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第四章 三人目のハル・ウェルディス
旧エスタート城砦
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どうしてこの襲撃が成立したのか。まず考えてみるべきはそれではないだろうか。
ミスル離宮に赴くことは、王宮では明らかにしていないという。白桂宮で下働きが持ち込んだ病のせいで王妃が倒れ、ついで国王も倒れたために厳戒態勢で療養中ということにしてあるのだそうだ。
真実を知っているのは、旅に同行した白桂宮の侍従数人の他はヴァルダンだけだ。
護衛兵たちはヴァルダンの私兵であり、グスタフ砦もヴァルダン領の一部だった。――ならば、これを画策したのはサラトリアだろうか。
シェイドは柔和な笑みを浮かべた青年貴族の姿を思い描いた。
明るい褐色の巻き毛と榛色の瞳は、北方の血を思わせる。代々血統には拘らず能力の優れたものを伴侶として迎えてきた祭祀の一族は、歴史を遡ればウェルディス王家と祖を同じくする。
しかし現在は公爵家の一つに過ぎず、原則として王位継承権とは無縁だ。
彼が玉座を得るには、ウェルディス王家を根絶やしにした上で、高位貴族の間で起こるはずの内戦を勝ち抜く必要がある。
王太子ジハードに王位を授けた陰の立役者であるヴァルダンが、そこまでの労力を払って玉座を奪い取る必要があるだろうか。
仮にヴァルダンが関係していないとすれば、これは山賊の仕業だろうか。
自分たちは山賊が支配する廃砦に連れて行かれようとしている。山賊、あるいは山賊を装った隣国の軍隊だという可能性もなくはない。
だがそれではミスルへの旅程が漏れていた事実を説明できなかった。
これを為すにはヴァルダンか白桂宮のどちらかに所属する者の助力が必要となり、他国者や山賊が素性を偽ってそこへ潜り込むことは困難だからだ。
だとすれば――。
シェイドの脳裏に自然と浮かび上がってきたのは、怨嗟に満ちた従姉姫の顔だった。
ナジャウ家ならば、長年の縁故を辿って白桂宮やヴァルダン家に間者を紛れ込ませることも可能だろう。それにジハードとシェイド以外で唯一正式に認められた王位継承権を持つのはアリアの父カストロだ。
一人娘のアリアに王位継承権はないが、カストロが今からでも男児を設けることができれば、ウェルディリアの王家はウェルディスからナジャウへと系譜を繋いでいくことになる。
いや、カストロが公爵家を離れてウェルディス王家に復権することが認められれば、話はさらに早い。
ベラードの領主は、果たして旧国王派であったか、それとも元王太子派であったのか。
事と次第によっては、北の城砦に逃げ込んだところで敵の手の内という可能性がある。
それをジハードに問いかけようとした時、走り続けていた馬車が停止した。
周囲を囲む兵士が次々と馬を降りる、鎧の金具と鞘が擦れる音があたりに響いた。中庭かどこか、壁に囲まれた空間のようだ。
剣の柄に手を当てて身構えたジハードの前に、シェイドは身を滑らせた。
「私が先に出ます。隙があるようでしたら、陛下は馬を奪ってお一人で脱出してください」
「シェイド……!」
「王位を狙うものならば、私に危害は加えません。そうでしょう?」
先ほどジハードから告げられた言葉を用いて、シェイドは扉の前に立った。
黒幕がカストロ・デル・ナジャウだった場合を除いて、とは口にしなかった。
もしもそうならば、この賊の集団は襲撃を仕掛けたあの草原で馬車の中の首を二つとも刎ねているはずだ。
山賊の仕業だと見せかけておくだけで、何もせずとも王位が転がり込んでくる。そうしなかったのは、首謀者がカストロではないということだ。
もちろんこれはただの推測で、カストロが裏で糸を引いている可能性も十分に考えられる。
馬車の扉が外から開いていく。シェイドは顔を上げ、腹に力を込めて足を踏み出した。
もし闇雲に矢を射かけられるようなことがあれば、この身をもって盾とする以外に背後の国王を守るすべはない。
