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最終章 狼の子
第515話 ねーねーねー
しおりを挟むこれはどうしたものか......。
「わー、ナレアちゃーん。わー、やるぅー。」
「......。」
リィリさんが大興奮中だ。
そしてナレアさんは顔を真っ赤にして俯いてしまっている。
いや......まぁ、ナレアさんがそうなるのも、リィリさんが大興奮しているのも理由は分かっているけどさ。
因みにレギさんは気まずそうに顎を撫でていて......俺はそんなレギさんの傍で回復魔法を自分にかけていた。
ナレアさんを助けるべきだとは思うけど......。
「ねーねー、ナレアちゃーん?ねーねー、ねーってばー?」
いや......アレは無理だ。
どう考えても俺も的になる。
俺は今怪我が......ね?
俺はリィリさんから視線を逸らし、レギさんの方を見る。
そんな俺の視線に気づいたレギさんが咳払いを一つした後口を開く。
「あーその、さっきの様子を見るにナレアからはしっかりと絞られたようだな。」
「......え?」
絞られたって......何を?
っていうかレギさんがそういうアレな感じなことを言うとは......。
そんな俺の考えが伝わったのかレギさんが顔を顰める。
「いや、何考えているんだ。さっきの戦いっぷりをしっかりと説教されただろって話だ。」
「あ、あーあー、そうですよね?そりゃそうですよ。勿論分かっていましたよ?当然ですとも、えぇ、しっかり怒られましたよ?」
俺は捲し立てる様にレギさんに応える。
そりゃそうだ!
一体何の話だと思ったのか!
ははっ!
いや、分かっていましたよ!?
「リィリ達だけじゃなく、お前も随分と色ボケているみたいだな。」
「いやいや、レギさん、そういうアレではないですよ?いや、ほんと......それよりアレですよ......その、なんですか?」
「分かったから少し落ち着け。」
「いやいやいや、落ち着いていますよ、えぇ、落ち着いていますとも。えっと......つまり、心配かけて申し訳なかったなぁと、そういうことです。」
「あぁ、そうだな。途中の一撃と、最後に関しては肝を冷やしたな。」
「すみません。思い返してみれば......もう少し冷静に、色々やれたと思います。」
俺は頭を掻きながらレギさんに言うと、レギさんは苦笑しながら口を開く。
「ケイは手ごわい相手との実戦の経験が少ないからな。こればっかりは模擬戦ではな......。」
「経験の無さが思いっきり露呈した感じでした。」
「今まで格下とばかり戦っていたからなぁ。まぁ、そうそうケイと同格の相手何かいてたまるかって気もするが。」
「まぁ、そうですね......でも、次があればもう少し冷静に対応したいと思います。」
「そんな機会がどれだけあるかってところだけどな。」
「それもそうですね。」
確かに先程のボス並みの強さを持った奴がゴロゴロいたら大変なことになるよね。
「まぁ、神獣様達の眷属に本気で相手してもらうとかはいい経験になるかもな。」
「本気って、殺すつもりでってことですよね?シャルと同格の相手とか出てきたらひとたまりもないと思うのですが。」
「いい経験になると思うがな。」
「......レギさんもやりますか?」
「......まぁ、必要......かもしれんなぁ。」
非常に苦々しい表情で、とても苦し気にレギさんが言う。
殺す気でかかってくる眷属との戦い......うん、正直、今倒したボスと戦う方が遥かにマシだな。
「それは置いておくとして......ケイ、いいのか?」
「何がですか?」
「お前が必死に目を逸らしている事柄についてだ。」
「......。」
まさかレギさんから指摘されるとはな......。
いや、気づいていますよ?
少し離れた位置で、顔を真っ赤にしながらも俺の事を睨みつけているナレアさんの事は......。
いや、無理ですよ......僕にナレアさんを助ける力はありません......不甲斐ない俺を許して......くれないだろうなぁ......。
後で相当な目に合う覚悟が必要だけど......いや、ここでリィリさんの攻撃を受けた方が被害は少ないか......?
