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第二章 《宝石の国》エメラ
第8話 出身
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お昼の休憩場所は、ごくごく一般的な小さい農村だった。
ただ俺たちと同じように旅の経由地点としている人はいるようで、それなりに様々な服装の人がいる。
それに伴って、飲食店や土産屋も小規模ではあるが展開されていた。
農業に加えて、こういうところでも収入を得ているのだろう。
「それではお待ちかね、昼食の時間です」
エリスがバスガイドみたく先導して、俺を村の食事処へいざなう。
そして看板を指し示すと言った。
「本日のお食事は、こちらの店をお選びしました!」
「お選びも何も、ここしかご飯屋さんはないもんな」
「もう~、雰囲気ですよ雰囲気!」
村で取れた野菜を中心とした、カラフルなワンプレートが運ばれてくる。
何か特別に高級な材料を使っているわけじゃないんだけど、新鮮な野菜はそれだけで美味しい。
味に大地を感じるような力強さもある。
「これも全部、冒険者協会のお金で食べてるんだよなぁ」
「そうですよ。結構な額、もらっちゃいましたから」
エリスも俺も、それぞれカバンの中に冒険者協会から支給されたお金が入っている。
でも全額じゃない。
結構な金額だったので、失くしたり盗まれたりしないように、大半は【アイテムボックス】の中に入っている。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした」
「さて、それでは行きましょうか。まだまだ、エメラまでの道のりは長いですよ」
食事を終えて手を合わせたのも早々に、エリスが立ち上がる。
店を後にして、ちらっと土産物を眺めてから馬車に戻った。
すでに御者さんは、出発の準備を整えている。
「ではまた、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
馬車に乗りこむと、やはりゆっくり馬が動き始めた。
お腹いっぱい、ぽかぽかした陽気、頬を撫でる柔らかい風。
またまた眠くなってしまいそうだ。
でも寝てばかりいるのも、それはそれでもったいないような。
「クロさん、ちょっと聞いてもいいですか?」
「なんだ?」
「クロさんがいた国のこと、知りたいな~って。すごく遠いところって言ってたじゃないですか」
「ああ、そうだな……。俺のいた国は日本って言うんだ」
「にほん……」
「そう。食文化とかは、エドに近いかもしれない」
屋台で食べたざる蕎麦。
あれは紛れもなく日本の味だ。
「ここでいう大陸っていうのが、何だろう……地球に当たるのかな? この世界風に言うと、たぶん《科学の国》になるんだと思う」
俺はポケットからスマホを取り出して、エリスに見せながら続けた。
「こういうスマホとか、あとは馬車よりうんと早い車とか電車とか飛行機っていう乗り物とか、そういう便利なものはたくさんあったな」
「すごいです! スマホみたいにすごいものがたくさんあるなんて!」
「まあ便利っちゃ便利だけど、良いところばっかりでもなかったぞ? 地球にもたくさん国があったけど、ケンカばっかりしてたし、夜遅くまで死ぬ気で働いてる人も多かったし」
挙句の果てに体力尽きて階段から落っこちる人はいるし。
「この大陸の国々は、みんな仲が良いのか?」
「そうですね。それぞれが重要な役割を担ってますから、どこかひとつが欠けるだけで大変なんです。だからみんな平和に仲良くしてます」
「それがいいよ。平和が一番だ」
ちらっと窓の外に視線をやれば、相変わらずの青空と白い雲、緑の草原。
本当に平和な景色だよな。
そりゃこんなところじゃ、ケンカするのもバカらしくなってくる。
「逆にエリスは、生まれてからずっとアフィリシティに住んでるのか?」
「いえ、私が生まれたのはミエルダという国です。《音楽の国》って呼ばれてるところですね」
「何か陽気で楽しそうな国だな」
「とっても楽しいですよ~。父親は楽器の演奏者で、母は歌手なんです。私も小さい頃から、いろんな楽器を教えてもらって」
「そうなんだ。じゃあ、アフィリシティにはいつ頃?」
「学生の時です。アフィリシティにある大学に合格して、ここへ来ました」
アフィリシティは中心都市で、そこにある大学に合格……。
あれ? もしかしてエリスって、めちゃくちゃ頭が良い?
