チートがん積みで転生したけど、英雄とか興味ないので異世界をゆるっと旅行して楽しみます!~ところで《放浪の勇者》って誰のことですか?~

メルメア

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第二章 《宝石の国》エメラ

第10話 後輩

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 煌めく建物の中に入り、階段を上っていく。
 3階に行くと、エリスの言っていた通り『冒険者協会エメラ支部』と書かれていた。
 木製の扉を押し開けると、テーブルや椅子が並べられていた。
 何人かの冒険者たちが、談笑したり食事したりしている。
 そして右手にはカウンターがあり、受付らしき職員が数人いた。
 そのうちの1人に近づき、エリスが声を掛ける。

「久しぶりですね~、シャイナさん」
「わー! エリス先輩じゃないですか! お久しぶりです!」

 黒髪でショートカットの女性が、エリスを見て目を輝かせる。
 どうやら2人は知り合いらしい。
 シャイナという受付の女性はカウンターの向こうから出てきて、エリスに抱きついた。

「会いたいな~って思ってたんです!」
「それは良かったです。私も会えて嬉しいですよ」
「えーっと、それでこちらの方は?」

 エリスに抱きついたまま、シャイナは俺に視線を向ける。
 自己紹介しようとしたのだが、言葉が出る前にシャイナが再び口を開いた。

「まままままさか旦那さんですか!? 先輩、わざわざ私にご結婚の報告に!?」

 うん。早とちりがすぎる。
 シャイナ、なかなかに面白い子だな。

「違いますよ~」

 エリスはけらけら笑いながら答えた。

「今日来たのは、れっきとした仕事のためですよ。彼はクロさん、私の旅の用心棒です」
「そそそそうでしたかっ! 早とちりしてすいません!」
「いえいえ。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします!」

 シャイナはビシッと頭を下げる。
 ひとしきりの挨拶が終わったところで、俺は気になっていたことを尋ねた。

「2人はどういう関係なんだ? エリスは先輩って呼ばれてるみたいだけど」
「シャイナさんは、私の大学の後輩なんです。私はアフィリシティに残りましたけど、彼女は地元のここエメラに戻って働いているんですよ」
「それで先輩後輩なんだな」
「はい! エリス先輩は、私がいっちばん憧れて大好きな先輩なんです!」

 どうやらシャイナは、本当にエリスのことが大大大好きみたいだ。
 何せずっとくっついて離れないもんな。
 ……LIKEの好きか、LOVEの好きかが怪しくなってくるけども。

「ひとまず、冒険者協会からの届け物をお渡ししますね。クロさん、あれを出してもらえますか?」
「分かった」

 俺は【アイテムボックス】から、エメラ支部宛の届け物を取り出す。
 何もなかったはずの場所に、突如として小包が現われ、シャイナは目を白黒させた。

「何ですか今の!?」
「ふふっ。驚きますよね。クロさんのスキルなんです」
「すごいです!」

 感嘆するシャイナに、エリスは俺から受け取った荷物を渡す。
 中身は宛先によってさまざまで、それぞれ異なるんだそうだ。

「それから……次は各種資料のチェックですね。シャイナなら、ちゃんとやってくれてると思いますけど」
「分かりました。そしたらお持ちするので、奥の部屋で待っていていただいていいですか?」
「ええ。よろしくお願いします」

 慌ただしく動き出したシャイナと職員たちを背に、俺たちは奥の部屋へと入る。
 備え置かれていたふかふかのソファーに、俺はゆったり体を沈めた。
 隣にエリスも座る。
 馬車のシートも良かったけど、やっぱり本物のソファーは格別だなぁ。

「資料のチェックって、どんなことするんだ?」
「財務状況とか、冒険者たちの稼働実績、どんな依頼が来てどうやって対処したのかなどいろいろです」
「それなりに時間がかかりそうだな」
「大丈夫です。てきぱき終わらせますから」

 エリスは腕まくりして、自信ありげに胸を張る。
 頼もしいな。
 しばらくしてから、シャイナが紙束を抱えて入ってきた。
 これがエリスの言っていた各種資料なのだろう。
 思っていたほど、多くはない。

「お待たせしました、先輩」
「ありがとうございます」
「ちなみに先輩、今日の夜ってご予定あります?」
「いえ、特にありませんよ」
「じゃあ一緒にご飯でもどうですか!? もちろんクロさんも!」
「それはいいですね。でも……」

 エリスは笑顔のまま、少し間を置いて言った。

「まずは仕事ですよ」
「は、はい……」

 シャイナは小さく肩をすくめると、向かいに座って資料の説明を始めた。
 エリスはそれを真剣な顔で聞いている。
 資金管理にしても職業形態にしても、元の世界とはまるで違うので、俺が理解できるのはせいぜい半分程度といったところだ。
 でもどんな依頼があったのかとか、どんなモンスターが出没したのかとか、話を聞いている分には面白い。

「はい。問題ありませんね」

 全ての資料の説明が終わって、エリスがそう言った時には、もうすっかり夜になっていた。
 お腹が空いて仕方がない。

「シャイナさん、お疲れ様でした」
「とんでもないです。エリス先輩こそ、到着してすぐこの仕事量はさすがの体力ですね」
「ふふっ。まあ、これが毎日続いているわけではないですから」

 そうなんだよな。
 俺だって一日残業するくらいなら、正直何てことなかった。
 でもそれが毎日続くと、体力やらメンタルやらいろんなものが削り取られていくんだよ。

「ちなみにエリス先輩は、いつごろまでエメラにいらっしゃるんですか?」
「明後日まではいますよ。そこからは次の国へ行こうかなと思ってます。『七彩光の洞窟』なんかも観光しようと話してるんです」
「それはいいですね~」

 シャイナはそう言うと、目の前の資料をきれいに整えた。
 これにて仕事は一件落着って感じかな。

「エリス先輩、クロさん、飲みに行きましょう!」
「そうしましょう!」

 仕事から解放された2人は、元気よく立ち上がる。
 そして俺たち3人は、夜のルビへと飛び出して行くのだった。
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