扉の隙間から見えた外は、すっかり日が落ちて暗闇だった。
ざっと目を走らせただけで、周りを取り囲む松明の炎が三十はくだらないのが見て取れた。兵士の数はそれよりももっと多い。如何にジハードが勇猛な剣士であろうとも一人で相手取れる人数ではなかった。
馬車が止められていたのは、城砦の中庭のような場所だった。
四方が高い壁に囲まれ、その向こうには山脈の岩肌が続いている。月が見えるのと同じ方向には塔が聳え立ち、夜空の星を切り取ったような暗闇で覆い隠していた。
シェイドの姿を見て、周りを取り囲んだ兵士たちが動揺を示して視線を泳がせた。中にいるのは国王だと確信していたのに、出てきたのが北方人だったので困惑しているのだろう。
シェイドは兵士たちの顔を眺め渡し、最後に背の高い老人の上で視線を留めた。
老齢の域に達しているが立派な体格を持ち、上質の鎧と外套を纏っている。
逆賊を束ねているのはこの老人にまず間違いあるまい。
シェイドは息を吸い、腹から押し出すように声を張った。
「首謀者は誰です。進み出て膝を突き、名と身分を名乗りなさい」
夜の空気を貫いて、朗々とした声が発せられた。己の口からこれほど大きな声が出るのを、シェイドは初めて聞いた。声が震えていないのが他人事のようだった。
誰何して射貫くように見据えるシェイドに、老人は皮肉そうな笑みを浮かべて一歩進み出た。
「北方娼婦に名乗る名はないが、国王陛下には敬意を表そう。我が名はマクセル・ベラード。先王陛下には東方を守護する将軍としてお仕え申し上げた!」
老人とは思えぬ、腹の底にビリビリと響くような大音声だった。
「――先王に敬意を払う気があるのならば、頭を低くせよ」
シェイドの背後から、よく通る低い声がその名乗りに応じるように響き渡った。
「お前たちの目の前にいるのは国王ジハード・ハル・ウェルディスと、その兄にして第一位王位継承権を持つシェイド・ハル・ウェルディスだ」
馬車から降り立った国王は、剣の柄頭に手を置いたまま、マクセルと名乗った老将の前に進み出た。
広い背中に視線を遮られると、極限状態であった緊張が途切れて、血の気が引いていきそうになる。だがこんなところで無様を晒せば嘲笑を浴びるのは国王の方だ。シェイドは奥歯を噛み締めて顔を上げた。
「旧エスタート城砦か。朽ち果てた砦に呼び寄せてまで訴えたいことがあるというなら、直訴を聞いてやろう」
シェイドに聞かせるためにだろう、ジハードは城砦の名を口にした。
それを受けて、シェイドは馬車の中で聞いた砦の特徴を思い返す。
エスタートは東の国境山脈の最も近くに作られた城砦だ。
塔が一つに、一重の空堀、正門には跳ね橋を備えている。山からの交易路の真横に道を塞ぐように建てられており、かつては隣国からの侵入を真っ先に叩くための要塞だった。あたりの廃砦の中では最も大きい砦だ。
それにしても五十を超える敵兵に囲まれ、相手は父王より年上の元将軍だというのに、ジハードの声には少しの揺らぎもなかった。生まれながらに王であり、命尽きる最後の瞬間まで神の末裔である男の声だ。
だが、老将軍は若き国王をせせら笑った。
「父王殺しの国王と混血の庶子では、国の主に相応しいとは到底申せませぬな。正当なる世継ぎの君に、その座を明け渡すべきでしょう」
「何だと……」
ジハードの詰問を躱すように、老将は地に片膝をついた。周りの兵士たちも同じように敬意を示して次々と跪いていく。
割れた人垣の後ろから、一人の背の高い人物が悠然と歩いてきた。
「……まさか……」
夜目の利くジハードの口から、信じがたいと言いたげな声が漏れた。
シェイドも息を飲み、声も出せずに近寄ってくる相手を見据える。
王者の風格を備えて二人の元へ進んでくるのは、浅黒い肌に昏い色の髪を持ち、逞しい長身を毛皮の外套に包んだ壮年の男だった。
シェイドより、二つ三つは年上だろうか。
厳しく整ったその貌は、まさに神殿の壁に描かれたウェルディ神そのもの――傍らに立つ国王ジハードと瓜二つだった。
