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第四章 全てを暴いて幸せになります!
63・アシュレイの誤算
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その時。
ブラウンがふっと思い出したように、ポケットから何かを取り出した。
「フェルナンドの奴がこれを俺に渡してきました」
それは精巧な細工の施された鍵だった。
ライネルとアルヴェリオは目を見開く。
「……なぜフェルナンドが?どこの鍵か言っていたか?」
「いえ、あいつは“持っていけ”とだけ」
ブラウンは鍵をテーブルに置いた。
カチャン、と金属音が響く。
「小屋の鍵……じゃないよな」
「そうですね。あの小屋に鍵は付いてませんから……」
「では証拠を保管しているのは別の場所ってことか?」
アルヴェリオとブラウンは、しばらく考え込んでいたが、すぐにお互い目を見合わせて頷いた。
「考えても仕方ないな」
「ええ、確かに時間の無駄です。さっさと動きましょう」
「……え?それでいいんですか?!」
驚いたライネルに、二人は“なにが?”と言わんばかりの顔でライネルを見る。
(……類は友を呼ぶっていうけど本当だった)
これから先、熟考が必要な場面が来たら自分が彼らを止めないと……。ライネルはそう心に決めた。
◆◆◆◆◆
今にも雨が降りそうな曇天の中、仕事を終えたアシュレイは男爵邸に帰り着いた。
さっさと婚約式の段取りを決めて侯爵家に戻ろうと思っていたアシュレイにとって、いつまでも煮え切らないアルヴェリオの態度は予想外のものだった。
「お陰で通いの時間が長くなって大変だ」
自室にあてがわれた客間で、アシュレイはため息をつく。
それでも最初の頃は一緒にいる時間を作ってくれたり、両親に挨拶したいと侯爵家まで出向いたりもしてくれた。
それなのに最近はろくに帰っても来ないのだ。
「実家では俺の部屋を見たいなんて言い出すし、てっきり俺に落ちたと思ってたんだけど」
間もなく結婚の話が出ると期待して、遊んでいた男たちも整理したのに、とアシュレイは唇を噛む。
(最初は打算しかなかった。でも……)
思い通りにならない。いつも冷静な姿が憎たらしくもあったのに。
「……とにかく早くライネルの件を片付けないと。アルヴェリオの領地で好き勝手するのは許せない。……フェルナンドは一体何をしてるんだろう」
調整所送りにした後、フェルナンドから一切の連絡がなくなった。それは施設長も同様で、アシュレイから連絡してもいつもいないと言われるのだ。
「本当に無能な馬鹿ばっかりで使えないな。……でもフェルナンドは何があっても俺の命令は遂行する。もう少し待ってみるか」
曇天は禍々しい色の夕日を連れて姿を消した。後には星ひとつない暗闇が広がるのみ。
「大丈夫だ。全てうまくいく。裁判は行われず、ライネルは結婚して形だけの侯爵家当主となる。そして入婿であるダリスのおもちゃとなって生涯を終えるんだ」
その状況を想像し、せき上がっていた焦燥が、ほんの少し和らいだ。
「そろそろ夕食の時間だな」
部屋着に着替えようとアシュレイが首元のタイを緩めた時、ドアを激しく叩く音がした。
「……誰だ?騒がしい」
不愉快さを隠しもせず、アシュレイがドアを開けた瞬間、入って来たのは財務局の部下──アシュレイの手駒の一人である男の顔が見えた。
「大変です!アシュレイ様!」
「なんだ、落ち着け」
「さ、裁判が!明日開かれることになりました!」
「なんの裁判だ?」
「ライネル・グランチェスターの謀反に関しての裁判です!」
アシュレイは眉間に皺を寄せてため息をついた。
「誰が横槍を入れたんだ。まったく面倒だな」
万が一に備えて準備はしている。裁判になっても負けるつもりはないが、何故こんな急に?
「異例の速さだな。よほど有力な奴が背後にいるに違いない。誰が申立人だ?」
「……それが……」
「なんだ?早く言え」
「……バロウズ男爵です」
「え?」
なぜ?彼がライネルの後ろ盾になるのか。
自分の領地を好き勝手にされたのに?
