チートがん積みで転生したけど、英雄とか興味ないので異世界をゆるっと旅行して楽しみます!~ところで《放浪の勇者》って誰のことですか?~

メルメア

文字の大きさ
9 / 14
第二章 《宝石の国》エメラ

第9話 荘厳

しおりを挟む
 馬車に揺られること2日。
 やはり穏やかな気候の中で進んでいると、大きな看板が見えてきた。
 色とりどりの宝石が描かれ、中央には大きく『ようこそ! 《宝石の国》エメラへ!』と記されている。

「あそこが国教か?」
「そうです。いよいよ最初の国、エメラに入ります」
「あの看板のところで、写真を撮っときたいな」
「いいですね。御者さん! 看板のところで停まっていただけますか?」
「了解です!」

 遠目からでも大きく見えたけど、実際に近寄って見るとかなり大きい。
 これはインカメじゃ写せないな。

「御者さんすいません。ひとつお願いしてもいいですか?」
「何でしょう?」

 俺はカメラを起動したスマホを渡してお願いした。

「ここに俺とエリス、それから看板が写るようにして、ここの丸いのを触ってください」
「分かりました……?」

 御者さんは見慣れない機械にきょとんとしているが、俺とエリスが看板の前に立つとスマホを向けてくれた。
 俺たちはスマホに向かって、笑顔を浮かべる。
 数秒の沈黙の後、御者さんが腕で大きく丸を作った。

「これでいいですかね?」
「ばっちりです。ありがとうございます」
「どういたしまして。それにしても面白い装置ですね」

 御者さんが撮った写真は、ブレることなく必要なものがしっかり画角に収まっている。
 100点満点だ。

 俺はスマホを受け取り、看板の方に戻った。
 そして大きくジャンプして、国境を飛び越える。
 着地した場所はエメラの土。

「入国!」

 その様子を見ていたエリスが、くすっと笑って言った。

「もう……。クロさん、はしゃぎすぎですよ」
「いいだろ? 最初なんだから」
「ふふっ。それもそうですね。では私も」

 エリスも腕を振って勢いをつけると、ジャンプして俺の横に着地した。

「入国です!」
「エリスは初めてじゃないけどな」
「いいんですよ。記念すべき大陸一周の1か国目なんですから」

 ひとしきりふざけたところで、再び馬車に乗って移動を開始する。
 エメラに入ったとはいえ、途端に周りの景色が変わるわけじゃない。
 でも数十分進んで行くと、徐々にごつごつした岩が目立つようになってきた。

「だんだん、風景が変わってきたな」
「ええ。もう少しすると、鉱産資源が豊富に産出される土地に入ります」
「いよいよ本格的に《宝石の国》ってわけだ」
「そうですね。ひとまず私たちは、鉱区を抜けてエメラの中心都市ルビに向かいます。冒険者協会のエメラ支部がそこにありますので」

 そういえば俺たち、冒険者協会の各支部をまわるために旅に出たんだよな。
 すっかり忘れていた。

「ちなみにエリスが言ってた『七彩光の洞窟』っていうのは、どの辺りにあるんだ?」
「エメラの南部、ルビも越えたもっと先の方ですね。ひとまずルビで仕事を済ませて、それから向かうことにしましょう」
「りょーかい」

 そうこうしているうちに、地面が深く広く掘られていたり、崖の壁面に大きく穴が開いていたりする場所が見えてきた。
 ここが鉱石を採掘している鉱区なのだろう。
 それを通り抜けて進むと、やがて高い城壁が見えてきた。
 アフィリシティほどではないが、それでも十分に迫力がある。

「あれが?」
「そう、ルビです」

 《宝石の国》エメラの中心都市、ルビ。
 その門の前で、ゆったりと馬車が停止する。
 このふかふか快適馬車とは、ここでお別れだ。

「ありがとうございました」
「ありがとうございました」
「こちらこそ、ご利用ありがとうございました」

 御者さんと馬に別れを告げ、俺は改めてルビの城壁を見上げる。
 さすがに宝石で装飾されていたりはしないが、細かいレリーフが彫られていて、なかなかに見ごたえのあるものだ。

「ひとまず、記念撮影ですね」
「だな」

 早くも恒例となった節目節目の記念撮影を終えると、いよいよ門をくぐってルビの中へ。
 都市に入った途端、俺は思わず息を呑んだ。
 中心のやや小高い位置に、大きな建物がある。
 それは美しい彩り豊かな宝石で装飾され、太陽の光を浴びながら眩いばかりに輝いていた。

「まじ……か……」

 予想以上だぞ、《宝石の国》。
 俺は写真を撮るなどという考えにすら至らず、ただ呆然として荘厳な建築を眺める。
 トータルでいくらぐらいの価値があるんだろうという下衆な勘繰りが、ひどくあほらしく思えるほどに、圧巻の美しさでたたずんでいた。

「最初は驚きますよね」
「それはもう本当にびっくりした。きれいだな……」
「私も最初に見た時、クロさんと全く同じ場所で同じように固まりました。今見ても、息をするのも忘れちゃうくらいです」
「あれは何の建物なんだ?」
「この国の主要な施設が集まっているんです。冒険者協会のエメラ支部も、あの中の3階にあります」

 ということは、俺たちは今からあの中に入っていくわけだ。
 でもきっとこれは、遠くから全体を眺めてこそ魅力を最大限に味わえるんだろうな。
 近づいたらここの宝石はよりはっきり見えるだろうけど、ここまでの輝きが重なり合った荘厳さは薄れてしまうはず。

「行きましょうか」

 エリスが建物に向かって歩き出す。
 俺はもう一度、この美しさを目に焼き付けると、金属を加工するカンカンという音が鳴り響く都市の中を歩き始めたのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

貞操逆転世界の「内助の功」~掃除と料理を極めた俺が、脳筋幼馴染を女王にするまで~

ありゃくね
ファンタジー
前世の記憶が目覚めたそこは、男女の貞操が逆転した異世界だった。 彼が繰り出すのは、現代知識を活かした「お掃除アイテム」、そして胃袋を掴む「絶品手料理」。 ただ快適に暮らしたいだけのマシロの行動は、男に飢えた女騎士たちを狂わせ、国の常識さえも変える一大革命へと繋がっていく。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

処理中です...