「ラナダーン・ハル・ウェルディス……先王ベレスと妾妃テレシア・ベラードの間に生まれた、この国の真の後継者だ」
その左の耳には、王位継承者の額環に嵌まっているのとよく似た、大粒の青玉が輝いていた。
ミスル離宮に赴くことは、王宮では明らかにしていないという。白桂宮で下働きが持ち込んだ病のせいで王妃が倒れ、ついで国王も倒れたために厳戒態勢で療養中ということにしてあるのだそうだ。
真実を知っているのは、旅に同行した白桂宮の侍従数人の他はヴァルダンだけだ。
護衛兵たちはヴァルダンの私兵であり、グスタフ砦もヴァルダン領の一部だった。――ならば、これを画策したのはサラトリアだろうか。
シェイドは柔和な笑みを浮かべた青年貴族の姿を思い描いた。
明るい褐色の巻き毛と榛色の瞳は、北方の血を思わせる。代々血統には拘らず能力の優れたものを伴侶として迎えてきた祭祀の一族は、歴史を遡ればウェルディス王家と祖を同じくする。
しかし現在は公爵家の一つに過ぎず、原則として王位継承権とは無縁だ。
彼が玉座を得るには、ウェルディス王家を根絶やしにした上で、高位貴族の間で起こるはずの内戦を勝ち抜く必要がある。
王太子ジハードに王位を授けた陰の立役者であるヴァルダンが、そこまでの労力を払って玉座を奪い取る必要があるだろうか。
仮にヴァルダンが関係していないとすれば、これは山賊の仕業だろうか。
自分たちは山賊が支配する廃砦に連れて行かれようとしている。山賊、あるいは山賊を装った隣国の軍隊だという可能性もなくはない。
だがそれではミスルへの旅程が漏れていた事実を説明できなかった。
これを為すにはヴァルダンか白桂宮のどちらかに所属する者の助力が必要となり、他国者や山賊が素性を偽ってそこへ潜り込むことは困難だからだ。
だとすれば――。
シェイドの脳裏に自然と浮かび上がってきたのは、怨嗟に満ちた従姉姫の顔だった。
ナジャウ家ならば、長年の縁故を辿って白桂宮やヴァルダン家に間者を紛れ込ませることも可能だろう。それにジハードとシェイド以外で唯一正式に認められた王位継承権を持つのはアリアの父カストロだ。
一人娘のアリアに王位継承権はないが、カストロが今からでも男児を設けることができれば、ウェルディリアの王家はウェルディスからナジャウへと系譜を繋いでいくことになる。
いや、カストロが公爵家を離れてウェルディス王家に復権することが認められれば、話はさらに早い。
ベラードの領主は、果たして旧国王派であったか、それとも元王太子派であったのか。
事と次第によっては、北の城砦に逃げ込んだところで敵の手の内という可能性がある。
それをジハードに問いかけようとした時、走り続けていた馬車が停止した。
周囲を囲む兵士が次々と馬を降りる、鎧の金具と鞘が擦れる音があたりに響いた。中庭かどこか、壁に囲まれた空間のようだ。
剣の柄に手を当てて身構えたジハードの前に、シェイドは身を滑らせた。
「私が先に出ます。隙があるようでしたら、陛下は馬を奪ってお一人で脱出してください」
「シェイド……!」
「王位を狙うものならば、私に危害は加えません。そうでしょう?」
先ほどジハードから告げられた言葉を用いて、シェイドは扉の前に立った。
黒幕がカストロ・デル・ナジャウだった場合を除いて、とは口にしなかった。
もしもそうならば、この賊の集団は襲撃を仕掛けたあの草原で馬車の中の首を二つとも刎ねているはずだ。
山賊の仕業だと見せかけておくだけで、何もせずとも王位が転がり込んでくる。そうしなかったのは、首謀者がカストロではないということだ。
もちろんこれはただの推測で、カストロが裏で糸を引いている可能性も十分に考えられる。
馬車の扉が外から開いていく。シェイドは顔を上げ、腹に力を込めて足を踏み出した。
もし闇雲に矢を射かけられるようなことがあれば、この身をもって盾とする以外に背後の国王を守るすべはない。
扉の隙間から見えた外は、すっかり日が落ちて暗闇だった。
ざっと目を走らせただけで、周りを取り囲む松明の炎が三十はくだらないのが見て取れた。兵士の数はそれよりももっと多い。如何にジハードが勇猛な剣士であろうとも一人で相手取れる人数ではなかった。
