89 / 91
第82話 おともだちになる幼女と魔女
しおりを挟む
「えっ?おともだち……?」
なんとアルテミシアの要求は、私が彼女の事を「あだ名」で呼ぶことであった。
思いもよらぬ提案に一同を取り巻く空気が固まる。
深刻な状態に危険を感じているというわけではなく、完全に虚を突かれたという状況であった。
彼女からの予想外の注文を、この場にいる誰もが想像などできなかったのである。
「……だめ?」
少し不安げに甘えるような声を出すアルテミシア。
その声には母親の愛情を求める子供のような期待が混じっているように思えた。
だが、もしかしたら、私が彼女のことを「アーシャ」と呼ぶことでなんらかの「スイッチ」が入るのかもしれない。
つまり、アルテミシアが私の身体を乗っ取るための条件に「あだな呼び」が入っているのではないかというわけである。
「いや、別にそれはいいんだけど……」
アルテミシアと親しくなれることは、私サイドとしても願ってもないことなのだ。
とはいえ、私が「力を求める」ことの対価が「おともだち」になることでいいのかという疑問が残る。
私は彼女の問いかけに対していまいちスッキリとしない反応を見せながら、周囲で見守るロキ達の方へと視線を送った。
そして、ありがたいことに私の様子を見ていたラティスが助け船を出す。
「おともだちって言っても、それはいったいどういうつもりなんだい?」
ニコニコとほほ笑みながらも、目は真剣なラティスがアルテミシアへと詰問するのであった。
-----
それからしばらく、ラティスと私、アルテミシアの3者による会話が続く。
その間、周囲で見守るロキ達武人は、時折アルテミシアが見せる魔力の暴走に慌てふためいていた。
「だって、だって、メルちゃんてばすっごい可愛いんだもん!」
しかし、私の身体から溢れ出る強烈な魔力渦は、決して攻撃的な理由から出ているのではなかった。
ただ単純に、アルテミシアが興奮気味に私について喋っているだけで溢れてくるのである。
なので、ラティスが言うには「特に今のこの状態に危険はない」ということであった。
とはいえ、私は想像もしていなかった彼女の普段の調子に驚きを隠せない。
「まあ、そういうことなら全然問題ないと思うよ、アルテミシア」
無限に「魔王妃メルヴィナの愛くるしさ」について語るアルテミシアが一呼吸置いたタイミングで、ラティスが会話に一区切りつける。
このままずっと喋り続けるのかと緊張していた一同であったが、漸く話が終わりそうで少し安心するのであった。
結局、アルテミシアとの会話内容を端的にまとめると「メルヴィナの力になりたい」ということらしい。
なんだかんだ、千年単位で意識を保っているアルテミシアも元々人間であるわけで、やはり「寂しい」という気持ちがあるのだという。
「確かに、ずっと一人で封印されてるっていうのは辛いわよね……」
そう考えるとなんだか気の毒な話である。
私が王国にいた頃に聞いた話では、古代を生きたアルテミシアは魔女として「処刑」されているはずである。
現代に生きる人間的にはほとんど「御伽噺」の世界であるが、確実にアルテミシアは当時を生きていた。
その死後にどうやったのかは分からないが、母体中の赤子に憑りつくことでその命を繋いだという話のはずである。
まあ、詳しい話はよく分からないし、そもそも「アルテミシア」に関する情報なんて人間の間では超マイナー雑学程度のもので、都市伝説レベルの認識だった。
だから、彼女が今話していることも本当かどうかは分からない。
「でも大丈夫よ、アーシャ」
軽く目を閉じて、柔らかくほほ笑みながら私は問いかける。
そう告げたのち、私は肩の力を抜きリラックスした状態で一度深呼吸した。
瞼の裏側に見えるアルテミシアの美しい顔は、彼女の透き通る水色の瞳が良く見えるほどに目が開いている。
肩口まで伸びる青みがかった深海のような黒色の髪と、陶磁器のような白く滑らかな肌をもつアルテミシア。
私も成長が止まることなく大きくなっていたならば、彼女によく似た容姿になっていたかもしれない。
そう思えるほどに、私たちの外見的特徴には共通するものが多かった。
「私は魔王だけじゃなくて、あなたも一人になんてさせないわ」
目を閉じたまま、アルテミシアの方へと意識を向けて私は声を出す。
そして、その言葉に応えるかのように、安らかな顔をしたアルテミシアの顔に一筋の涙が伝うのだった。
なんとアルテミシアの要求は、私が彼女の事を「あだ名」で呼ぶことであった。
思いもよらぬ提案に一同を取り巻く空気が固まる。
深刻な状態に危険を感じているというわけではなく、完全に虚を突かれたという状況であった。
彼女からの予想外の注文を、この場にいる誰もが想像などできなかったのである。
「……だめ?」
少し不安げに甘えるような声を出すアルテミシア。
その声には母親の愛情を求める子供のような期待が混じっているように思えた。
だが、もしかしたら、私が彼女のことを「アーシャ」と呼ぶことでなんらかの「スイッチ」が入るのかもしれない。
つまり、アルテミシアが私の身体を乗っ取るための条件に「あだな呼び」が入っているのではないかというわけである。
「いや、別にそれはいいんだけど……」
アルテミシアと親しくなれることは、私サイドとしても願ってもないことなのだ。
とはいえ、私が「力を求める」ことの対価が「おともだち」になることでいいのかという疑問が残る。