アシュレイは混乱し、様々な疑問が頭を駆け巡った。
アルヴェリオからライネルの話なんて一度も出たことがない。確かに最初に彼の嫁にと送り出したが、すぐに追い出されたと聞いたし、申立人になるような親密な関係はなかったはずだ。
「……人伝に話を聞いて可哀想だとでも思ったのか?それとも俺の弟だから助けたのかもな」
それほどにアシュレイはアルヴェリオの愛を信じてやまなかった。
「……何にしても裁判資料に少し手直しが必要だ」
アシュレイは部下を追い出した後、引き出しから書類を出して作業を始めた。
ブラウンがふっと思い出したように、ポケットから何かを取り出した。
「フェルナンドの奴がこれを俺に渡してきました」
それは精巧な細工の施された鍵だった。
ライネルとアルヴェリオは目を見開く。
「……なぜフェルナンドが?どこの鍵か言っていたか?」
「いえ、あいつは“持っていけ”とだけ」
ブラウンは鍵をテーブルに置いた。
カチャン、と金属音が響く。
「小屋の鍵……じゃないよな」
「そうですね。あの小屋に鍵は付いてませんから……」
「では証拠を保管しているのは別の場所ってことか?」
アルヴェリオとブラウンは、しばらく考え込んでいたが、すぐにお互い目を見合わせて頷いた。
「考えても仕方ないな」
「ええ、確かに時間の無駄です。さっさと動きましょう」
「……え?それでいいんですか?!」
驚いたライネルに、二人は“なにが?”と言わんばかりの顔でライネルを見る。
(……類は友を呼ぶっていうけど本当だった)
これから先、熟考が必要な場面が来たら自分が彼らを止めないと……。ライネルはそう心に決めた。
◆◆◆◆◆
今にも雨が降りそうな曇天の中、仕事を終えたアシュレイは男爵邸に帰り着いた。
さっさと婚約式の段取りを決めて侯爵家に戻ろうと思っていたアシュレイにとって、いつまでも煮え切らないアルヴェリオの態度は予想外のものだった。
「お陰で通いの時間が長くなって大変だ」
自室にあてがわれた客間で、アシュレイはため息をつく。
それでも最初の頃は一緒にいる時間を作ってくれたり、両親に挨拶したいと侯爵家まで出向いたりもしてくれた。
それなのに最近はろくに帰っても来ないのだ。
「実家では俺の部屋を見たいなんて言い出すし、てっきり俺に落ちたと思ってたんだけど」
間もなく結婚の話が出ると期待して、遊んでいた男たちも整理したのに、とアシュレイは唇を噛む。
(最初は打算しかなかった。でも……)
思い通りにならない。いつも冷静な姿が憎たらしくもあったのに。
「……とにかく早くライネルの件を片付けないと。アルヴェリオの領地で好き勝手するのは許せない。……フェルナンドは一体何をしてるんだろう」
調整所送りにした後、フェルナンドから一切の連絡がなくなった。それは施設長も同様で、アシュレイから連絡してもいつもいないと言われるのだ。
「本当に無能な馬鹿ばっかりで使えないな。……でもフェルナンドは何があっても俺の命令は遂行する。もう少し待ってみるか」
曇天は禍々しい色の夕日を連れて姿を消した。後には星ひとつない暗闇が広がるのみ。
「大丈夫だ。全てうまくいく。裁判は行われず、ライネルは結婚して形だけの侯爵家当主となる。そして入婿であるダリスのおもちゃとなって生涯を終えるんだ」
その状況を想像し、せき上がっていた焦燥が、ほんの少し和らいだ。
「そろそろ夕食の時間だな」
部屋着に着替えようとアシュレイが首元のタイを緩めた時、ドアを激しく叩く音がした。
「……誰だ?騒がしい」
不愉快さを隠しもせず、アシュレイがドアを開けた瞬間、入って来たのは財務局の部下──アシュレイの手駒の一人である男の顔が見えた。
「大変です!アシュレイ様!」
「なんだ、落ち着け」
「さ、裁判が!明日開かれることになりました!」
「なんの裁判だ?」
「ライネル・グランチェスターの謀反に関しての裁判です!」
アシュレイは眉間に皺を寄せてため息をついた。
「誰が横槍を入れたんだ。まったく面倒だな」
万が一に備えて準備はしている。裁判になっても負けるつもりはないが、何故こんな急に?
「異例の速さだな。よほど有力な奴が背後にいるに違いない。誰が申立人だ?」
「……それが……」
「なんだ?早く言え」
「……バロウズ男爵です」
「え?」
なぜ?彼がライネルの後ろ盾になるのか。
自分の領地を好き勝手にされたのに?
アシュレイは混乱し、様々な疑問が頭を駆け巡った。
アルヴェリオからライネルの話なんて一度も出たことがない。確かに最初に彼の嫁にと送り出したが、すぐに追い出されたと聞いたし、申立人になるような親密な関係はなかったはずだ。
「……人伝に話を聞いて可哀想だとでも思ったのか?それとも俺の弟だから助けたのかもな」
それほどにアシュレイはアルヴェリオの愛を信じてやまなかった。
「……何にしても裁判資料に少し手直しが必要だ」
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