馬車が止められていたのは、城砦の中庭のような場所だった。
四方が高い壁に囲まれ、その向こうには山脈の岩肌が続いている。月が見えるのと同じ方向には塔が聳え立ち、夜空の星を切り取ったような暗闇で覆い隠していた。
シェイドの姿を見て、周りを取り囲んだ兵士たちが動揺を示して視線を泳がせた。中にいるのは国王だと確信していたのに、出てきたのが北方人だったので困惑しているのだろう。
シェイドは兵士たちの顔を眺め渡し、最後に背の高い老人の上で視線を留めた。
老齢の域に達しているが立派な体格を持ち、上質の鎧と外套を纏っている。
逆賊を束ねているのはこの老人にまず間違いあるまい。
シェイドは息を吸い、腹から押し出すように声を張った。
「首謀者は誰です。進み出て膝を突き、名と身分を名乗りなさい」
夜の空気を貫いて、朗々とした声が発せられた。己の口からこれほど大きな声が出るのを、シェイドは初めて聞いた。声が震えていないのが他人事のようだった。
誰何して射貫くように見据えるシェイドに、老人は皮肉そうな笑みを浮かべて一歩進み出た。
「北方娼婦に名乗る名はないが、国王陛下には敬意を表そう。我が名はマクセル・ベラード。先王陛下には東方を守護する将軍としてお仕え申し上げた!」
老人とは思えぬ、腹の底にビリビリと響くような大音声だった。
「――先王に敬意を払う気があるのならば、頭を低くせよ」
シェイドの背後から、よく通る低い声がその名乗りに応じるように響き渡った。
「お前たちの目の前にいるのは国王ジハード・ハル・ウェルディスと、その兄にして第一位王位継承権を持つシェイド・ハル・ウェルディスだ」
馬車から降り立った国王は、剣の柄頭に手を置いたまま、マクセルと名乗った老将の前に進み出た。
広い背中に視線を遮られると、極限状態であった緊張が途切れて、血の気が引いていきそうになる。だがこんなところで無様を晒せば嘲笑を浴びるのは国王の方だ。シェイドは奥歯を噛み締めて顔を上げた。
「旧エスタート城砦か。朽ち果てた砦に呼び寄せてまで訴えたいことがあるというなら、直訴を聞いてやろう」
シェイドに聞かせるためにだろう、ジハードは城砦の名を口にした。
それを受けて、シェイドは馬車の中で聞いた砦の特徴を思い返す。
エスタートは東の国境山脈の最も近くに作られた城砦だ。
塔が一つに、一重の空堀、正門には跳ね橋を備えている。山からの交易路の真横に道を塞ぐように建てられており、かつては隣国からの侵入を真っ先に叩くための要塞だった。あたりの廃砦の中では最も大きい砦だ。
それにしても五十を超える敵兵に囲まれ、相手は父王より年上の元将軍だというのに、ジハードの声には少しの揺らぎもなかった。生まれながらに王であり、命尽きる最後の瞬間まで神の末裔である男の声だ。
だが、老将軍は若き国王をせせら笑った。
「父王殺しの国王と混血の庶子では、国の主に相応しいとは到底申せませぬな。正当なる世継ぎの君に、その座を明け渡すべきでしょう」
「何だと……」
ジハードの詰問を躱すように、老将は地に片膝をついた。周りの兵士たちも同じように敬意を示して次々と跪いていく。
割れた人垣の後ろから、一人の背の高い人物が悠然と歩いてきた。
「……まさか……」
夜目の利くジハードの口から、信じがたいと言いたげな声が漏れた。
シェイドも息を飲み、声も出せずに近寄ってくる相手を見据える。
王者の風格を備えて二人の元へ進んでくるのは、浅黒い肌に昏い色の髪を持ち、逞しい長身を毛皮の外套に包んだ壮年の男だった。
シェイドより、二つ三つは年上だろうか。
厳しく整ったその貌は、まさに神殿の壁に描かれたウェルディ神そのもの――傍らに立つ国王ジハードと瓜二つだった。
「ラナダーン・ハル・ウェルディス……先王ベレスと妾妃テレシア・ベラードの間に生まれた、この国の真の後継者だ」
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