チートがん積みで転生したけど、英雄とか興味ないので異世界をゆるっと旅行して楽しみます!~ところで《放浪の勇者》って誰のことですか?~

メルメア

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第一章 転生と『はじまりの都市』アフィリシティ

第5話 蕎麦

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 アフィリシティはさすが交易の中心地というだけあって、ありとあらゆるものが売られている。
 旅行に必要なものも、簡単にそろってしまった。
 そもそも長旅になる以上、最初っからあまりたくさんの荷物を持っていくのは得策じゃない。
 その時々で必要になったものは、旅先で購入すればいいのだ。

「とはいえ、なかなかの荷物になりましたね」

 人気の少ない場所で休憩しながら、購入したものを眺めてエリスが難しい顔をした。
 確かに、必要最小限とはいえなかなかの荷物だよな。
 そういえばチートを授かった時、流れ込んできた技の名前にこんなものがあったような……

「【アイテムボックス】」

 試しに自分の荷物に手をかざして呟いてみると、ひゅんっという音がして荷物が収納される。
 今度は取り出してみると、何の問題もなく取り出すことができた。
 うわー、便利。
 チート最高かよ。

「ななななな何ですか!? 手品ですか!?」
「【アイテムボックス】っていうスキルだな。荷物を別の空間にしまって持ち運べる。エリスの荷物もしまっておこうか?」
「そうですね……。じゃあ、あまり頻繁に使わないものはお願いします。それにしてもやっぱりクロさんすごい……」
「いやいや。じゃあ、この辺はしまっちゃうな」
「はい。お願いします」

 たくさんあった荷物も、それぞれがカバンをひとつ持つのみになった。
 あとは全てアイテムボックスの中へ。
 これでだいぶ、移動が楽になったぞ。

「服、食料、水、その他の日用品……。一通り買ったはずですけど、抜けはありませんか?」
「大丈夫じゃないかな。まあ、何か必要になったらその場その場で買えばいいだろ」
「そうですね。では私は、冒険者協会で旅に出る手続きをしてきます。その間、クロさんはどうしますか?」
「うーん、せっかくだから、この都市をもうちょっと見てまわろうかな」
「分かりました。じゃあ、街で遊ぶお金をあげます」
「ありがとう」

 エリスは小銭が入った小さな布袋を渡してくれる。
 ありがたく受け取っておこう。

「それでは夜の6時ごろに、噴水広場で待ち合わせということで」
「りょーかい」

 エリスと一旦は手を振って別れ、気の向くままにアフィリシティを歩いてみる。
 屋台が建ち並ぶエリアや住宅街、さまざまな店舗が軒を連ねるエリアなど、本当に多様で大きな都市だ。
 とても一日ではまわり切れないな。

「とりあえず……屋台街に行ってみるか」

 さっきご飯を食べたとはいえ、買い物に歩きまわったところだ。
 それなりにお腹も空いている。
 美味しそうな匂いに釣られて、俺は屋台が建ち並ぶエリアへと足を伸ばした。
 肉料理、パン、ジュースにお酒……。
 いろいろなものが売られている。
 どれも食欲を刺激するものばかりだ。

「この辺は麺料理が並んでるな。スパゲッティに蕎麦に……は!? 蕎麦!?」

 間違いなく、屋台には蕎麦の2文字が書かれている。
 ちらっと覗いてみると、ちょんまげ頭の男性が蕎麦を茹でている。
 まじかまじか。異世界の蕎麦、めちゃくちゃ気になる。

「ひとりいいですか?」
「いらっしゃい!」

 のれんを上げて席に座ると、店主が威勢よく迎えてくれた。
 他にも2人ほど、先客が蕎麦を食している。

「何にしやすか?」
「えーっと、じゃあざる蕎麦で」
「へいっ!」

 店主は相変わらずの威勢のよさで、蕎麦を茹で始めた。
 どうやら他の客たちは蕎麦を食べ慣れていないようで、くるくるフォークで巻いて食べている。
 一応お箸も用意されてはいるのだが、使っている様子はない。

「へい! ざるね!」

 少ししてから、目の前にざる蕎麦とつゆ、それに薬味が置かれた。
 見た目は本当に日本の蕎麦そのもの。
 さてお味は……

「ずぞぞぞぞっ……うまい!」
「ありがとうごぜえやす」

 まず蕎麦の風味がすごく強い。
 麺自体が美味しい上に、きりっと冷えて出汁のきいた蕎麦つゆが相性ばっちしだ。
 こんなにクオリティの高い蕎麦が、まさか異世界で食べられるなんてな。

「お客さん、ひょっとしてエドの出身ですか?」
「エド……?」
「ええ。《和の国》エドでござんす」
「あー、いや、違うかな」
「あっ、そうですかい。いや箸遣いが上手だし、蕎麦も上手いことすすってるんで、そうじゃねえかと思ったんでさぁ」
「エドって行ったことがないんだけど、どんな場所なんだ?」

 俺が尋ねると、店主はきょとんとした表情を浮かべた。
 まるでエドに来たことがないのに、箸を使って蕎麦を上手く食べられるのかって感じだ。
 でもすぐに笑顔になると、水を一口飲んで話し始めた。

「エドってのは、このアフィリシティからするとだいぶ遠い場所にありやす。通称はさっきも言った《和の国》。文化も食も、他の国とは一風変わった独特の国でござんす。人によっちゃ、《侍の国》なんて呼ぶ人もいやすね」

 《侍の国》か。
 確かに店主もちょんまげだもんな。
 イメージとしては、日本の江戸時代に近い国なのだろう。
 エドだけに。

「いつか行ってみたいな」
「ええ。ぜひ」

 きっとエリスとの旅の過程で、いつか訪れることになるだろう。
 エリスは全ての国をまわるって言ってたからな。
 全ての国をまわる。
 世界一周ってわけだ。
 まるで夢みたいな話だな、世界一周旅行ができるなんて。

「蕎麦湯はどうです?」
「いただきます」

 店主自慢の蕎麦に舌鼓を打ちながら、俺はこれからの旅に期待を抱くのだった。
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