リィリさんによる弄りとナレアさんによる八つ当たり......うん、そうだな......今行くべきだろう。
俺は先程ボスに挑んだ時以上の緊張感をもって、ナレアさん達に近づいていった。
「まぁ、何にせよ。無事ボス討伐が終わったのう。」
「......ソウデスネ。」
「お疲れ様!ケイ君!」
「ハイ。ツカレマシタ。」
一先ず落ち着いたリィリさんとナレアさんが声を掛けてくるけど、精魂尽き果てた俺は機械的な返事しか返せない。
因みに、被害が少なくなるはずだと言う打算的な考えを秒でナレアさんに見破られ、それはもう責め立てられたのは言うまでもないだろう。
「ふむ......傷は癒したようじゃが、かなり疲れておるのう。」
「まぁ、しょうがないんじゃないかな?あんなに大怪我したケイ君を見たのは初めてだし......。」
「今日の所はレストポイント......というか、キオルの実験室に戻って休んだ方が良さそうじゃな。」
「......ソウデスネ。」
何やら予定が決まった気がするけど......休むと言うのに文句はない。
確かに物凄く疲れているし、主に精神的に。
リィリさんとナレアさんが先だって歩き始め、俺とレギさんはそれに続く。
シャル達は最後尾だ。
「......大丈夫か?ケイ。」
「......ハイ、ダイジョウブデス。」
隣を歩くレギさんが恐る恐ると言った感じで気遣ってくれるけど......すり減った俺の精神ではまだ虚ろな返事しか出来ない。
さながらゾンビの様に歩いていると、前を歩く二人の話が聞こえてくる。
「それにしても流石ケイ君だねー、お祭りには十分間に合うね!」
「そうじゃな。まぁ、元々そんなにかかるとは思っておらなんだが......一回の戦闘で終わらせるとはのう。」
「......そう言えば、ケイ君ってボスと戦う時は一回勝負だと思ってるんじゃないかな?」
「む?どういう事じゃ?」
「ほら、普通のダンジョン攻略って、事前にボスの情報とかも集めてから攻略するけどさ......ケイ君って普通のダンジョン攻略の経験がこの前の一回しかないし......ボスの攻略班じゃなかったからさ。」
「......その辺の教育はレギ殿の管轄じゃが......。」
俺がゆっくりとレギさんの方に顔を向けると、レギさんから視線を逸らされた。
いや、別に責めていませんよ?
その事に思い至らなかった僕が悪いのですから。
「そう言えば、ルルに攻略完了を伝える前に研究室を撤去せねばのう。」
「あー、確かに。ダンジョンの中にあんな部屋があったら不自然だもんね。」
ナレアさん達は既に次の会話に移ったようだし、ダンジョンの攻略についてはまたその内レギさんに聞いておこう。
俺の気力がある時に。
「面倒じゃのう。」
「でも、わざわざ私達がかたづけなくてもいいんじゃない?クルスト君に言っておけばいいでしょ?」
「ふむ。それもそうじゃな。妾達が骨を折る必要もないか。ボスを処理しただけでも十分後片付けを手伝っておるしのう。」
「余計な事しなかったらこのダンジョンも攻略記念祭出来たのになぁ。」
「すまぬのう。流石にこのダンジョンは表立って攻略したと発表するのは拙いからのう。」
「ナレアちゃんのせいじゃないけどさー、勿体ないよねー。」
冒険者ギルドにも知らせずにいきなり攻略しちゃっているからな......関係各所的にはかなり頭が痛いことだろうな。
というか、多分その辺の調整をするのは事情をある程度把握しているルーシエルさんだよな。
......ルーシエルさんもとんだ災難だな。
しかも、多分ナレアさんは事情を一から十まで説明はしないのだろうし。
いや、まぁ、個人的な事情でダンジョンを攻略した俺が言うのもなんだけどさ。
うーん、大丈夫なぁ?
いや、でもルーシエルさんの立場上、知らない方が良い事もあるってナレアさんの判断だしな......。
神獣様関係以外......檻の実験によっておかしなことになったって所は伝えているのだから大丈夫なのかな?
俺はルーシエルさんの心労に思いを馳せ......何か心を軽くしてあげられるようなことはないだろうかと思案しながら、ナレアさん達の後ろに続いた。
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