェインを見てもらうためにそのままの恰好で急いで医務室へと走った。
夜の城内を歩く魔物は比較的に少なかったが、それでも廊下を急ぐシグマたちを見る魔物の目は驚愕している。
普段から戦神として知られていて目立つシグマは、この時鬼の形相で医務室へと向かっていたため、廊下を行きかう魔物たちは皆壁際でおとなしくしていた。
「ラティス!いるか!?」
シグマは医務室と書かれた巨大な扉を勢い良く開けると、中にいるはずの魔族の医者に声をかける。
彼にラティスと呼ばれた魔物は、何事かと驚いた様子で奥の方から現れた。
白衣のような服を着た長身の金髪エルフであるラティスが「おいおい、まさか魔王妃様が死んじまったのか~?」とシグマに冗談めかして言う。
それに対して「魔王妃殿は魔力酔いで気絶しているだけだ」とシグマは答えた。
問題はガウェインの方であるとニャルラが担いでいる騎士を指さし、彼の容態について説明するシグマ。
「ありゃー、これまた不思議なことになってるねえ……」
腹部に未だ氷が刺さったままのガウェインを見たラティスは、慣れた手つきで丁寧にその氷を処置していく。
ガウェインを抱えたままのニャルラは、目の前で傷口から氷柱を引き抜くラティスを見て「えっ、ここでやるのかニャ!?」と驚いた様子であった。
そして、彼女が動揺しているうちにラティスはガウェインの体内から氷の棒のようなものを除去することに成功した。
「とりあえず、デカい血管やヤバイ臓器は避けてるみたいだから、そのうち復活すると思うよ」
ガウェインの血が付いた氷柱をクルクルと手のひらの上で回しながら軽い口調で言うラティス。
その様子を見たシグマは「相変わらず手際が良いのう……」と苦笑いする。
氷柱を抜き取られたガウェインを抱えたままのニャルラは「もう終わったのかニャ……」とまたしてもラティスに驚かされるのだった。
ラティスが奥の方から看護師を呼ぶと、美人なエルフのお姉さんが何人か出てきてガウェインは病室に運ばれていく。
とりあえず一段落といったところで、シグマはラティスにガウェインがどれくらいで目を覚ますか問いかけた。
彼としても、一緒に行動した隊員であるガウェインがいつ起きるのかは気になるところである。
そして、駆けつけた時には四天王の一人がすでに去った後だったこともあり、その時の情報を聞きたいという思いもあった。
「そうだね、3日くらいしたら起きるんじゃないかね~」
そう言いながら、メルヴィナを抱えるシグマの方へと歩くラティス。
シグマの抱えるメルヴィナの手を握り、何やら口ずさむラティスを見たニャルラは「もしかして、魔法の詠唱かニャ!?」と驚く。
彼女の予想は当たったようで、治療魔法を詠唱したラティスは「魔力酔いを醒ます魔法をかけた」とニャルラの方をみてほほ笑む。
それを聞いたニャルラは「そんな便利な魔法があるのかニャ……」と困惑するのだった。
ついでに、ニャルラが一緒に持って帰ってきたワタアメにもラティスは治療魔法をかける。
すると、気持ちよさそうに「もきゅ~」と寝言を漏らすワタアメであった。
「ラティス先生って意外とすごかったんだニャ……」
間近でラティスの医療行為を見たニャルラは、軽い感じの見た目の彼が実はすごい奴だったことに感心した。
それを聞いたシグマは「こいつは大戦時代から医療の腕だけは一流だぞ」とラティスについて評価する。
シグマから医者としてのスキルを褒められたラティスは「だけ?俺って戦闘も頭脳も一流だよ?」と手をヒラヒラさせていた。
「……ん……ここは…………?」
シグマたちが世間話をしていると、まだシグマに抱えられたままのメルヴィナが目を覚ます。
それに気づいたシグマは「魔王城の医務室だ」と答えて、彼女を床に下ろした。
両足で地面に立つメルヴィナは周囲を見渡してギョッとした顔をする。
「ガウェイン!ガウェインは!?」
メルヴィナは鬼気迫る表情で声を荒げる。
癇癪を起した子供をあやすように「大丈夫だよ魔王妃様、騎士君なら俺が治療しておいたから」と小さな魔王妃の頭を優しくなでるラティス。
その様子は優しいお兄ちゃんといった様子であったが、ラティスと初対面のメルヴィナは「えっ?誰?」とさらに困惑するのだった。
そんな微妙な空気の中、更に混乱した空気を助長するかのように医務室の扉が大きく開かれる。
「お嬢様!!!!」
空いた扉からこちらへ猛スピードで走るアリシアがメルヴィナへと激突するのだった。
魔物たちに構うことなくグレイナル山脈を疾走した二人は、夜も更ける頃に魔王城へと到着した。