私は彼女の問いかけに対していまいちスッキリとしない反応を見せながら、周囲で見守るロキ達の方へと視線を送った。
そして、ありがたいことに私の様子を見ていたラティスが助け船を出す。
「おともだちって言っても、それはいったいどういうつもりなんだい?」
ニコニコとほほ笑みながらも、目は真剣なラティスがアルテミシアへと詰問するのであった。
-----
それからしばらく、ラティスと私、アルテミシアの3者による会話が続く。
その間、周囲で見守るロキ達武人は、時折アルテミシアが見せる魔力の暴走に慌てふためいていた。
「だって、だって、メルちゃんてばすっごい可愛いんだもん!」
しかし、私の身体から溢れ出る強烈な魔力渦は、決して攻撃的な理由から出ているのではなかった。
ただ単純に、アルテミシアが興奮気味に私について喋っているだけで溢れてくるのである。
なので、ラティスが言うには「特に今のこの状態に危険はない」ということであった。
とはいえ、私は想像もしていなかった彼女の普段の調子に驚きを隠せない。
「まあ、そういうことなら全然問題ないと思うよ、アルテミシア」
無限に「魔王妃メルヴィナの愛くるしさ」について語るアルテミシアが一呼吸置いたタイミングで、ラティスが会話に一区切りつける。
このままずっと喋り続けるのかと緊張していた一同であったが、漸く話が終わりそうで少し安心するのであった。
結局、アルテミシアとの会話内容を端的にまとめると「メルヴィナの力になりたい」ということらしい。
なんだかんだ、千年単位で意識を保っているアルテミシアも元々人間であるわけで、やはり「寂しい」という気持ちがあるのだという。
「確かに、ずっと一人で封印されてるっていうのは辛いわよね……」
そう考えるとなんだか気の毒な話である。
私が王国にいた頃に聞いた話では、古代を生きたアルテミシアは魔女として「処刑」されているはずである。
現代に生きる人間的にはほとんど「御伽噺」の世界であるが、確実にアルテミシアは当時を生きていた。
その死後にどうやったのかは分からないが、母体中の赤子に憑りつくことでその命を繋いだという話のはずである。
まあ、詳しい話はよく分からないし、そもそも「アルテミシア」に関する情報なんて人間の間では超マイナー雑学程度のもので、都市伝説レベルの認識だった。
だから、彼女が今話していることも本当かどうかは分からない。
「でも大丈夫よ、アーシャ」
軽く目を閉じて、柔らかくほほ笑みながら私は問いかける。
そう告げたのち、私は肩の力を抜きリラックスした状態で一度深呼吸した。
瞼の裏側に見えるアルテミシアの美しい顔は、彼女の透き通る水色の瞳が良く見えるほどに目が開いている。
肩口まで伸びる青みがかった深海のような黒色の髪と、陶磁器のような白く滑らかな肌をもつアルテミシア。
私も成長が止まることなく大きくなっていたならば、彼女によく似た容姿になっていたかもしれない。
そう思えるほどに、私たちの外見的特徴には共通するものが多かった。
「私は魔王だけじゃなくて、あなたも一人になんてさせないわ」
目を閉じたまま、アルテミシアの方へと意識を向けて私は声を出す。
そして、その言葉に応えるかのように、安らかな顔をしたアルテミシアの顔に一筋の涙が伝うのだった。
0
あなたにおすすめの小説
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…
ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。
王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。
それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。
貧しかった少女は番に愛されそして……え?
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
虐げられていた次期公爵の四歳児の契約母になります!~幼子を幸せにしたいのに、未来の旦那様である王太子が私を溺愛してきます~
八重
恋愛
伯爵令嬢フローラは、公爵令息ディーターの婚約者。
しかし、そんな日々の裏で心を痛めていることが一つあった。
それはディーターの異母弟、四歳のルイトが兄に虐げられていること。
幼い彼を救いたいと思った彼女は、「ある計画」の準備を進めることにする。
それは、ルイトを救い出すための唯一の方法──。
そんな時、フローラはディーターから突然婚約破棄される。
婚約破棄宣言を受けた彼女は「今しかない」と計画を実行した。
彼女の計画、それは自らが代理母となること。
だが、この代理母には国との間で結ばれた「ある契約」が存在して……。
こうして始まったフローラの代理母としての生活。
しかし、ルイトの無邪気な笑顔と可愛さが、フローラの苦労を温かい喜びに変えていく。
さらに、見目麗しいながら策士として有名な第一王子ヴィルが、フローラに興味を持ち始めて……。
ほのぼの心温まる、子育て溺愛ストーリーです。
※ヒロインが序盤くじけがちな部分ありますが、それをバネに強くなります
※「小説家になろう」が先行公開です(第二章開始しました)
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる