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3章 龍王国

第78話 再会したのじゃ

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「久しいのう。三カ月ぶりくらいか?」

「お久しぶりです、ナレアさん。お元気でしたか?」

そう、見覚えのある銀髪の少女......ナレアさんがいたのだ。

「うむ。お主も息災なようで何よりじゃ。」

「こんなところで会うなんて思いませんでしたよ。」

「そうじゃのう。龍王国で会うにしても珍しい場所じゃな。山越えをしてきたのか?」

「えぇ、そうなんです。今日ここに来ました。」

「なるほどのう。妾は一昨日じゃな。しかし龍王国に来ているとはな。」

ナレアさんは嬉しそうに笑っている。

「お祭りの時に会えなかったのでもう一度会うのは難しいと思っていましたけど、お会いできて嬉しいです。」

「ほほ、照れるのう。しかし......そうじゃ!お主に会ったら言いたいことがあったのじゃ。」

そういうとナレアさんはこちらに距離を詰めてくる。
肩に掴まっているシャルが少し警戒を強めたようだ。
シャルの事を軽く撫でるとナレアさんに向きなおる。

「なんでしょうか?」

「お主!ダンジョン攻略者じゃったのじゃな!祭りの会場で見た時は叫んでしまったぞ!」

そういえばダンジョンの話が出た時ちょっと話題を逸らしたっけ......。

「随分他人事のようにダンジョンが攻略されたとか語っておったのう......。」

うん、しっかり覚えてらっしゃるようで......。

「そ、そうでしたっけ?」

「まぁ良いわ。あの後ギルドで聞いたのじゃが、ダンジョンを二人で攻略したと聞いてとてもではないが信じられんかったぞ。」

「あはは、黙っていてすみません。偶々浅い階層でボスと遭遇して倒すことに成功したんですよ。」

「偶々のう......ギルドもそのように言っておったが......。」

......物凄く怪しまれている感じだ。
後、シャルの警戒が半端ない。
俺の肩からいつでも発射されそうな雰囲気だ。
ナレアさんはチラリとシャルの方を見た後話を続ける。

「ところでお主の仲間は一緒ではないのか?あの大柄で特徴のない頭部をしている......。」

無いのは特徴じゃなくって髪の毛ですね......。
あれぇ?
なんか背中がぞくっとしたけど......いやいや、いくらレギさんでもこれは無理でしょ......?
でもとりあえず、開口一番謝っておいた方が良さそうな空気だ。

「レギさんですね。今は別行動中ですけど、この街に来ていますよ。多分ギルドで情報収集している頃かと。」

「そうであったか。機会があったらダンジョン攻略者殿のメンバーにもお会いしてみたいものじゃな。ところで、ケイは何をしておったのじゃ?」

「僕は魔道具屋に行くところでした。少し魔道具について相談したいことがあって。」

「ほう、魔道具か......それは丁度良かったかもしれんな。実は今知り合いの所に向かっておっての?そやつが魔道具屋を営んでおるのじゃ。よければ紹介してやろうか?腕は確かじゃぞ。」

「それはとても助かりますが、いいんですか?」

「なに、問題はなかろう。客を連れて行ってやるのじゃから感謝されこそすれ、嫌がることはなかろうよ。」

そう言うとナレアさんは歩き出す。
財布を無くしたと騒いでいた時とは別人のような堂に入った動きだ。
ナレアさんの横に並んで歩く。

「んぅ?何か失礼なことを考えておらぬか?」

ナレアさんもか!?
なんでこの世界の人は心を読んでくるんだ?
なんかそういう魔力的な何かが出ているのだろうか......?

「そ、そんなことはありませんよ?」

「目を逸らすのはやましいことがある証拠じゃな。」

「......。」

「先ほどと同じ顔じゃ。腹芸には向いていないのかのう。」

よし、ここは強引に話を変えよう!

「あー、そういえばナレアさん。お祭りの当日に財布を無くしたりしていませんでしたか?」

「む?祭りの当日......?」

「えぇ、初日の......式典が終わって直ぐくらいでしょうか。ナレアさんの声が聞こえたような気がしたのですが。」

「......あ、あぁ。あれか!き、聞かれておったのか?」

「やっぱりナレアさんでしたか。あの人混みで近づけなかったのですが気になっていたんです。大丈夫でしたか?」

「う、うむ。と、特に問題なかったな、うむ。少しだけ紐が切れていて慌てたがのう。すぐに冷静になって服を調べたらギリギリ引っかかっておったのじゃ。」

「それは良かったですね。今日は大丈夫ですか?」

少しだけ顔がニヤッとしてしまった。

「む、問題ないぞ。実はあれから創意工夫を凝らし。財布に金属の鎖をつけることにしたのじゃ。」

そう言って懐から鎖付きの財布を取り出すナレアさん。
鎖......デカいな......。
ネックレスみたいなものを想像していたんだけど......想像していたよりもしっかりした鎖だった。

