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第一章 転生と『はじまりの都市』アフィリシティ
第2話 チート
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「ちょっと! こんなところで寝てたら危ないですよ!」
そんな声と共に体をゆすぶられ、俺はゆっくり目を覚ました。
五感、問題なし。
身体の痛み、なし。
健康そのものだ。
「よいしょっと」
俺は体を起こすと、辺りの景色をきょろきょろ見まわした。
とても緑が豊かな森の中だ。
空気が澄んでいてすごく美味しい。
こんな美しい場所に来たのは、もう何年ぶりだろうか。
どうやら本当に、異世界に転生したみたいだな。
「もう……この辺りは危険なモンスターも出るんですから、いくら休憩するにしても寝ちゃダメです」
俺を起こしてくれた声の主が、少し頬を膨らませて注意してくる。
明らかに日本人とは異なる顔立ちの色白美人さんだ。
美しい金髪が、太陽の光を浴びてきらきら輝いている。
「それは悪かった。起こしてくれてありがとう」
「えへへ。どういたしまして」
感謝を伝えると、彼女はにっこり笑った。
ただ美人なだけじゃなく、愛嬌もあるかわいい子だ。
「初めましてですね。私はエリスといいます。アフィリシティにある冒険者協会の本部で働いています」
「冒険者協会?」
「そうですよ。えーっと、冒険者協会はこの大陸各地にもれなくあるはずなんですけど……」
「ああ、ごめん。俺は全く別のところというか、すごく遠いところから来たんだ。だからこの世界のこと、何にも知らなくて……」
エリスは不思議そうな表情を浮かべ、小さく首を傾げる。
でもすぐに切り替えて、俺に尋ねてきた。
「ちなみにあなた、お名前は何ですか?」
「ああ、クロ」
「クロさんですね。よろしくお願いします」
「うん。よろしく」
うん、ちゃんと言語も通じているし、会話ができている。
何よりも最初の異世界人が優しそうなエリスで、本当に良かった。
「うあ~っと」
俺は立ち上がって大きく伸びをした。
首も腰も痛くないし、周りの環境もきれいで最高の気分だ。
そして何よりも、この世界にはあのブラックな会社がない。
もちろん生きてくには働かなくちゃいけないかもだけど、少なくとも前みたいな社畜人生にはしたくないものだな。
この新しい世界を、いろいろと旅して見てみたい。
大好きな旅行、思う存分にしてやるぞ~。
「ちなみにクロさん、この後はどこかに行かれるんですか?」
「まだこの辺りのことが何も分からないからな……。とりあえず、そのアフィリシティってところに行ってみたいかな」
「おおっ、ちょうど良かったですね。私も今からアフィリシティに帰るところなので、ご案内しましょう」
「お、めっちゃ助かる。ありがと」
「お安い御用です」
エリスはどやっと胸を張ると、森の中を歩き始めた。
俺もその隣に並んで、アフィリシティとやらを目指し始める。
「さっき言ってたけど、この辺りには危険なモンスターが出るの?」
俺が尋ねると、エリスは何度も頷いた。
どうやら、相当危ないらしい。
俺を転生させてくれた声の主さん、もうちょっと場所を考えてくださってもよろしかったんじゃないんでしょうか。
心の中で尋ねてみても、あの柔らかな声は聞こえてこない。
もう異世界に着いてしまっているからかな。
まあ、転生させてくれたことには大感謝だし、こうして無事に目覚められたからいいけども。
「具体的にどんなモンスターが出るんだ?」
「そうですね……。種類も多くて、一概には言えないんですけど……あっ、例えばあんなのとか」
エリスが指差す先で、低木の茂みから姿を現したモンスターが、こちらをギラギラした目で睨みつけている。
姿はクマそのものだ。
四つん這いになってるけど、それでもかなり大きいし威圧感がすごい。
立ち上がったら、3~4mはあるんじゃないだろうか。
「ブラッディベアですね。モンスターすらも食らう貪欲で強力なモンスターです。もちろん、人も食べます」
冷静に解説しているようで、エリスは声も足も震えまくっている。
そして解説された内容も、それはそれは恐ろしい。
「ひょっとしなくても、やばいよな?」
「それはもう、これ以上ないくらいに」
「ガオオオオオ!」
ブラッディベアが咆哮を上げる。
エリスが震える左手で、俺の右手を掴んで叫んだ。
「逃げましょう!」
……おかしいんだよなぁ。
普通だったら、お腹をすかせたクマなんて見たら一目散に逃げだす。
ましてや相手は元の世界のクマよりはるかにでっかくて、はるかに狂暴なやつだ。
どう考えても逃げるのが正解だと思ってしまうはず。