傷だらけの身体で魔王妃とその騎士を担いで帰ってきたシグマとニャルラを見た門番は、大慌てで魔王と宰相に報告へと向かう。
城内へ駆けていく兵士たちを見つめるシグマたちも、負傷したガウェインを見てもらうためにそのままの恰好で急いで医務室へと走った。
夜の城内を歩く魔物は比較的に少なかったが、それでも廊下を急ぐシグマたちを見る魔物の目は驚愕している。
普段から戦神として知られていて目立つシグマは、この時鬼の形相で医務室へと向かっていたため、廊下を行きかう魔物たちは皆壁際でおとなしくしていた。
「ラティス!いるか!?」
シグマは医務室と書かれた巨大な扉を勢い良く開けると、中にいるはずの魔族の医者に声をかける。
彼にラティスと呼ばれた魔物は、何事かと驚いた様子で奥の方から現れた。
白衣のような服を着た長身の金髪エルフであるラティスが「おいおい、まさか魔王妃様が死んじまったのか~?」とシグマに冗談めかして言う。
それに対して「魔王妃殿は魔力酔いで気絶しているだけだ」とシグマは答えた。
問題はガウェインの方であるとニャルラが担いでいる騎士を指さし、彼の容態について説明するシグマ。
「ありゃー、これまた不思議なことになってるねえ……」
腹部に未だ氷が刺さったままのガウェインを見たラティスは、慣れた手つきで丁寧にその氷を処置していく。
ガウェインを抱えたままのニャルラは、目の前で傷口から氷柱を引き抜くラティスを見て「えっ、ここでやるのかニャ!?」と驚いた様子であった。
そして、彼女が動揺しているうちにラティスはガウェインの体内から氷の棒のようなものを除去することに成功した。
「とりあえず、デカい血管やヤバイ臓器は避けてるみたいだから、そのうち復活すると思うよ」
ガウェインの血が付いた氷柱をクルクルと手のひらの上で回しながら軽い口調で言うラティス。
その様子を見たシグマは「相変わらず手際が良いのう……」と苦笑いする。
氷柱を抜き取られたガウェインを抱えたままのニャルラは「もう終わったのかニャ……」とまたしてもラティスに驚かされるのだった。
ラティスが奥の方から看護師を呼ぶと、美人なエルフのお姉さんが何人か出てきてガウェインは病室に運ばれていく。
とりあえず一段落といったところで、シグマはラティスにガウェインがどれくらいで目を覚ますか問いかけた。
彼としても、一緒に行動した隊員であるガウェインがいつ起きるのかは気になるところである。
そして、駆けつけた時には四天王の一人がすでに去った後だったこともあり、その時の情報を聞きたいという思いもあった。
「そうだね、3日くらいしたら起きるんじゃないかね~」
そう言いながら、メルヴィナを抱えるシグマの方へと歩くラティス。
シグマの抱えるメルヴィナの手を握り、何やら口ずさむラティスを見たニャルラは「もしかして、魔法の詠唱かニャ!?」と驚く。
彼女の予想は当たったようで、治療魔法を詠唱したラティスは「魔力酔いを醒ます魔法をかけた」とニャルラの方をみてほほ笑む。
それを聞いたニャルラは「そんな便利な魔法があるのかニャ……」と困惑するのだった。
ついでに、ニャルラが一緒に持って帰ってきたワタアメにもラティスは治療魔法をかける。
すると、気持ちよさそうに「もきゅ~」と寝言を漏らすワタアメであった。
「ラティス先生って意外とすごかったんだニャ……」
間近でラティスの医療行為を見たニャルラは、軽い感じの見た目の彼が実はすごい奴だったことに感心した。
それを聞いたシグマは「こいつは大戦時代から医療の腕だけは一流だぞ」とラティスについて評価する。
シグマから医者としてのスキルを褒められたラティスは「だけ?俺って戦闘も頭脳も一流だよ?」と手をヒラヒラさせていた。
「……ん……ここは…………?」
シグマたちが世間話をしていると、まだシグマに抱えられたままのメルヴィナが目を覚ます。
それに気づいたシグマは「魔王城の医務室だ」と答えて、彼女を床に下ろした。
両足で地面に立つメルヴィナは周囲を見渡してギョッとした顔をする。
「ガウェイン!ガウェインは!?」
メルヴィナは鬼気迫る表情で声を荒げる。
癇癪を起した子供をあやすように「大丈夫だよ魔王妃様、騎士君なら俺が治療しておいたから」と小さな魔王妃の頭を優しくなでるラティス。
その様子は優しいお兄ちゃんといった様子であったが、ラティスと初対面のメルヴィナは「えっ?誰?」とさらに困惑するのだった。
そんな微妙な空気の中、更に混乱した空気を助長するかのように医務室の扉が大きく開かれる。
「お嬢様!!!!」
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