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第四章 全てを暴いて幸せになります!
78・楽しい一日
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ライネルは、その日溜まっていた仕事を全てこなし、心地よい疲労感で眠りについた。
(今頃アルヴェリオ様は何をしているんだろう)
宿屋のベッドで目を閉じてそんなことを考えていると、幸せな夢を見られる気がする。
まどろみ始めた頃、誰かが自分の名を呼ぶ声がしたような気がした。だが、ライネルはそのまま抗えない眠りに引きずり込まれていった。
柔らかい朝の光が清潔なシーツの上に降り注ぐ。ライネルはうっすらと目を開けてベッドの上で寝返りを打った。
「ううん……っ?!?!」
その瞬間、目に入ったものの正体にライネルは思わず大声を上げそうになった。
驚くな、と言う方が無理だろう。
昨夜、一人で横になったはずのベッドの隣に、なんとアルヴェリオが寝息を立てていたのだから。
(なんで?いや、嬉しいけど。どうして一緒に?!いや、嬉しいけども!)
パニックでベッドから飛び降りたライネルは、夢ではないかと恐る恐るアルヴェリオに近づいた。
(……本物だ)
削げた頬や、少しだけ生えている無精髭が恰好良く見えたライネルは、無言のまま悶絶した。
(凄い!大人の男って感じで憧れる!……キスしたいな。だめかな?でもこの前もしちゃったし、もういいよね?)
そっと近づいて顔を寄せるが、突然うっすらと目が開いて、ライネルは驚きのあまり飛び退った。
「……おはよう」
「おはようございます!」
低く、少し気怠い声。
アルヴェリオは何度か瞬きをして、固まったままのライネルを見上げた。
「どうかしたのか?」
「何もしようとしてません!」
「……?」
アルヴェリオはゆっくりと上体を起こし、長めの黒髪をかき上げた。
「……驚かせたな」
「そ、そうですよ!びっくりしますよ!だって、昨日は一人で寝たはずなのに……」
「夜中に着いた。起こそうと思ったが、よく眠っていたからな」
そう言って、少しだけ目を細める。
「邪魔をするのも悪いと思って、そのまま隣を借りた」
「……そ、そうだったんですね」
改めて見れば、アルヴェリオはかなり疲れているようだった。
目の下にはうっすらと影があり、夜通し馬を駆けてきたことが窺えた。
「お仕事、忙しかったんじゃないですか?」
「まあな。でも――」
アルヴェリオは一度言葉を切り、ライネルをまっすぐに見た。
「顔を見たら、全部どうでもよくなった」
その一言に、胸がきゅっと鳴る。
「……アルヴェリオ様」
「昨日は楽しかったか?」
「はい。すごく」
ライネルは頷き、少し照れながら続ける。
「ブラウンさんも途中から来て、みんなで飲んで……あ!そうだ!発表!」
「発表?」
「はい。本当に僕を領主にしてくださったんですね。ありがとうございます!」
「礼ならバロウズ男爵に言ってくれ」
そうは言っても、それなりの対価は払ったに違いない。ライネルは、いずれ二人でこの地で暮らせる日を夢見て幸せを感じた。
「……なあ、ライネル」
「はい?」
「何か困ったことがあったらいつでも一番に相談してくれ」
その言葉に、ライネルはニコリと微笑む。
「はい!アルヴェリオ様も何でも僕に一番最初に相談してくださいね」
「ああ」
アルヴェリオはそう言って、そっとライネルの頭に手を置いた。
「今日は、一緒に村を見て回ろう」
「本当ですか?」
「ああ。約束しただろう」
ライネルはぱっと顔を輝かせた。
「はい!」
その様子を見て、アルヴェリオは小さく笑う。
「朝食を取ったらな。……顔を洗ってこい。さすがにこのままではまずい」
「は、はい!」
慌てて部屋を飛び出すライネルの背中を見送りながら、アルヴェリオは一人、息を吐いた。
(……俺の正体を、どうやってライネルに話せばいいのか)
王位を継ぐ、継がないは置いておいても、いつまでも自分の身分を隠したままには出来ない。
窓の外には、穏やかな朝。
けれど、その先に待つものを、彼はまだ知らないのだ。
朝食を終えると、二人は連れ立って村を回った。
鍛冶場では火の前に立つ職人たちが手を止め、木工所では削りかけの木材を置いて顔を上げる。
「アルヴェリオ様!お久しぶりです!」
「ようこそ、職人村へ!」
そんな声があちこちから飛び、アルヴェリオはその一つ一つに短く頷きながら応えていった。
堅い印象のあるその姿も、ライネルの隣に立っているだけで、どこか柔らかく見える。
「みんなが平和なのは、アルヴェリオ様がちゃんと守り抜いた証です」
「……それを発展させてくれたのはライネルだがな」
「ふふっ」
「あ!アルヴェリオ様、ようこそ。今ケーキ焼いたとこなんで寄ってってくださいな」
洗濯物を干していたゴバが二人を呼び止めた。
そして仲良く腕を組んでいる2人の姿を見て、ニンマリと笑った。
「若いっていいわねぇ」
「……ゴバさん」
「はは!冗談だよ。早く家の中に入っとくれ」
有無を言わさず中に通され、卓につくと、ケーキ以外にも温かい料理が次々と並べられる。
素朴だが滋味深い香りに、思わず顔が綻んだ。
「ゴバさん、僕たち朝ごはん食べてきたんですけど」
「おいしいものなら入るだろ?まぁひと口ずつでも食べていきなって」
そう言われて、ニ人はスプーンを持った。そしてスープを一口……
「おいしい……!
「だろう?」
ゼンバが誇らしげに胸を張る。
「うちのカミさんの料理は天下一品だぜ」
「やだねぇ。もうあんた、恥ずかしいじゃない」
この年になっても、仲睦まじい二人にアルヴェリオとライネルは揃って笑う。
その時、部屋の奥から、寝ぼけまなこのアノマリーが、ぬいぐるみを抱いて、居間にやってきた。
「アルヴェリオ様、ライネルさん、おはようございます」
「おはようアノマリー。今日も可愛いね」
「ふふっありがとうございま……」
「……どうしたの?」
突然口を閉ざしたアノマリーは、アルヴェリオの胸元を凝視している。
何事かと見ると、そこには小粒だが、最高級のルビーが光っていた。
「アノマリー!駄目だよ!」
「……でも……美味しそう……」
よだれを垂らさんばかりの顔で、自分を見る小さな少年に、アルヴェリオは早々に白旗をあげた。
「構わない。腹を壊さないか心配だが、欲しいのならあげよう」
「……えっ」
ライネルが言葉を失う。
どう見ても、王都でも滅多に見ない高価な品だ。
「いいんですか?」
「仕事の手伝いをしてくれてるんだろう?ご褒美だ」
「ありがとうございます!」
アノマリーは、手のひらに置かれたその宝石を、光に透かしたり、ちょっと舐めてみたりしながら、嬉しそうにはしゃいだ。
「あらあらすみませんね、アルヴェリオ様」
そう言って、ゴバとゼンバはアノマリーの頭を撫でる。
穏やかな時間が流れ、気づけば日が傾いていた。二人は仲の良い家族に礼を言って宿へと戻った。
そして、その夜。
宿屋の部屋で二人きりになったとき、アルヴェリオが真面目な顔で口を開いた。
「……ライネル。少し、話しておきたいことがある」
「はい?」
「俺の過去と、これからのことだ」
(今頃アルヴェリオ様は何をしているんだろう)
宿屋のベッドで目を閉じてそんなことを考えていると、幸せな夢を見られる気がする。
まどろみ始めた頃、誰かが自分の名を呼ぶ声がしたような気がした。だが、ライネルはそのまま抗えない眠りに引きずり込まれていった。
柔らかい朝の光が清潔なシーツの上に降り注ぐ。ライネルはうっすらと目を開けてベッドの上で寝返りを打った。
「ううん……っ?!?!」
その瞬間、目に入ったものの正体にライネルは思わず大声を上げそうになった。
驚くな、と言う方が無理だろう。
昨夜、一人で横になったはずのベッドの隣に、なんとアルヴェリオが寝息を立てていたのだから。
(なんで?いや、嬉しいけど。どうして一緒に?!いや、嬉しいけども!)
パニックでベッドから飛び降りたライネルは、夢ではないかと恐る恐るアルヴェリオに近づいた。
(……本物だ)
削げた頬や、少しだけ生えている無精髭が恰好良く見えたライネルは、無言のまま悶絶した。
(凄い!大人の男って感じで憧れる!……キスしたいな。だめかな?でもこの前もしちゃったし、もういいよね?)
