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しおりを挟む「しゃ……ちょう……?」
雁の部分だけを浅く埋めたまま、大樹は動くのを止めてしまった。
物足りなさに自分から肉棒を出し入れしようとしたが、腰は大樹の手で固定されている。生殺しにされた間部の屹立から我慢汁がトロリと零れた。
「仕事だと言うんなら、間部。明日のスケジュールでも確認してもらおうか」
「は……?」
耳を疑うような言葉が大樹の口から吐き出された。
「スケジュール管理は、秘書の大事な仕事だろう。言わないと動いてやらないぞ」
「な……ッ!?」
あんまりな大樹の言葉に、間部は耳を疑った。
どうやら『これはサービス残業のようなものだ』と言ったことを、相当根に持っているらしい。
そうでも言わねば割り切ることができない間部の心情を、若さも地位も持ち合わせた大樹には察することもできないのか。
腹立たしくはあったが、今更『本当に仕事だと思っていたら、ホテルになど来ません』と言えるはずもない。
半ば意地になって、間部は記憶を辿った。
「明日は十時から、開発部との会議です」
秘書歴二十年以上。予定は全て頭に入っている。
手帳を見もせず即答すると、大樹がゆっくりと動きを再開した。
張りつめた亀頭で内側の壁を擦り上げるように、浅い場所を何度も往復する。さっきまでさんざん虐められていた、間部の好い場所だ。指先が痺れ、息が震える。
腰の奥からせりあがってくる喜悦に、あっという間に声は冷静さを失い、震えて掠れ始めた。
「……十一時に会議が終わった、後は……あと、は……」
「後は?」
「十二時から、N社会長との会食…………その後、社に戻って――……ん、んんぅッ!」
昂ぶりきったところで寸止めにされた体は、与えられる悦楽を飢えたように貪る。
浅いところをゆっくり単調に往復されるのは、間部が一番弱いやり方だ。へそから下がぐずぐずに蕩けて、後は堕ちるところまで堕とされるしかない。
甘美な痺れに鼻声が漏れ、掴んで固定された腰がもどかしく震えた。
もうスケジュールのことなんてどうでもいい。頭に入っているのに、わざと言わせているだけなのはわかりきっている。
サービス残業だと言ったのは少しは悪かったが、それが大樹に負担をかけないための間部なりの気遣いだと、勘のいい大樹にわからないはずもないのに。
間部にとっても、今日は三日ぶりの逢瀬だ。せめて肌を合わせている間は仕事のことなど忘れて、優しい気持ちで睦み合いたい。
「あ……ぁ……社長……」
大樹の誘いはいつも強引で、間部に逃げる隙を与えてくれない。それは大樹の方の優しさだろう。そうでなければ、どうして十五も年下の男の前で股を開けるものか。
仕事で指示を下すように、明確な言葉で間部の抵抗を封じてくれる。体の中を弄られて、抜き差しならないところまで愉悦に馴らされ、熱を高められ煽られて、大樹の逸物を受け入れる。
あとは何もかも忘れて善がり狂うだけだ。
こんな風に理性を半分繋ぎ留めたような状態でセックスするのは、僅かに残った自尊心を傷つけられる気がする。
最終的に陥落することがわかっているのに、その瞬間がいつ訪れるのかを観察されるのがどんなに恥ずかしいことか、大樹にはわからないのだろうか。
それともわかっていて、そこまで自分を貶めたいのか。
「しゃちょう……」
尻の中の牡を強請るように締め付けてみた。普段とは違う声で呼んでもみる。
だが、大樹は眉を少し寄せただけでいつもの性急さを発揮しようとしない。
「社に戻って、それから?」
「それから――」
無情にも先を促されるのが悔しくて、間部も意地になる。
だが声はもうふわふわと定まらない。
「さん、時から合同かいぎ……は、あ……あ!……新工場よていち、の視察ッ……ふぁ、ぅ!」
