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第34話 村長の依頼と祭りと村の過去
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「ふぁっふぁっふぁ。完全に忘れとったわい」
リルからお祭りについて聞いた日の午後。
具体的なことを聞きに行くと、村長はそう言って笑った。
「まあ、リルの言っておったことそのまんまじゃ。おぬしに今度の祭りの料理を任せたい。内容はおぬしに任せる、食材は村のものは好きに使ってよい。やってくれるな?」
「まあ、やりますけども。でも、結構な量になりますよね?」
「うむ。村の全員の分じゃからな。特に祭りの時は、みんなテンションが高く食欲も旺盛になる。普通の想定よりも多い量を作らねば、料理が足りんくなる」
卵にしろ各種ミルクにしろ、ぬいぐるみたちの生産スピードがかなり速く、ストックはしっかりとある。
これから加算される分を考えれば、食材が足りなくなることはないはずだ。
村の食糧庫にも大量の野菜や穀物、肉があるし。
「頑張ってみます。でも俺ひとりじゃ回らないんで、さすがに手伝ってもらえますよね?」
「当然じゃ。祭りはみんなで協力して作り上げるもの。おぬしには料理部門のリーダーになってもらえばよいだけじゃからな。全てをひとりでやる必要はないわい」
「分かりました」
この森の中には、ジュースの実みたいな面白い食材もたくさんある。
そこへ、俺が持つこの世界からしたら斬新な料理の知識が合わされば、なかなか面白いものができるんじゃないか?
あれこれ考えてみると、かなり楽しみになってきた。
何か道具が必要になったら、リルに頼めばいいしな。
俺の畑仕事がどんどん増えていきそうな気がするけども。
「ちなみにこのお祭りって、何のためのものなんですか?」
「何のためとは?」
「何かを祝うとか、記念するとか」
「ああ、そういうことじゃな。うむ。この機会にちゃんとおぬしに説明しておこう」
村長はコホンとひとつ咳払いすると、真面目な顔で話し始めた。
「今度の祭りは、この村が生まれたことを記念する祭りなんじゃ。この村ができたのは、およそ1000年ほど前。おぬしのような人間からすれば、はるか昔のことに感じられるじゃろうがな」
「ってことは、村長はこの村ができた時からずっと住んでるんですね」
「その通りじゃ。昔はここからかなり離れた場所に、大きなエルフの村があった。じゃがその場所が、約1000年前に災害に襲われてな。村は消滅したんじゃが、生き延びた者たちが分散して、各地に新しく村を作った。そのうちのひとつが、この場所じゃ」
「災害って……地震とかですか?」
俺の尋ねると、村長はゆっくり首を横に振った。
額に刻まれたしわが、にわかに深くなる。
「竜災じゃよ」
「りゅう、さい……?」
「ああ。当時の村は竜に襲われて、壊滅したんじゃ」
「それが……1000年前の災害……」
「そうじゃ。もうあれは災害じゃよ。わしらの力じゃ、どうすることもできんかったのじゃからな」
「そんな……。エ、エリサとかは?」
「ほほう。エリサのこともすでに聞いておるんじゃな。あいにく彼女は、襲撃の際に村を離れておった。戻ってきた時に村が消滅していたんで、相当なショックを受けたんじゃろうな。必死に散り散りになったわしらを探し当て、泣いて詫びておった」
「でも、彼女は悪くないんじゃ……」
「その通りじゃ。わしらも責任を感じる必要はないと言った。そこからじゃよ。エリサが死に物狂いで努力して、未来視と発明の術を身に着けるまでになったのは」
「生まれながらの天才ってわけじゃないんですね」
「うむ。彼女は誰よりも努力して今の自分を作り上げておる」
またひとつ、知らなかったことを知ったな。
しんみりしてしまった場の雰囲気を察したのか、村長は再び咳ばらいをひとつ。
そして笑って口を開いた。
「まあ、今回の祭りはそんな暗いものじゃないわい。生き延びたことを喜ぶ祭り、歓喜の祭りじゃからな。それにふさわしい料理、期待しておるぞ」
「分かりました。全力を尽くします」
俺は力強く、村長にそう答えた。
そして、ふと気になったことを尋ねる。
「ちなみに分散した他の村はどうなってるんですか?」
「それぞれ、何とか無事に残っておるぞ。今でも交流は続いておるしな。例えば海沿いの村なんかは、定期的に塩をよこしてくれる。他にもいろいろと、それぞれの土地の特性を活かした資源の交換などは行っておるんじゃよ」
なるほど。
塩をはじめ、明らかにこの森のど真ん中にあるはずのないものが奇跡的にあったのは、そういうわけだったのか。
たまたま俺がまだ、他の村のエルフが来訪するタイミングに出会っていないだけなのだろう。
「もしかするとじゃが、他の村のエルフも幾人かは今度の祭りに来るやもしれん。その時は紹介しよう」
「ありがとうございます」
他にもお客さんが来るとなれば、ますます手は抜けないな。
この村の食材でできる最高の人間の料理、作り上げてみせるぞ……!
