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第三章 貴方となら何でも出来る気がしました
50・我が物顔とはこのことです
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「本当に番狂わせだ……」
アルヴェリオは小さく呟いた。
だが、どれほど私情があろうと──
不遇の頃に自分を引き取り、息子として支えてくれたバロウズ男爵の無念を晴らすことは最重要事項だ。
「アシュレイを正式にこの館に招き入れることにする。奴の部屋を用意してくれ」
「承知しました」
アシュレイを屋敷に住まわせれば、必然的にライネルとの距離は離れる。
しかし、それはライネルのためでもあった。
(あんなに楽しそうに暮らしているんだ。家族に連れ戻されて、都合のいい相手と勝手に縁組を組まれてしまえば……逃げ場がなくなる)
それはアルヴェリオにとっても、絶対に避けたい未来だった。
まだ十五の少年。
ただの子供だと思っていたはずなのに──
どうして自分は、ここまで惹かれてしまっているのか。
理由を考えようとして、アルヴェリオは諦めたように息をついた。
──恋とは、理屈ではないのだ。
◆◇◆◇◆◇◆
そんなアルヴェリオの苦悩など露ほども知らないアシュレイは、今日も今日とて自分磨きに余念がなかった。
最近の肌荒れは、不慣れな環境とストレスのせいだと本人は思っている。
正式に部屋をあてがわれると知り、ようやく表情を緩めた。
(たまに驚くほど素っ気ないから不安だったけど……あれは、照れてるだけなんだよね)
最高級の香油で全身をマッサージされながら、アシュレイは満足げに目を細める。
その横では、全身に包帯を巻いたフェルナンドが控えている。
痛々しい姿だが、アシュレイは気にも留めない。彼にとってフェルナンドは「使い捨ての便利な手駒」に過ぎないのだ。
「フェルナンド」
「はっ」
「ちょっと面白い噂を聞いたんだ。調べてくれる?」
「はい」
「地方の村に住む平民が、画期的な支援方法を考えて王都で話題になってるらしい。儲かりそうなら口実をつけて権利を取り上げる。うまくやってくれ」
「承知しました」
「……それと並行して、ライネルの行方も。二度目はないからな。俺をこれ以上失望させるな」
「ご期待に添えるよう全力を尽くします」
「口だけにならないことを祈ってるよ」
フェルナンドが静かに去ると、アシュレイは深く息を吐いて目を閉じた。
ストレスは美容の大敵。
“傾国の美人”と称される自分も、年齢とともに衰えは隠せない。
(さっさとライネルを見つけて侯爵家を継がせないと。土台を整えて……アルヴェリオを必ず王にする。そのために邪魔なのは──)
アロマに包まれた空間で思考する内容は、あまりにも物騒だった。
◆◇◆◇◆◇◆
「しばらく留守をしていた間に、アシュレイが俺の部屋に棲みついてる……」
ショックを隠せず肩を落とすブラウンに、アルヴェリオは淡々と説明した。
「近くに置いておかなければ調べようがない。婚約も結婚もしていない今、奴の懐に入るにはこれが最適解だった」
「だからって、よりによって俺の部屋じゃなくても……」
「アシュレイが勝手に選んだんだ。日当たりと風通しが肌に一番いいらしい」
「はぁ?肌?そんな理由で??」
ブラウンのアシュレイへの嫌悪は、さらに四割ほど増したようだ。
「長くはならないから我慢してくれ。お前の荷物は客間に入れてある。ベッドも用意してあるから、しばらくはそこを使え」
「……まあ、滅多に帰らないからいいですけど……」
ぶつぶつとアシュレイへの悪口を小声で言い続けるブラウンは、子供のようだった。
「ところで今日はどうした?何かあったのか?」
「商人のとこに用事があったんで、ついでに寄っただけです。ああ、ついでに報告も」
「何度もついでと言うな」
呆れつつも、アルヴェリオはブラウンの話に耳を傾ける。
ライネルが楽しそうに暮らしていると知り、自然と口元がほころんだ。
「で、後は……そうそう。フェルナンドが帰りの馬車を襲いました」
「なに?!」
“ついで”のように語られた報告に、アルヴェリオは思わず声を上げた。
「それで?ライネルに怪我はないか?」
「当たり前です。俺がついてるんですから」
「お前の腕は信頼しているが……」
やはり、計画を急がねばならない。
これ以上長引けば、ライネルを危険に晒すだけだ。
アルヴェリオは小さく呟いた。
だが、どれほど私情があろうと──
不遇の頃に自分を引き取り、息子として支えてくれたバロウズ男爵の無念を晴らすことは最重要事項だ。
「アシュレイを正式にこの館に招き入れることにする。奴の部屋を用意してくれ」
「承知しました」
アシュレイを屋敷に住まわせれば、必然的にライネルとの距離は離れる。
しかし、それはライネルのためでもあった。
(あんなに楽しそうに暮らしているんだ。家族に連れ戻されて、都合のいい相手と勝手に縁組を組まれてしまえば……逃げ場がなくなる)
それはアルヴェリオにとっても、絶対に避けたい未来だった。
まだ十五の少年。
ただの子供だと思っていたはずなのに──
どうして自分は、ここまで惹かれてしまっているのか。
理由を考えようとして、アルヴェリオは諦めたように息をついた。
──恋とは、理屈ではないのだ。
◆◇◆◇◆◇◆
そんなアルヴェリオの苦悩など露ほども知らないアシュレイは、今日も今日とて自分磨きに余念がなかった。
最近の肌荒れは、不慣れな環境とストレスのせいだと本人は思っている。
正式に部屋をあてがわれると知り、ようやく表情を緩めた。
(たまに驚くほど素っ気ないから不安だったけど……あれは、照れてるだけなんだよね)
最高級の香油で全身をマッサージされながら、アシュレイは満足げに目を細める。
その横では、全身に包帯を巻いたフェルナンドが控えている。
痛々しい姿だが、アシュレイは気にも留めない。彼にとってフェルナンドは「使い捨ての便利な手駒」に過ぎないのだ。
「フェルナンド」
「はっ」
「ちょっと面白い噂を聞いたんだ。調べてくれる?」
「はい」
「地方の村に住む平民が、画期的な支援方法を考えて王都で話題になってるらしい。儲かりそうなら口実をつけて権利を取り上げる。うまくやってくれ」
「承知しました」
「……それと並行して、ライネルの行方も。二度目はないからな。俺をこれ以上失望させるな」
「ご期待に添えるよう全力を尽くします」
「口だけにならないことを祈ってるよ」
フェルナンドが静かに去ると、アシュレイは深く息を吐いて目を閉じた。
ストレスは美容の大敵。
“傾国の美人”と称される自分も、年齢とともに衰えは隠せない。
(さっさとライネルを見つけて侯爵家を継がせないと。土台を整えて……アルヴェリオを必ず王にする。そのために邪魔なのは──)
アロマに包まれた空間で思考する内容は、あまりにも物騒だった。
◆◇◆◇◆◇◆
「しばらく留守をしていた間に、アシュレイが俺の部屋に棲みついてる……」
ショックを隠せず肩を落とすブラウンに、アルヴェリオは淡々と説明した。
「近くに置いておかなければ調べようがない。婚約も結婚もしていない今、奴の懐に入るにはこれが最適解だった」
「だからって、よりによって俺の部屋じゃなくても……」
「アシュレイが勝手に選んだんだ。日当たりと風通しが肌に一番いいらしい」
「はぁ?肌?そんな理由で??」
ブラウンのアシュレイへの嫌悪は、さらに四割ほど増したようだ。
「長くはならないから我慢してくれ。お前の荷物は客間に入れてある。ベッドも用意してあるから、しばらくはそこを使え」
「……まあ、滅多に帰らないからいいですけど……」
ぶつぶつとアシュレイへの悪口を小声で言い続けるブラウンは、子供のようだった。
「ところで今日はどうした?何かあったのか?」
「商人のとこに用事があったんで、ついでに寄っただけです。ああ、ついでに報告も」
「何度もついでと言うな」
呆れつつも、アルヴェリオはブラウンの話に耳を傾ける。
ライネルが楽しそうに暮らしていると知り、自然と口元がほころんだ。
「で、後は……そうそう。フェルナンドが帰りの馬車を襲いました」
「なに?!」
“ついで”のように語られた報告に、アルヴェリオは思わず声を上げた。
「それで?ライネルに怪我はないか?」
「当たり前です。俺がついてるんですから」
「お前の腕は信頼しているが……」
やはり、計画を急がねばならない。
これ以上長引けば、ライネルを危険に晒すだけだ。
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