そっと近づいて顔を寄せるが、突然うっすらと目が開いて、ライネルは驚きのあまり飛び退った。
「……おはよう」
「おはようございます!」
低く、少し気怠い声。
アルヴェリオは何度か瞬きをして、固まったままのライネルを見上げた。
「どうかしたのか?」
「何もしようとしてません!」
「……?」
アルヴェリオはゆっくりと上体を起こし、長めの黒髪をかき上げた。
「……驚かせたな」
「そ、そうですよ!びっくりしますよ!だって、昨日は一人で寝たはずなのに……」
「夜中に着いた。起こそうと思ったが、よく眠っていたからな」
そう言って、少しだけ目を細める。
「邪魔をするのも悪いと思って、そのまま隣を借りた」
「……そ、そうだったんですね」
改めて見れば、アルヴェリオはかなり疲れているようだった。
目の下にはうっすらと影があり、夜通し馬を駆けてきたことが窺えた。
「お仕事、忙しかったんじゃないですか?」
「まあな。でも――」
アルヴェリオは一度言葉を切り、ライネルをまっすぐに見た。
「顔を見たら、全部どうでもよくなった」
その一言に、胸がきゅっと鳴る。
「……アルヴェリオ様」
「昨日は楽しかったか?」
「はい。すごく」
ライネルは頷き、少し照れながら続ける。
「ブラウンさんも途中から来て、みんなで飲んで……あ!そうだ!発表!」
「発表?」
「はい。本当に僕を領主にしてくださったんですね。ありがとうございます!」
「礼ならバロウズ男爵に言ってくれ」
そうは言っても、それなりの対価は払ったに違いない。ライネルは、いずれ二人でこの地で暮らせる日を夢見て幸せを感じた。
「……なあ、ライネル」
「はい?」
「何か困ったことがあったらいつでも一番に相談してくれ」
その言葉に、ライネルはニコリと微笑む。
「はい!アルヴェリオ様も何でも僕に一番最初に相談してくださいね」
「ああ」
アルヴェリオはそう言って、そっとライネルの頭に手を置いた。
「今日は、一緒に村を見て回ろう」
「本当ですか?」
「ああ。約束しただろう」
ライネルはぱっと顔を輝かせた。
「はい!」
その様子を見て、アルヴェリオは小さく笑う。
「朝食を取ったらな。……顔を洗ってこい。さすがにこのままではまずい」
「は、はい!」
慌てて部屋を飛び出すライネルの背中を見送りながら、アルヴェリオは一人、息を吐いた。
(……俺の正体を、どうやってライネルに話せばいいのか)
王位を継ぐ、継がないは置いておいても、いつまでも自分の身分を隠したままには出来ない。
窓の外には、穏やかな朝。
けれど、その先に待つものを、彼はまだ知らないのだ。
朝食を終えると、二人は連れ立って村を回った。
鍛冶場では火の前に立つ職人たちが手を止め、木工所では削りかけの木材を置いて顔を上げる。
「アルヴェリオ様!お久しぶりです!」
「ようこそ、職人村へ!」
そんな声があちこちから飛び、アルヴェリオはその一つ一つに短く頷きながら応えていった。
堅い印象のあるその姿も、ライネルの隣に立っているだけで、どこか柔らかく見える。
「みんなが平和なのは、アルヴェリオ様がちゃんと守り抜いた証です」
「……それを発展させてくれたのはライネルだがな」
「ふふっ」
「あ!アルヴェリオ様、ようこそ。今ケーキ焼いたとこなんで寄ってってくださいな」
洗濯物を干していたゴバが二人を呼び止めた。
そして仲良く腕を組んでいる2人の姿を見て、ニンマリと笑った。
「若いっていいわねぇ」
「……ゴバさん」
「はは!冗談だよ。早く家の中に入っとくれ」
有無を言わさず中に通され、卓につくと、ケーキ以外にも温かい料理が次々と並べられる。
素朴だが滋味深い香りに、思わず顔が綻んだ。
「ゴバさん、僕たち朝ごはん食べてきたんですけど」
「おいしいものなら入るだろ?まぁひと口ずつでも食べていきなって」
そう言われて、ニ人はスプーンを持った。そしてスープを一口……
「おいしい……!
「だろう?」
ゼンバが誇らしげに胸を張る。
「うちのカミさんの料理は天下一品だぜ」
「やだねぇ。もうあんた、恥ずかしいじゃない」
この年になっても、仲睦まじい二人にアルヴェリオとライネルは揃って笑う。
その時、部屋の奥から、寝ぼけまなこのアノマリーが、ぬいぐるみを抱いて、居間にやってきた。
「アルヴェリオ様、ライネルさん、おはようございます」
「おはようアノマリー。今日も可愛いね」
「ふふっありがとうございま……」
「……どうしたの?」
突然口を閉ざしたアノマリーは、アルヴェリオの胸元を凝視している。
何事かと見ると、そこには小粒だが、最高級のルビーが光っていた。
「アノマリー!駄目だよ!」
「……でも……美味しそう……」
よだれを垂らさんばかりの顔で、自分を見る小さな少年に、アルヴェリオは早々に白旗をあげた。
「構わない。腹を壊さないか心配だが、欲しいのならあげよう」
「……えっ」
ライネルが言葉を失う。
どう見ても、王都でも滅多に見ない高価な品だ。
「いいんですか?」
「仕事の手伝いをしてくれてるんだろう?ご褒美だ」
「ありがとうございます!」
アノマリーは、手のひらに置かれたその宝石を、光に透かしたり、ちょっと舐めてみたりしながら、嬉しそうにはしゃいだ。
「あらあらすみませんね、アルヴェリオ様」
そう言って、ゴバとゼンバはアノマリーの頭を撫でる。
穏やかな時間が流れ、気づけば日が傾いていた。二人は仲の良い家族に礼を言って宿へと戻った。
そして、その夜。
宿屋の部屋で二人きりになったとき、アルヴェリオが真面目な顔で口を開いた。
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「はい?」
「俺の過去と、これからのことだ」
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