「大学を卒業して、そのままアフィリシティで働き始めたんですよ」
「それで今に至ると」
「はい。今回はもちろんミエルダにも滞在するので、里帰りが楽しみです」
「ご両親も喜ぶだろうな」
「ええ。ちゃんとクロさんのこと、紹介しますからね」
「お、おう」
仕事仲間としてだよな。
用心棒としてだよな。
危ない危ない。
ご両親に紹介なんて、誤解を招きかねないぞ。
「もうすっかり、アフィリシティも見えなくなっちゃいましたね……」
ぼんやりとエリスが呟いた。
だいぶ今さらだな。
結構序盤の方で、もう見えなくなってるぞ。
「何か今になって、よりドキドキワクワクしてきました。本当に私たちこれから大陸を一周するんですよね」
「不安か?」
「いえいえ。クロさんがいれば怖いものなしですよ。でも何だか、私たちすごいことをしようとしてるんじゃないかって思って」
「確かにドキドキするな」
天気は変わらず快晴。
風は俺たちを後押しする南風。
馬車に揺られて目指すは最初の目的地、《宝石の国》エメラへ。
ただ俺たちと同じように旅の経由地点としている人はいるようで、それなりに様々な服装の人がいる。
それに伴って、飲食店や土産屋も小規模ではあるが展開されていた。
農業に加えて、こういうところでも収入を得ているのだろう。
「それではお待ちかね、昼食の時間です」
エリスがバスガイドみたく先導して、俺を村の食事処へいざなう。
そして看板を指し示すと言った。
「本日のお食事は、こちらの店をお選びしました!」
「お選びも何も、ここしかご飯屋さんはないもんな」
「もう~、雰囲気ですよ雰囲気!」
村で取れた野菜を中心とした、カラフルなワンプレートが運ばれてくる。
何か特別に高級な材料を使っているわけじゃないんだけど、新鮮な野菜はそれだけで美味しい。
味に大地を感じるような力強さもある。
「これも全部、冒険者協会のお金で食べてるんだよなぁ」
「そうですよ。結構な額、もらっちゃいましたから」
エリスも俺も、それぞれカバンの中に冒険者協会から支給されたお金が入っている。
でも全額じゃない。
結構な金額だったので、失くしたり盗まれたりしないように、大半は【アイテムボックス】の中に入っている。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした」
「さて、それでは行きましょうか。まだまだ、エメラまでの道のりは長いですよ」
食事を終えて手を合わせたのも早々に、エリスが立ち上がる。
店を後にして、ちらっと土産物を眺めてから馬車に戻った。
すでに御者さんは、出発の準備を整えている。
「ではまた、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
馬車に乗りこむと、やはりゆっくり馬が動き始めた。
お腹いっぱい、ぽかぽかした陽気、頬を撫でる柔らかい風。
またまた眠くなってしまいそうだ。
でも寝てばかりいるのも、それはそれでもったいないような。
「クロさん、ちょっと聞いてもいいですか?」
「なんだ?」
「クロさんがいた国のこと、知りたいな~って。すごく遠いところって言ってたじゃないですか」
「ああ、そうだな……。俺のいた国は日本って言うんだ」
「にほん……」
「そう。食文化とかは、エドに近いかもしれない」
屋台で食べたざる蕎麦。
あれは紛れもなく日本の味だ。
「ここでいう大陸っていうのが、何だろう……地球に当たるのかな? この世界風に言うと、たぶん《科学の国》になるんだと思う」
俺はポケットからスマホを取り出して、エリスに見せながら続けた。
「こういうスマホとか、あとは馬車よりうんと早い車とか電車とか飛行機っていう乗り物とか、そういう便利なものはたくさんあったな」
「すごいです! スマホみたいにすごいものがたくさんあるなんて!」
「まあ便利っちゃ便利だけど、良いところばっかりでもなかったぞ? 地球にもたくさん国があったけど、ケンカばっかりしてたし、夜遅くまで死ぬ気で働いてる人も多かったし」
挙句の果てに体力尽きて階段から落っこちる人はいるし。
「この大陸の国々は、みんな仲が良いのか?」
「そうですね。それぞれが重要な役割を担ってますから、どこかひとつが欠けるだけで大変なんです。だからみんな平和に仲良くしてます」
「それがいいよ。平和が一番だ」
ちらっと窓の外に視線をやれば、相変わらずの青空と白い雲、緑の草原。
本当に平和な景色だよな。
そりゃこんなところじゃ、ケンカするのもバカらしくなってくる。
「逆にエリスは、生まれてからずっとアフィリシティに住んでるのか?」
「いえ、私が生まれたのはミエルダという国です。《音楽の国》って呼ばれてるところですね」
「何か陽気で楽しそうな国だな」
「とっても楽しいですよ~。父親は楽器の演奏者で、母は歌手なんです。私も小さい頃から、いろんな楽器を教えてもらって」
「そうなんだ。じゃあ、アフィリシティにはいつ頃?」
「学生の時です。アフィリシティにある大学に合格して、ここへ来ました」
アフィリシティは中心都市で、そこにある大学に合格……。
あれ? もしかしてエリスって、めちゃくちゃ頭が良い?
「大学を卒業して、そのままアフィリシティで働き始めたんですよ」
「それで今に至ると」
「はい。今回はもちろんミエルダにも滞在するので、里帰りが楽しみです」
「ご両親も喜ぶだろうな」
「ええ。ちゃんとクロさんのこと、紹介しますからね」
「お、おう」
仕事仲間としてだよな。
用心棒としてだよな。
危ない危ない。
ご両親に紹介なんて、誤解を招きかねないぞ。
「もうすっかり、アフィリシティも見えなくなっちゃいましたね……」
ぼんやりとエリスが呟いた。
だいぶ今さらだな。
結構序盤の方で、もう見えなくなってるぞ。
「何か今になって、よりドキドキワクワクしてきました。本当に私たちこれから大陸を一周するんですよね」
「不安か?」
「いえいえ。クロさんがいれば怖いものなしですよ。でも何だか、私たちすごいことをしようとしてるんじゃないかって思って」
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天気は変わらず快晴。
風は俺たちを後押しする南風。
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