リルからお祭りについて聞いた日の午後。
具体的なことを聞きに行くと、村長はそう言って笑った。
「まあ、リルの言っておったことそのまんまじゃ。おぬしに今度の祭りの料理を任せたい。内容はおぬしに任せる、食材は村のものは好きに使ってよい。やってくれるな?」
「まあ、やりますけども。でも、結構な量になりますよね?」
「うむ。村の全員の分じゃからな。特に祭りの時は、みんなテンションが高く食欲も旺盛になる。普通の想定よりも多い量を作らねば、料理が足りんくなる」
卵にしろ各種ミルクにしろ、ぬいぐるみたちの生産スピードがかなり速く、ストックはしっかりとある。
これから加算される分を考えれば、食材が足りなくなることはないはずだ。
村の食糧庫にも大量の野菜や穀物、肉があるし。
「頑張ってみます。でも俺ひとりじゃ回らないんで、さすがに手伝ってもらえますよね?」
「当然じゃ。祭りはみんなで協力して作り上げるもの。おぬしには料理部門のリーダーになってもらえばよいだけじゃからな。全てをひとりでやる必要はないわい」
「分かりました」
この森の中には、ジュースの実みたいな面白い食材もたくさんある。
そこへ、俺が持つこの世界からしたら斬新な料理の知識が合わされば、なかなか面白いものができるんじゃないか?
あれこれ考えてみると、かなり楽しみになってきた。
何か道具が必要になったら、リルに頼めばいいしな。
俺の畑仕事がどんどん増えていきそうな気がするけども。
「ちなみにこのお祭りって、何のためのものなんですか?」
「何のためとは?」
「何かを祝うとか、記念するとか」
「ああ、そういうことじゃな。うむ。この機会にちゃんとおぬしに説明しておこう」
村長はコホンとひとつ咳払いすると、真面目な顔で話し始めた。
「今度の祭りは、この村が生まれたことを記念する祭りなんじゃ。この村ができたのは、およそ1000年ほど前。おぬしのような人間からすれば、はるか昔のことに感じられるじゃろうがな」
「ってことは、村長はこの村ができた時からずっと住んでるんですね」
「その通りじゃ。昔はここからかなり離れた場所に、大きなエルフの村があった。じゃがその場所が、約1000年前に災害に襲われてな。村は消滅したんじゃが、生き延びた者たちが分散して、各地に新しく村を作った。そのうちのひとつが、この場所じゃ」
「災害って……地震とかですか?」
俺の尋ねると、村長はゆっくり首を横に振った。
額に刻まれたしわが、にわかに深くなる。
「竜災じゃよ」
「りゅう、さい……?」
「ああ。当時の村は竜に襲われて、壊滅したんじゃ」
「それが……1000年前の災害……」
「そうじゃ。もうあれは災害じゃよ。わしらの力じゃ、どうすることもできんかったのじゃからな」
「そんな……。エ、エリサとかは?」
「ほほう。エリサのこともすでに聞いておるんじゃな。あいにく彼女は、襲撃の際に村を離れておった。戻ってきた時に村が消滅していたんで、相当なショックを受けたんじゃろうな。必死に散り散りになったわしらを探し当て、泣いて詫びておった」
「でも、彼女は悪くないんじゃ……」
「その通りじゃ。わしらも責任を感じる必要はないと言った。そこからじゃよ。エリサが死に物狂いで努力して、未来視と発明の術を身に着けるまでになったのは」
「生まれながらの天才ってわけじゃないんですね」
「うむ。彼女は誰よりも努力して今の自分を作り上げておる」
またひとつ、知らなかったことを知ったな。
しんみりしてしまった場の雰囲気を察したのか、村長は再び咳ばらいをひとつ。
そして笑って口を開いた。
「まあ、今回の祭りはそんな暗いものじゃないわい。生き延びたことを喜ぶ祭り、歓喜の祭りじゃからな。それにふさわしい料理、期待しておるぞ」
「分かりました。全力を尽くします」
俺は力強く、村長にそう答えた。
そして、ふと気になったことを尋ねる。
「ちなみに分散した他の村はどうなってるんですか?」
「それぞれ、何とか無事に残っておるぞ。今でも交流は続いておるしな。例えば海沿いの村なんかは、定期的に塩をよこしてくれる。他にもいろいろと、それぞれの土地の特性を活かした資源の交換などは行っておるんじゃよ」
なるほど。
塩をはじめ、明らかにこの森のど真ん中にあるはずのないものが奇跡的にあったのは、そういうわけだったのか。
たまたま俺がまだ、他の村のエルフが来訪するタイミングに出会っていないだけなのだろう。
「もしかするとじゃが、他の村のエルフも幾人かは今度の祭りに来るやもしれん。その時は紹介しよう」
「ありがとうございます」
他にもお客さんが来るとなれば、ますます手は抜けないな。
この村の食材でできる最高の人間の料理、作り上げてみせるぞ……!
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