「重くないですか......?」

「ちと重いかのう。まぁ、財布を無くすことに比べれば軽いもんじゃ。」

ちょっとだけなんだ......魔力ってすごいな......立ち入り禁止の所に張られているチェーンみたいなゴツさの鎖なんだけど......。

「その......首飾りみたいなサイズの鎖にすればよかったのでは......?」

そう告げた瞬間、ハッとした顔でこちらを見るナレアさん。
いや、その発想はなかったみたいな顔で見られても......。

「お主、天才か......!?」

「そこまでの話では......。」

「いや、面白いのじゃ。ただ財布を無くしにくいだけでなく、スリの対策にもなるからの。実際妾も鎖をつけてからはそうそう財布を落とすことは無くなったのじゃ。装飾品のように手軽に着脱できるようにすれば......売れるかもしれんな。流石に妾の使っている鎖は嵩張るから他人には勧められなかったからのう。あとちょっと鉄臭いのじゃ。」

流石に凶器になりそうなレベルの鎖を街行く人が皆、懐に入れているのは中々シュールかもしれない。

「うむ、面白そうじゃ。良ければケイ一緒に商会に商品として持ち込まぬか?」

「え?商会にですか?」

「うむ、製造や販売は商会に任せて考案料として幾ばくかの金銭を貰うのじゃ。販売価格の一割......は厳しいかもしれぬが、五分程はもらえると思うぞ?」

「財布に鎖をつけるのはナレアさんの発想じゃないですか。」

「売り物になりそうな改良を考えたのはケイであろう?何、面倒な所は妾がやっておからケイは何もせずともよいぞ?」

「それは尚の事悪いですよ......。」

「なんじゃ、面倒じゃから断ったわけじゃないのか?まぁ売れると決まったわけでもないからのまた今度話そうではないか。」

カラカラと笑っているナレアさんだけど......。
うーん、別に気にしなくてもいいんだけど......っていうか財布のチェーンって売れるのかな......?
革袋の入れ口の部分を閉めるような仕組みとセットにすればいけるか......?

「さて、丁度いいタイミングで店にたどり着いたぞ。ここじゃが......ケイ、さっきのニヤけた顔は悪くなかったのう。」

そう言ってナレアさんは笑みを浮かべるとお店の中に入っていく。
これは後が怖いかもしれないな......そんなことを考え一瞬止まった足を動かしナレアさんに続いて店に入る。
俺の知っている魔道具屋とは違い明るい雰囲気で、内装や商品の陳列もすっきりしている様だ。
デリータさんのお店は来るものを拒む雰囲気だったからな......。

「いらっしゃいま......せっ!?な、へ、へ......?」

なへへ?
よく分からないけど物凄く動揺しているのは分かる。
ナレアさんってそんなにびっくりされるような人なのかな?

「うむ!久しいの。息災であったか?妾は今冒険者をやっておるぞ。」

「な!?ぼ、冒険者ですか!?何故またそのような......?」

「それはもちろん遺跡じゃ!あそこはいいのう、昔は知識としてしか知らなかったが実際行ってみると想像以上じゃった。」

「......なるほど、そういう事でしたか......。」

「そういうわけで、今は冒険者ナレアとして楽しくやっておる。」

「......ナレア様、健やかに過ごされているようで何よりです。」

「うむ、お蔭様でな。さて、妾は久しぶりに顔を見たくて来ただけでの、用事があるのはこの者じゃ。」

「こちらの方は?」

挨拶は終わったのか話題が俺へと移る。

「妾の知り合いでの、魔道具屋を探しておったので連れて来たのじゃ。」

「そうでしたか、それは有り難い事です。どうも初めまして、この魔道具屋を営んでいるオグレオと申します。今回はどういったご用件でしょうか?」

「初めまして、ケイと申します。実は魔道具の事について相談がありまして。魔晶石に転写された魔術式を読み取って効果を調べるような魔道具ってありませんか?」

「魔術式を読み取る様な魔道具ですか......それは戦闘中に相手の魔道具の効果を調べるということでしょうか?」

チラリとナレアさんの方をみたオグレオさんは質問をしてくる。

「戦闘中の相手の魔道具......?あ、そう言うのではないです。自分で書いた魔術式が正しい効果を出せるかどうかを調べたいのです。」

「おや、ケイ様は魔術師だったのですか?」

オグレオさんとナレアさんが少し驚いたような表情になる。

「いえ、魔術師と言う程のものでは......。」

俺はオグレオさんに事情を説明することにした。
オグレオさんだけじゃなくナレアさんも興味深そうに俺の話を聞く。
何かいい方法を教えてもらえるといいんだけれど......。

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