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★本編★
自分のため
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「ふざけるな!あれは父上がエレノアの誕生日にわざわざ取り寄せた物だぞ!さっさと出せ!」
ああ何を言っても無駄だ。
けれどまだ魔法を使えるとバレない方がいいだろう。勿論腕力でも敵わないのだから今は以前のように怯えたフリで謝るしかない。
僕は謝ろうと膝をついた。
その瞬間、頭を踏まれ思い切り地面に顔をぶつけた。
「いたっ!」
思わず声を上げた僕をバクロが面白そうに笑った。
いつもの事だ。
いつもの……
けれど段々と馬鹿馬鹿しくなって来た。
そういえば昔はこの狭い世界で乱暴な兄の事が怖くて仕方なかったな。
人の命を驚くほど簡単に奪うもっと恐ろしい人間がこの世にいる事も知らずに。
それを思うとこんな暴力可愛いもんだ。
けれど……
何より二十歳の僕は十歳の僕を助けてあげたい。
勢いを付けて立ち上がり口元の血を拭って首のチョーカーを投げ捨てた。
「何してるんだ?」
そして目の前にいるバクロの腕を掴んで思い切り魔力で電流を流す。
バチっ!!
「うああああっ!痛い!」
「アリス!お兄様に何してるの?!」
あんなに偉そうにしてたくせに僕の手を慌てて振り払い怯えた顔で様子を窺っている。
「僕は知らないと言いましたよね。姉さんポケットに入ってるものはなんですか?」
「えっ?!」
エレノアは慌ててポケットを押さえバクロを見た。全てを察したバクロは気まずそうに手首を摩りながら捨て台詞を吐いて踵を返す。その後をエレノアが慌てて追いかけて行った。
「ははっ」
笑いが込み上げる。あいつらはすぐ親に言いつけるだろう。面倒なことになったな。
そう思いながら腹を括る。なにしろ二人の顔があまりに愉快だったから後始末の面倒さにもお釣りが来る。
とりあえず自室に戻ろうと振り向いた僕の目の前に一人の男が立っていた。
「アリス様手当をします。こちらに」
「ノエル……」
先ほどのやりとりを見ていただろうか?けれど何も言わずに僕の額に布を当てる。ノエルはいつも優しい。
彼は公爵家の護衛騎士団長で公爵家唯一のアルファだ。一応僕の姉であるエレノアも彼の事が好きなので一緒にいるのをよく思わない。
「ありがとう。もう大丈夫だよ」
「ダメです。こんなに血が」
「ノエルといるとエレノアに意地悪されるんだ」
「……それでも額の傷が酷い。跡が残ったら大変です」
ノエルはそれだけ言うと僕の手首を掴んでさっさと歩き出した。
風に揺れる長い銀色の髪が頬をくすぐる。僕とは違うがっしりとした背中に途方もなく泣きたくなった。
ノエル・オブシュワ。
彼は僕が皇后になってから公爵家を辞去し護衛騎士として皇室に付き添ってくれた。その気持ちに忠誠以上のものがあると気付いたのはいつだっただろう。
けれど最後はルドルフ王の魔力に操られ自分の意思に関係なく
今僕を導く優しいその手で
ルルテラを抱く僕の背中に剣を突き立てたのだ。
ああ何を言っても無駄だ。
けれどまだ魔法を使えるとバレない方がいいだろう。勿論腕力でも敵わないのだから今は以前のように怯えたフリで謝るしかない。
僕は謝ろうと膝をついた。
その瞬間、頭を踏まれ思い切り地面に顔をぶつけた。
「いたっ!」
思わず声を上げた僕をバクロが面白そうに笑った。
いつもの事だ。
いつもの……
けれど段々と馬鹿馬鹿しくなって来た。
そういえば昔はこの狭い世界で乱暴な兄の事が怖くて仕方なかったな。
人の命を驚くほど簡単に奪うもっと恐ろしい人間がこの世にいる事も知らずに。
それを思うとこんな暴力可愛いもんだ。
けれど……
何より二十歳の僕は十歳の僕を助けてあげたい。
勢いを付けて立ち上がり口元の血を拭って首のチョーカーを投げ捨てた。
「何してるんだ?」
そして目の前にいるバクロの腕を掴んで思い切り魔力で電流を流す。
バチっ!!
「うああああっ!痛い!」
「アリス!お兄様に何してるの?!」
あんなに偉そうにしてたくせに僕の手を慌てて振り払い怯えた顔で様子を窺っている。
「僕は知らないと言いましたよね。姉さんポケットに入ってるものはなんですか?」
「えっ?!」
エレノアは慌ててポケットを押さえバクロを見た。全てを察したバクロは気まずそうに手首を摩りながら捨て台詞を吐いて踵を返す。その後をエレノアが慌てて追いかけて行った。
「ははっ」
笑いが込み上げる。あいつらはすぐ親に言いつけるだろう。面倒なことになったな。
そう思いながら腹を括る。なにしろ二人の顔があまりに愉快だったから後始末の面倒さにもお釣りが来る。
とりあえず自室に戻ろうと振り向いた僕の目の前に一人の男が立っていた。
「アリス様手当をします。こちらに」
「ノエル……」
先ほどのやりとりを見ていただろうか?けれど何も言わずに僕の額に布を当てる。ノエルはいつも優しい。
彼は公爵家の護衛騎士団長で公爵家唯一のアルファだ。一応僕の姉であるエレノアも彼の事が好きなので一緒にいるのをよく思わない。
「ありがとう。もう大丈夫だよ」
「ダメです。こんなに血が」
「ノエルといるとエレノアに意地悪されるんだ」
「……それでも額の傷が酷い。跡が残ったら大変です」
ノエルはそれだけ言うと僕の手首を掴んでさっさと歩き出した。
風に揺れる長い銀色の髪が頬をくすぐる。僕とは違うがっしりとした背中に途方もなく泣きたくなった。
ノエル・オブシュワ。
彼は僕が皇后になってから公爵家を辞去し護衛騎士として皇室に付き添ってくれた。その気持ちに忠誠以上のものがあると気付いたのはいつだっただろう。
けれど最後はルドルフ王の魔力に操られ自分の意思に関係なく
今僕を導く優しいその手で
ルルテラを抱く僕の背中に剣を突き立てたのだ。
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