異世界修道院物語 –シスター狐っ娘、たおやかにKる-

狐囃子

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16 フェンネル、化け物におののく

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 白々と夜が明けてきた。早馬へ戻ると運転席で狼の手下が飛び起きた。
 聖務の内容は”客が目的地に着くまで従属しろ”とかかな。この従順さも状態異常による賜物なのか。

「おはよう!朝ご飯はどうかな?」
「何故、程よく焼けた手羽元チューリップを持っているのですか」
「ちょうど目の前を鳥さんが横切ったから、つい」
「別に構いませんがね。いただきます」

 私はヴァンが左右で握っていた両方のチューリップを貰った。

「なんでボクの分まで取る!?」
「これも神の思し召し。ありがたく頂戴致します」

 雑食性動物とはいえここ数日数ヵ月数百年肉食が少なかったからというのと、ここの院長が夕餉の皿一枚しかエサを置いていなかったというのと、快適な孤独を楽しみ笑顔で肉を持っているからですよ。決して解釈違いや間違いによる強奪ではありません。

「むー」

 ヴァンは骨を咥えると早馬に乗り込んだ。私も急いで平らげるとしよう。
何か声をかけようかと思ったが不思議と安心感があることに気づいた。ヴァンのことが少しわかったからかもしれない。旅を楽しむとはこういうことなのだろうか。

「この先の修道院は組技系の男子修道院と問題の多い修道院なので飛ばします」
「えぇ……」
「どちらも口にするのも憚られる場所なので飛ばせるなら飛ばしたいのです」
「えぇー」

 筆舌しがたいことを説明するとヴァンはトン引きしていたが納得してくれた。特に組技系の方はにおいが……

「到着は夜半過ぎですが道中休みを入れますのでご容赦ください」
「仕方ないかー。ぐーたらしながら旅をするのも乙だねー」

 旅を始める前の居心地の悪さは無い。その代わり信仰の揺らぎや心の拠り所について考えることが多い。このまま何も聞かずにシダンシ修道院に着くのを待つのも一つの手かと思ったが……。

「太老猫様が星の危機を予言した後の話をお聞かせください」
「んー?うん。様付けしないで良いと思うけれどなー。それに敬語も辞めない?」
「無理です」
「そかー」

 心地よい沈黙。信仰や祈りのない自然な空気がそこにあった。やがてヴァンは語りだした。

「島を守ったパウエル、星に関係したチェザーレ、銀河を作った太老猫、そしてその上をいく方々。信徒が神の神格を信教に従って類推しても無駄な話だよ。信心深いものには難しいだろうけど神の偉大さを数冊の本で表すようなことは土台無理な話さ。君もその一員、500年生きるデタラメンタリティを持つ神でしょ」
「私を人外扱いしないでください!そういえばしれっと私も神格を持っているみたいなことをおっしゃっていましたよね」

 神かどうかの自覚はない。ただの獣だし。

「そう……だね。受肉しているからわかりにくいけど、君はおそらくボクと同じような神格を持っている。神格を持ったが故に式神などの状態異常を払拭したのかも」
「神格というのがよくわからないのですが」
「平たく言えば誰かに信仰されたということ」
「私を……信仰?もしかしてカタリハカリナ修道院で私を崇めるものがいたとか」
「筋肉信仰?違う……と思う。いや、その可能性は否定できないけど……」

 神がお困りである。

「人間特有の不自然現象なんだけれどね。見えない何かを信じることで対象を神格化あるいは怪異化させることはままあるんだ」
「私、化け物!?」
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