明日の予定を思い描こうとする瞼の裏を、真っ白い閃光が何度も弾けた。目頭が熱くなり、涙が滲む。
軽い絶頂に酔う間部をさらに追い詰めるように、大樹の先端がちょうど好い場所をグリグリと擦り上げた。
「あひ! あぁ、あ、あはぁ……!」
「そろそろ設計士とも詰めた話をしたい。明日の視察の後に時間を取れるか」
強弱をつけて押し付けられる怒張に、もう情けない嬌声が止まらない。
まだ寸止めなのか、それとももうイッてしまっているのか。少なくとも射精のようなはっきりとした終わりのない愉悦が、間部の下腹でとぐろを巻いている。
ペニスの先から粘液が糸を引いて零れていくのがわかったが、もうそれを止めようという気さえ起らなかった。
「こら、間部。予定の変更は効くかと聞いている。仕事なんだからシャキッとしろ!」
「ひぅうッ……!」
パン、と尻を一つ叩かれた後、巨大な逸物が内壁を擦りながらグググと体の中を遡ってきた。
失禁しそうな感覚が、間部を狼狽えさせる。両膝で挟んだ胴を締め付けて制止しようとするが、その程度の抗いで大樹が止まるはずもない。
このまま奥まで突っ込まれ、結腸責めされて、とろとろになるまで喘がされる――。期待と恐れが入り混じった予感は、だが裏切られた。
奥へと到達する前に、太い肉棒は焦らすように引き抜かれたからだ。
「いやだ、ぁ……もう、だめぇ……焦らさないで……ッ」
空っぽになった尻を間部は揺さぶった。
大樹の怒張の先端が濡れた会陰を掠めるが、角度をずらされて挿入には至らない。脚の間では半勃ちになった間部のペニスが所在無げに揺れている。乳首は痛いほどに張りつめて指で弄られるのを待っているのに、大樹はそこも触ってくれない。
「入れて、大樹さん……イきたい……大樹さんので、イかせてください……」
腰を掴まれたまま、間部は後ろに回した両手で尻肉を掴んで割り広げた。大樹の怒張が奥まで入って来られるように、自分から大きく膝を開いて腰を突き出す。
濡れて口を開いた後孔に、いきり立った怒張の先端が押し当てられた。
「どうやってイかされたいんだ、間部? ちゃんと目を見て報告してくれ」
くぱ、と開いた鈴口から透明な蜜が零れ落ちた。
溢れ出たローションを塗り付けるように、大樹の亀頭が会陰を往復している。
すっかり大樹に馴らされた窄まりが、早く中に来てくれと吸い付こうとしているのが分かったが、大樹はそれに構うことなく通り過ぎていく。
間部は縋るように大樹を見つめた。
出会った頃にはひょろりと背の高い少年だった大樹は、男の目から見ても惚れ惚れするほど立派な男になった。
間部より一回り以上大きな体、太い腕と長い脚。丸みが消えた頬はすっきりとして、切れ長の目も高い鼻も、ゾクゾクするほどセクシーだ。
ホテルの部屋に強引に連れ込まれて、ドアの側で苦しいくらいに抱きしめられるのが好きだ。
唇を合わせると、鼻を擽る整髪剤の匂いが体の熱を高めていく。滑り込んでくる舌に舌を絡め合わせ、密着した体の間で互いのペニスが硬く姿を変えていくのを感じると、期待で膝が震えそうになる。
逞しい逸物で苦しいくらいに中を侵され、我を忘れて昇りつめる瞬間を思い描かずにはいられない。そしてその期待を、大樹が裏切ったことは一度もなかった。
――大樹に抱かれたい。
恋人同士のように情熱的に、仕事のことも年齢のことも、何もかも忘れてただ愛し合いたい。
「大樹さん――」
名を呼ぶ声が甘たるく響くことに羞恥を覚えながら、間部はそっと唇を寄せる。
「大樹さんの大きいので……たくさん……け、結腸責めして、啼かせてください……」
精悍に整った顔が驚きの表情を浮かべるのを見ないまま、間部は目を閉じて、若い情人に口づけした。
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