それなのに。
「負ける気がしない」
俺は率直な感情を、言葉に出して呟いた。
全身に力がみなぎってくるのを感じる。
全く経験がないはずなのに、戦い方が分かる。
どうやってこのクマを倒したら良いかが分かる。
なるほどな。これが転生の時に“声”が言っていた能力ってやつだ。
あの時、頭に流れ込んできたいくつもの強そうな名前の技も、すべて使うイメージができる。
「ななななな何を言ってるんですかぁ!!!!????」
エリスは今にも泣きだしそうな顔で、ぶるぶる手を震わせながら俺を見つめる。
でも俺は至って冷静に、エリスと繋いでいない方の手――左手をブラッディベアに向けて伸ばした。
「【インフェルノ・ブレッド】」
獄炎の弾丸が、こちらへ向かってこようとするブラッディベアに放たれる。
サイズとしては拳くらい。
それが正確に眉間を捉えた。
そして次の瞬間、ブラッディベアの体全体が炎に包まれる。
「ギャオオオオオ!」
ブラッディベアは断末魔の叫びをあげて、崩れ落ちた。
そして文字通り真っ白な灰になる。
「へ……?」
危機が去った森の中に、エリスの呆然とした声が響いた。
「な? 負ける気がしないって言ったろ?」
「なななななななななな何者なんですかあなたはぁ!!!!!?????」
エリスの手はやはりぶるぶる震えている。
でも今度は恐怖によるものじゃない。
極度の興奮によるものだ。
「ブラッディベアを一撃って……! え!? 嘘でしょ!? 倒すだけですごいのに一撃!? ええっ!? もう……えええええ!?」
「落ち着け。落ち着け。呼吸しろ」
完全にテンパってしまったエリス。
俺は彼女を何とかなだめて、一度大きく深呼吸させる。
「すぅ~……はぁ~……。取り乱しました」
「これ倒したの、そんなにすごいのか。あんまり手応えはなかったんだけど」
「何を言ってるんですか! このブラッディベアのせいで、年間どれだけの被害が出ていることか!」
そう言うと、エリスは再び深呼吸して言った。
「どうやら私は、とんでもない人を起こしてしまったみたいですね」
「お、おう……」
「あなたならなれます。英雄に」
英雄……?
異世界で激しい戦闘とかいっぱいして、目立ってモテモテになって、みんなにワーキャー言われるあの主人公ポジションのことですか?
う~ん。
「興味ないなぁ」
だって自由気ままに旅したいもの。
有名になっちゃったら、どこか行くたびに騒ぎになってのんびり旅行どころじゃなくなってしまう。
「何でですかぁ!?」
エリスの悲痛な叫び声が、静かな森に響き渡るのだった。
そんな声と共に体をゆすぶられ、俺はゆっくり目を覚ました。
五感、問題なし。
身体の痛み、なし。
健康そのものだ。
「よいしょっと」
俺は体を起こすと、辺りの景色をきょろきょろ見まわした。
とても緑が豊かな森の中だ。
空気が澄んでいてすごく美味しい。
こんな美しい場所に来たのは、もう何年ぶりだろうか。
どうやら本当に、異世界に転生したみたいだな。
「もう……この辺りは危険なモンスターも出るんですから、いくら休憩するにしても寝ちゃダメです」
俺を起こしてくれた声の主が、少し頬を膨らませて注意してくる。
明らかに日本人とは異なる顔立ちの色白美人さんだ。
美しい金髪が、太陽の光を浴びてきらきら輝いている。
「それは悪かった。起こしてくれてありがとう」
「えへへ。どういたしまして」
感謝を伝えると、彼女はにっこり笑った。
ただ美人なだけじゃなく、愛嬌もあるかわいい子だ。
「初めましてですね。私はエリスといいます。アフィリシティにある冒険者協会の本部で働いています」
「冒険者協会?」
「そうですよ。えーっと、冒険者協会はこの大陸各地にもれなくあるはずなんですけど……」
「ああ、ごめん。俺は全く別のところというか、すごく遠いところから来たんだ。だからこの世界のこと、何にも知らなくて……」
エリスは不思議そうな表情を浮かべ、小さく首を傾げる。
でもすぐに切り替えて、俺に尋ねてきた。
「ちなみにあなた、お名前は何ですか?」
「ああ、クロ」
「クロさんですね。よろしくお願いします」
「うん。よろしく」
うん、ちゃんと言語も通じているし、会話ができている。
何よりも最初の異世界人が優しそうなエリスで、本当に良かった。
「うあ~っと」
俺は立ち上がって大きく伸びをした。
首も腰も痛くないし、周りの環境もきれいで最高の気分だ。
そして何よりも、この世界にはあのブラックな会社がない。
もちろん生きてくには働かなくちゃいけないかもだけど、少なくとも前みたいな社畜人生にはしたくないものだな。
この新しい世界を、いろいろと旅して見てみたい。
大好きな旅行、思う存分にしてやるぞ~。
「ちなみにクロさん、この後はどこかに行かれるんですか?」
「まだこの辺りのことが何も分からないからな……。とりあえず、そのアフィリシティってところに行ってみたいかな」
「おおっ、ちょうど良かったですね。私も今からアフィリシティに帰るところなので、ご案内しましょう」
「お、めっちゃ助かる。ありがと」
「お安い御用です」
エリスはどやっと胸を張ると、森の中を歩き始めた。
俺もその隣に並んで、アフィリシティとやらを目指し始める。
「さっき言ってたけど、この辺りには危険なモンスターが出るの?」
俺が尋ねると、エリスは何度も頷いた。
どうやら、相当危ないらしい。
俺を転生させてくれた声の主さん、もうちょっと場所を考えてくださってもよろしかったんじゃないんでしょうか。
心の中で尋ねてみても、あの柔らかな声は聞こえてこない。
もう異世界に着いてしまっているからかな。
まあ、転生させてくれたことには大感謝だし、こうして無事に目覚められたからいいけども。
「具体的にどんなモンスターが出るんだ?」
「そうですね……。種類も多くて、一概には言えないんですけど……あっ、例えばあんなのとか」
エリスが指差す先で、低木の茂みから姿を現したモンスターが、こちらをギラギラした目で睨みつけている。
姿はクマそのものだ。
四つん這いになってるけど、それでもかなり大きいし威圧感がすごい。
立ち上がったら、3~4mはあるんじゃないだろうか。
「ブラッディベアですね。モンスターすらも食らう貪欲で強力なモンスターです。もちろん、人も食べます」
冷静に解説しているようで、エリスは声も足も震えまくっている。
そして解説された内容も、それはそれは恐ろしい。
「ひょっとしなくても、やばいよな?」
「それはもう、これ以上ないくらいに」
「ガオオオオオ!」
ブラッディベアが咆哮を上げる。
エリスが震える左手で、俺の右手を掴んで叫んだ。
「逃げましょう!」
……おかしいんだよなぁ。
普通だったら、お腹をすかせたクマなんて見たら一目散に逃げだす。
ましてや相手は元の世界のクマよりはるかにでっかくて、はるかに狂暴なやつだ。
どう考えても逃げるのが正解だと思ってしまうはず。
それなのに。
「負ける気がしない」
俺は率直な感情を、言葉に出して呟いた。
全身に力がみなぎってくるのを感じる。
全く経験がないはずなのに、戦い方が分かる。
どうやってこのクマを倒したら良いかが分かる。
なるほどな。これが転生の時に“声”が言っていた能力ってやつだ。
あの時、頭に流れ込んできたいくつもの強そうな名前の技も、すべて使うイメージができる。
「ななななな何を言ってるんですかぁ!!!!????」
エリスは今にも泣きだしそうな顔で、ぶるぶる手を震わせながら俺を見つめる。
でも俺は至って冷静に、エリスと繋いでいない方の手――左手をブラッディベアに向けて伸ばした。
「【インフェルノ・ブレッド】」
獄炎の弾丸が、こちらへ向かってこようとするブラッディベアに放たれる。
サイズとしては拳くらい。
それが正確に眉間を捉えた。
そして次の瞬間、ブラッディベアの体全体が炎に包まれる。
「ギャオオオオオ!」
ブラッディベアは断末魔の叫びをあげて、崩れ落ちた。
そして文字通り真っ白な灰になる。
「へ……?」
危機が去った森の中に、エリスの呆然とした声が響いた。
「な? 負ける気がしないって言ったろ?」
「なななななななななな何者なんですかあなたはぁ!!!!!?????」
エリスの手はやはりぶるぶる震えている。
でも今度は恐怖によるものじゃない。
極度の興奮によるものだ。
「ブラッディベアを一撃って……! え!? 嘘でしょ!? 倒すだけですごいのに一撃!? ええっ!? もう……えええええ!?」
「落ち着け。落ち着け。呼吸しろ」
完全にテンパってしまったエリス。
俺は彼女を何とかなだめて、一度大きく深呼吸させる。
「すぅ~……はぁ~……。取り乱しました」
「これ倒したの、そんなにすごいのか。あんまり手応えはなかったんだけど」
「何を言ってるんですか! このブラッディベアのせいで、年間どれだけの被害が出ていることか!」
そう言うと、エリスは再び深呼吸して言った。
「どうやら私は、とんでもない人を起こしてしまったみたいですね」
「お、おう……」
「あなたならなれます。英雄に」
英雄……?
異世界で激しい戦闘とかいっぱいして、目立ってモテモテになって、みんなにワーキャー言われるあの主人公ポジションのことですか?
う~ん。
「興味ないなぁ」
だって自由気ままに旅したいもの。
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